心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)
<心身医学とは?>
心身医学とは、患者さんを身体面とともに、心理面、社会面(生活環境面)をも含めて、総合的、統合的に診ていこうとする医学をいいます。
いわば開業医、とりわけ内科開業医にとっては、本来、当たり前のことに過ぎません。
しかし、当たり前のことが、実際にはなぜ行われていないかというと、
それは、大半の医師のみならず患者の皆さんが、心身医学を理解していないからだと思います。
絶望的なほど世間一般から誤解されている心療内科はまだしも、その存在が知られているだけましといえるかどうかは別として、心身医学も絶望的なほど世間一般から認知されておりません。
心身医学の説明をするうえで、その歴史と発展の過程を3期に分けて簡単にご紹介することにしましょう。
第1期:神経症についての心身相関の研究と診療がなされた時期
心身医学的という言葉は、ドイツの医師ハインロートが睡眠障害に関する論文【1818】に端を発します。
20世紀に入る頃から、フロイト、ダンバー、アレキサンダー、キャノン、パブロフ、セリエ、ウォルフ、イングリッシュ、ワイスをはじめとする先駆者が
心身相関についての基礎研究と臨床活動および市民啓発が進みました。
フロイトによる精神分析ないし精神力動理論は今日の心身医学の源流をなしていることは、日常臨床において実感させられます。
患者さんの身体症状が意識ではなく無意識・潜在意識に由来するものと考えられるケースがとても多いからです。
私は、毎年3月にドイツ心身医学会総会に出席し、自らも発表を続けはじめたところですが、ウィーンに滞在して、あくまで内科医の立場から、
フロイトの精神分析やフランクルの実存分析を勉強することも続けていこうと考えているのは、こうした背景があるからです。
高円寺南診療所では、心身症のみならず多数の不眠症などの睡眠障害、不安・強迫などの神経症の患者さんの診療を行っていますが、
それは、そもそもの心身医学の発達過程を顧みても、極めて自然で当然の成り行きであると受け止めています。
第2期:心身症が研究の対象になった時期
精神生理学や脳の科学の進歩などにより、人間の心の座である脳の働きや、心身相関のメカニズムについての科学的、実証的な裏付けが蓄積してきています。
身体症状について、それを深く理解するためには、人間の心の座でもある脳の働きを知り、心身相関のメカニズムについて、毎日、実際に患者さんと継続的に接し続けていくなかで、より一層、考察を深めていくことができます。
第3期:臨床各科の疾患一般について、心身両面から総合的、統合的に病状を捉え、全人的な医療を行おうとしている時期
時代の変化とともに、疾病構造も大きく変貌し、伝染病や感染症よりも
生活習慣病、老年病、慢性疾患が増加し、また心理社会的ストレスによる心身の障害が増加しています。
このような背景にあっては、従来の細分化された身体医学、身体偏重や臓器中心に傾いた人格不在の医学、医療の在り方に対する批判、反省が起こりました。
そこで、臨床医学の原点に立ち戻って、心身両面から総合的に病状を捉え、
病気よりも病人を中心とした全人的な診療の在り方を目指すことが求められるようになりつつあります。
高円寺南診療所のアレルギー科、リウマチ科に関連する疾患の多くは、全身性疾患であるため、
従来の細分化された身体医学、身体偏重や臓器中心の発想では十分な対応ができず、心身医学的アプローチを取らざるをえません。
リハビリテーションと共にカタカナの科は、とくに時代の最先端の医学・医療と密接な関連を持っている領域であるともいえます。
一見、地味な活動に見えるかもしれませんが、高円寺南診療所発信の水氣道®および聖楽院音楽療法は、
わが国オリジナルの心身医学的治療法であると認知される日がやがてくるであろうことを信じて邁進するのみです。
そして、現代の心身医学の分野は医療、保健、福祉など多方面にわたりますが、
基本的には人間の身体面、心理面、社会面の相互作用に関する科学的な研究成果をもとに、
患者中心のQOL(生活の質、人生の質)を重視した全人的な医学医療のあり方を目指しています。
近年、心身医学と関連して、行動医学、コンサルテーション・リエゾン精神医学、相補・代替医療ないし統合医療などの分野における活動がみられます。
高円寺南診療所の心理相談では、行動療法を含む認知行動療法を専門的に実施し、
相補・代替医療ないし統合医療などの分野に関しては、主として鍼灸療法を重視しています。
鍼灸療法は物理療法の一つとして分類されることが多いですが、その見方は、とても狭く一面的です。
鍼灸治療は心身両面を癒す力をもっているので、むしろ、心身医学的である、ということを最後に申し上げておこうと思います。
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