3月22日(日) 聖楽療法の体系構成

第一部では、聖楽療法の理論の背景としての心身医学について概説し、そのうえで新しい心身医学の考え方を明確にします。

 

第二部は、聖楽療法の拠点としての聖楽院とは何かについて、その起源を述べ、いくつかの心身医学的アプローチをどのように応用して発展してきたかを省察します。

 

第三部は、心身医学の理論に根ざした聖楽院の哲学的な基礎概念を示し、心身医学療法の領域において水氣道の考えが心身医学療法の一般的な理論となりうるかを論じます。

 

第四部では、聖楽療法理論の一般的理論としての側面について、その概略を述べます。

 

 

第一部 心身医学療法における聖楽療法理論のコンテクスト(その1)

 

第1章 理論の性質

 

第2章 心身医学療法における理論

 

従来の心身医学療法における理論の役割

 

聖楽療法の概念的役割

 

前回は聖楽療法の固有理論の問題、ということで輸入理論との関係について述べました。

 

そして、音楽分野からの輸入理論や専門概念が新しい心身医学療法の固有理論となり得るという立場であることを紹介しました。

 

さて、今回のテーマは

 

聖楽療法の一般理論の問題です。

 

一般理論が聖楽療法においてどのような性質と役割をもつのかについて述べます。

 

一般理論に基づく実践は、指導者自らの基礎的信念をあたかも一般理論であるかのように扱ってしまったり、そのために療法すべてに押し付けてしまったりするとうな存在だとしたら問題です。

 

筆者はレッスン生が他では得ることができない独自の経験を聖楽療法の中で提供したいと願うものであり、レッスン生自らが独自の存在でいられることや自分の真の性質や才能を見出すことを願っているからです。

 

また、あまりに科学的なアプローチを追求していくことが最優先になると、レッスン生などの参加者に多大な利益があっても実験的な方法での評価が不可能という理由で除外されてしまうメソッドがあります。

 

そのアプローチが特定の対象者のみに配慮した性格を持っていたり、効果を誰にでも運用可能なものとして定義したりすることができないという理由によってです。

 

 

聖楽療法は新しい心身医学療法ですが、言い換えれば新しい心身医学を基盤とする音楽療法であるといえます。

そしてすべての音楽療法の実践に適用される最も大きな共通性は、音楽を用いることです。

 

ただし、聖楽療法が他の器楽を用いる音楽療法と異なるのは歌詞としての詩の言葉をも用いるということです。

つまり、新しい心身医学の土壌の上で音楽と言葉を一体的に用いることになります。

 

 

いずれにしても、音楽療法において最も一般的な要素は、私たちが個人として、できるだけ独自であろうとする動機づけを持っているということです。

 

ノードフ・ロビンスは、それぞれのクライエントなりレッスン生が療法や稽古を通じて独自の発達の道を拓いていくために、音楽が独自に用いられているということでした。

セラピーなりレッスンのグループの輪の中で創成されていく共通の力から個々の特性を伸ばしていくことになります。

このプロセスは一つの作品にも言えることであるし、個人の成長にも言えることです。

 

そこで、私たちが、音楽的発展という力を用いて一人一人の個性を自己の成長に向けて整合させていくことが、音楽療法としての一般理論の要素となるのです。

 

 

聖楽療法の理論である臨床聖楽法は、音楽療法の一般理論への基盤として提示するものです。

聖楽療法の指導者の価値観・信念・実践の在り方は、それらによって形成され理論と同等に重要な要素です。

 

音楽療法が存在するすべての国々で、音楽療法サービスを受けるあらゆるタイプの対象者に、あらゆる音楽の提示方法(生演奏、録音、即興、既成曲、受容的・能動的など)で、あらゆるスタイルの音楽を、あらゆるタイプの音楽活動(聴く、奏でる、作曲、録音、演奏)を用いて活動がなされています。

このような多様な応用性を併せ持つという基準を聖楽療法は持っています。

 

 

音楽療法の枠組みとしては、分析的音楽療法、コミュニティ音楽療法、美的音楽療法、分化中心音楽療法、GIM=音楽によるイメージ誘導法、ノードフ・ロビンス音楽療法など幅広いアプローチがありますが、これらのうちの多くは新しい心身医学的アプローチをとっていて、臨床聖楽法に近い本質を例示してくれます。