アレルギー専門医が診る皮膚疾患、帯状疱疹

8月14日(金)

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帯状疱疹は加齢に伴い発生頻度が高くなるありふれた疾患です。

社会の高齢化に伴い患者数は増加傾向になります。

 

急性の感染症で自然治癒しますが、重症例では病悩期間が遷延し、後遺症として神経症が残る場合があり問題視されてきました。

そのための早期診断・治療が重要となります。

 

帯状疱疹のガイドラインはわが国にはありません。しかし、治療の基本方針は早期の抗ウイルス薬の投与と疼痛に対する治療の2本立てです。

 

臨床診断で90%の例は診断可能です。診断のポイントは時間経過と臨床像で、ほとんどが典型例であるため、以下の5つの原則はきわめて有用です。

 

① 急な発症、

②前駆病変が無い、

③疼痛がある、

④皮膚の分布が片側性で神経支配域(デルマトーム)に一致、

⑤新しい水疱が単調

 

ただし、免疫不全者では非典型例も少なくないので注意を要します。

 

軽症・中等症の場合は、よくある疾患であり、大人には感染しないので大きな心配は少ないです。

しかし、ワクチンを接種していない未感染の小児との接触は避ける必要があります。

 

また、部位別の合併症があります。三叉神経第1枝領域では眼合併症の精査、耳介・外耳道に水疱がみられる場合や顔面神経がみられる場合、排尿困難・尿閉がみられる場合などは特別な対応を要します。

 

さらに、きちんと治療しても痛みが残る可能性があります。

そのため、せめて抗ウイルス薬はきちんと内服しておくことが大切です。また、患部を冷やすと痛みが増強するので暖かくして安静を維持します。

 

重症の場合は痛みが長期間残る可能性が高いです。帯状疱疹をきっかけとして感染症などで重篤になるリスクが高いのは末期癌や免疫抑制状態にあるケースです。

 

いずれにしても、帯状疱疹については、発症の予防をはかることが推奨されます。

 

帯状疱疹は、水痘ワクチン由来の弱毒生ワクチンを接種することで発症を抑制することが示されています。わが国では2016年4月に「水痘ワクチン」が50歳以上の者で「帯状疱疹のワクチン」としての使用が認可されました。

 

現在、杉並国際クリニックでは、乾燥弱毒水痘ワクチン「ビケン」を採用しています。また、2018年には発症予防率97%という高い効果をもつ新たなVZV成分ワクチン(不活化ワクチン)のシングリックス®が認可され、帯状疱疹の診療を大きく変えつつあり、当クリニックでの導入を検討しているところです。