運動症状出現前のパーキンソン病
超高齢社会を迎えたわが国の今後の医療を考えると、認知症・脳血管障害とならんでパーキンソン病など神経内科が担当する疾患の症例数が増えることが予想されます。
とりわけパーキンソン病は中年以降に発症する比較的頻度の高い代表的な中枢神経系の変性疾患の一つです。
多数の医師が認識しているのはパーキンソン病のトリアス(3主徴)といって、
静止時振戦(ふるえ)、
筋強剛(筋肉のこわばり)、
無動(動作の緩慢)
という運動症状です。
そして、神経内科の専門医であるかどうかにかかわらず、パーキンソン病を日常的に診療している医師であれば、上記の三症状に姿勢反射障害(姿勢の不安定性)を加えた4症状がパーキンソン病にとって特徴的な症状であることを認識しているはずです。
さいわいにも全国にはパーキンソン病を診療することができる神経内科専門医が6000人近くも活躍しているので、私自身も、そうした専門医に任せておけばよいと考えていました。
しかし、最近、それは誤りであったことに気が付きました。
なぜなら、大切なのは早期診断でだからです。パーキンソン病の典型的な4症状が出そろうのは、かなり病気が進行している段階だからです。
そのための有益な手掛かりは、パーキンソン病の典型的な症状であるこれらの運動症状出現以前に病気を発見することです。
具体的な症状としては、便秘、うつ状態の他に、不安、嗅覚低下、レム睡眠行動異常症、日中の過眠症、があり、これらの一連の症状は、より早期の中枢神経病変を反映するものと考えられています。
これらの症状はパーキンソン病の非運動症状と呼ばれ、運動症状出現の数年前から出現することが知られています。
日頃から、パーキンソン病の非運動症状を早期に発見し、診断と評価を行なえるようにしたいものと考えております。
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