最新の臨床医学 4月24日(水) 内科Ⅲ

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。

薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。

 

糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、生活習慣指導、食事療法、運動療法、認知行動療法など集学的な診療体制を構築して、口頭のみではなく実際に体験していただく経験を積み重ねてきました。

薬の処方ばかりに終始しているタイプの糖尿病専門医よりは、糖尿病の外来診療について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

日本糖尿病学会ホームページから

 

「糖尿病診療ガイドライン2016 糖尿病診断の指針 4 運動療法」では、運動療法について、とても有益な5つのQ&Aが掲載されています。

 

これを抜粋して紹介したあとに【杉並国際クリニックの実地臨床からの視点】でコメントを加えてみました。

 

 

Q4-4 

有酸素運動、レジスタンス運動とは何か?

 

 

【要点】

有酸素運動とは、十分に供給された酸素と、基質である糖質や脂質を反応させて再合成されたアデノシン3リン酸(ATP)をエネルギー源として用い、持続的、律動的かつ反復的に主要な骨格筋を10分間以上動かす運動をいいます。

 

有酸素運動は、心肺機能を高める効果があります。

 

レジスタンス運動は、骨格筋に負荷を与える運動であり、筋機能(筋力と筋持久力)を高める目的で行います。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

 

2型糖尿病の患者さんの血糖コントロールに対する有効性は、有酸素運動とレジスタンス(抵抗)運動のいずれにも認められています。しかも、両者の併用効果も明らかにされています。

 

一般に有酸素運動には、ウォ―キング、ジョギング、サイクリングなどが含まれ、心肺機能を高める効果があります。そして、心肺機能は最大酸素摂取量で評価することができます。水氣道®も有酸素運動として水中でウォ―キング、ジョギングを行うほかサイクリングと同様の運動を行などがプログラムされています。

 

そして、陸上とは異なり水圧に抗しての呼吸や運動を行うことになるので、最大酸素摂取量はより大きくなり、心肺機能の向上をさらに高めることができます。有酸素運動は糖代謝を改善させるのは、インスリン抵抗性が改善することによります。

 

そのメカニズムは、内臓脂肪や体重の減少による全身的な代謝改善効果に加えて、遺伝子発現の変化に伴う運動に対する骨格筋の適応により、細胞内のシグナル(信号)を変化させることによります。簡単に言えば、有酸素運動の習慣をもつことによって遺伝子レベルからの確実な体質改善が期待できるということになります。水氣道®もこうした根本的な体質改善を目標にしています。

 

一方でレジスタンス運動は、自体重、チューブ、ダンベルやマシンなどを用いて行う抵抗運動で、筋機能を高める働きがあります。レジスタンス運動の効果は、骨格筋を増やすことによって体組成の変化をもたらし、その結果、インスリン抵抗性が改善します。

 

筋量を増やすには、無酸素運動を取り入れた中~高強度の運動が必要とされてきましたが、比較的低強度のレジスタンス運動においても反復運動を繰り返すことで、筋の持久力を高め、有酸素運動と同様に遺伝子発現の変化を伴う適応が生じ、糖代謝を改善する可能性が高まります。

 

水氣道®は水中運動であるため、運動に際して持続的に水の抵抗を受けます。水氣道®は有酸素運動であると同時にレジスタンス運動でもあります。水中の運動は、自覚される以上に強度が高いのですが、そのほかに水氣道®は比較的低強度のレジスタンス運動において反復運動を繰り返すため、筋量増加のための運動条件をすべて網羅しているといえます。

 

なお運動に伴って、様々なホルモンの分泌が変化します。健康な人では、血糖降下性に働くインスリンは運動時に低下し、血糖上昇性に働くグルカゴンやカテコーラミン、コルチゾールは増加します。

これに対して2型糖尿病の患者さんが中等度の強度の運動を行った場合、インスリンの低下は起こりにくいため肝臓での糖生産性は増加しにくいことに加え、骨格筋での糖利用は増加するので、運動により血糖値を下げることができます。