水気道へのご招待:10月23日

水氣道の本質とその方略(戦略)および方術(戦術)

 

 

水氣道は、何かと問われて言葉で答えることは簡単ではないと思います。創始者の私自身がそのような状態なのですから、会員の皆様はなおさらのことではないかと思います。

 

それでは、水氣道の説明がなぜ難しいのか、ということから考えてみたいと思います。その第一は、既存の健康活動との関連性や位置づけが難しいということではないでしょうか。

 

 

たとえば、「水氣道はどのようなスポーツなのですか」と問われて困ることがあります。

 

そもそもスポーツの定義が様々だからです。<楽しみを求めたり、勝敗を競ったりする目的で行われる身体運動の総称>(大辞林)という定義はその一つです。

 

水氣道も身体運動であることには他なりませんが、高度な心性や精神性(霊性)に関わる活動であることがその不可欠な要素です。

 

また、その目的は勝敗を競うものではなく、また、単に楽しみを求めるだけのものでもありません。

 

ですから、大辞林が定義するスポーツは水氣道からはかなり隔たりがあることは否めません。

 

また、<競争と遊戯性をもつ広義の運動競技の総称>(ブリタニカ国際百科事典)という凝縮した定義は、水氣道からは更に遠ざかってしまいます。水氣道は競争性をむしろ排除しているからです。

 

 

水氣道は、目的や手段として競争を前提にしない団体運動であるため、一般の競技とは一線を画しているといえます。

 

人間の諸活動における遊戯性と競技性とはその本質において必ずしも一体ではないはずですが、あたかも遊戯性の前提として競技性が不可欠であるかのような伝統的かつ国際的風潮は今に始まったことではありません。

 

 

競技には、作戦とか戦略といった用語がしばしば用いられます。

 

そもそも、戦略とは、敵対的な政治集団間の闘争の技術をさした言葉で、語源となったギリシア語は「将軍の術」を意味していたようです。

 

『戦争論』で有名なクラウゼウィッツは、「多くの戦闘を連合して戦争の目的を達せしめるのが戦略であり、一つの戦闘を計画し実施するのが戦術である」と定義しています。

 

 

一般に戦略というと、このような作戦戦略(作戦目的を達成するための高次の観点から大規模な作戦部隊を運用する方策)の他に、軍事戦略(戦争目的を達成するために国の軍事力その他諸力を準備し計画的に運用する方策)、国家戦略(国家目標の達成、特に国家の安全を保障するため、平時戦時を通じて国家の軍事、政治、経済などの諸力を総合的に発展させ、効果的に運用するための方策)

 

これら3種を含めたものを意味するのだそうです。

 

 

軍事的意味は次元が違い過ぎるので、脇に置いておくこととして、政治的闘争上の戦略とは、綱領的な基本目標によって設定される闘争の一般的方向性をいいます。

 

また戦術とは戦略に基づく個々の具体的な判断や闘争の技術のことをいいます。

 

水氣道は、政治集団でもないので、敵対的な他の政治集団を想定する必要もないからです。そのうえ水氣道は競技ではないので、戦略とか戦術という言葉はそのままでは似合いません。

 

 

しかし、この概念自体は、一般的ビジネスのみならず、水氣道の組織運用にも参考になり、組織運営の上では有益であると思います。

 

ですから、水氣道では、戦略を方略、戦術を方術と呼んで説明に役立てたいと考えます。

 

水氣道の方略とは、綱領的な基本目標によって設定される集団的心身鍛錬の一般的方向性をいいます。

 

水氣道の方術とは、方略に基づく個々の具体的な判断や稽古の場での技術のことをいいます。

 

 

そこで、次回は水氣道の方略を説明するためには、まず、水氣道の基本目標とは何かということ、ついで、水氣道の集団的心身鍛錬の一般的方向性について説明しておく必要があると思います。