日々の臨床④:12月27日水曜日<総合アレルギー診療から統合医療へ、No.3>

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

<総合アレルギー診療から統合医療へ、No.3>

 

MI

 

 

専門細分化医療の問題点は、患者さんの全体像を統合的に把握していないことに顕著に表れています。

 

それでは、複数の専門医が一人の患者さんを、それぞれの立場で診療すれば良いのでしょうか?

 

それは、ベターではありますが、ベストではないと思います。複数の専門医が一人の患者さんを、それぞれの立場で診療すれば、総合病院での総合医療にはなるでしょうが、総合医療とは、所詮、互いに連携の無いバラバラな寄せ集めにしかならないからです。

 

M.Iさんは<内科系>を受診されましたが、内科系とは、様々な複数の臓器別専門内科ということです。

 

それぞれの臓器別専門医は、M.Iさんの皮膚の丘疹のことは忘れて、自分の領域での病気の見落としが無いかどうかだけを念頭に置いて診療するだけであれば、解決の目途が立たないのは明らかです。

 

 

M.Iさんにとって大切な問題の解決は、本人が<昔からあって特に気にも留めていなかった>と記述しているように、無視あるいは軽視しているような健康問題を見直すことから始まりました。

 

それから、<大抵のことなら我慢してしまう自分自身の性格に関係していること>に気づくことができたことが治癒のきっかけとなっています。

 

高円寺南診療所では、M.Iさんの例に限らず、慢性的で治りにくい病気に悩み苦しむ患者さんに対しては、

 

« 性格・環境・習慣病モデル≫(飯嶋正広が2000年以来提唱し、実践中)に基づき、患者さんを統合的に診療させていただくことによって、たとえば原因不明の難病とされる線維筋痛症患者さんを寛解・治癒に導いています。

 

 

このモデルを用いれば、患者さんを全人的に診て、統合的で包括的な治療戦略を組むことが可能になります。

 

 

M.Iさんを例に挙げれば、彼女はいわゆるアレルギー体質です。アレルギー体質の方の身体は過敏な傾向にあります。

 

そして体質ばかりではなく気質までもが過敏であることがほとんどです。

 

しかし、皮肉なことに患者さん自身はそれに気づいていないことが多いです。

 

痒みなど生活の質を著しく損なう症状に見舞われ、しかもそれが長期に続くと、誰しもが痒みに対する過敏性をさらに増していきます。

 

すると、そのために大きな精神的・身体的エネルギーが消費されてしまいます。

 

そうすと、痒み以外の心身のからの異常を知らせる重要なサインに鈍感になってしまいます。

 

そうして、そのような方々の意識や行動パターンは、結果的に、肝心なことを見落として不注意による失敗を繰り返す反面、どうでもよい些細なことがらにこだわり、不愉快な気分を引きずるようになります。

 

 

痒みがひどいと、睡眠障害を招くので、この悪循環は強化される一方です。

 

その結果、患者さんは自信を失い、医療不信に陥りつつ、混乱と依存性を増していく、といった最悪の状態にまで陥ってしまうこともあります。

 

 

M.Iさんは、幸いご自分のアレルギー体質の意味を深く理解し、ご自分の心身全体とコミュニケーションすることができるようになりました。

 

<本来な人は自分で自分を治せる>ことに気づけたのは、M.Iさんが半ば絶望の状態から希望と自信を回復し始める段階に至っていることを示唆します。

 

<痒くなったら優しく肌をさする>ようになるまでのM.Iさんは痒みをもたらす肌にイライラを募らせて怒りの感情を引き起こし、その結果、堰を切ったように発作的に肌を掻き削るような条件反射的破壊行動に出ていたのでした。その行為のあとにもたらされるのは自己不全感と失望だったに違いありません。

 

 

そのM.Iさんは、クリスマスや新年を迎える前に、すでに元気になっています。

 

M.Iさんは<できるだけ焦らず体と向き合い自分を大切にするよう心がけるようになりました。>

 

そして、私の診療での対話の中で<その時の状況に応じた心の持ち様や生き方が示唆されていること>にも気づかされたとあり、医師冥利に尽きるとは、このような成果を挙げることができたときではないかと、つくづく感じています。