日々の臨床 ⑦:12月2日 土曜日<表と裏の見分け方>

東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

<表と裏の見分け方>

 

 

漢方医学は「の医学」であると言われます。証とはその病状に対応する漢方処方名とします。

 

たとえば、葛根湯が最適処方である病状である場合は、葛根湯の証、と呼びます。

 

これに対して現代中医学の立場では、個々の病人の臨床症状、病理変化、病因あるいは体質的特徴までを総括した現時点での治療上の問題点となる証候を表現したものとしています。

 

 

いずれにしても、患者の証を知るための最初のステップは、の鑑別です。

 

 

表・裏は、病変部位の①位置や②深浅に加えて③病状の経過の早遅および④病状の軽重を相対的に区分する複合概念です。

 

そして表と裏との移行部を半表半裏(ハンピョウハンリ)といいます。

 

 

表の領域(皮膚、関節、筋肉)に現れる初期(三陽病期経証)の病状を表証、裏の領域(心肺などの胸腔内臓器、消化管などの腹腔内臓器)に現れる進行期(三陽病期腑証以降)の病状を裏証といいます。

 

三陽とは太陽・陽明・少陽という三つの病期を意味しますが、今回は説明を省きます。

 

 

表証は、悪寒(寒気)、発熱、発汗、疼痛(頭痛、関節痛、筋肉痛)など、

 

裏証は、腹部症状(腹満、便秘、下痢、腹痛など)など、

 

半表半裏の領域(口腔から横隔膜付近までの器官)が病むことによって生じる症状は、口苦、喉の乾き、咳嗽、食欲不振、嘔気、胸脇苦満、などです。これも裏証に属します。

 

 

一般に病邪が外から人体に侵入して惹き起こされる病気を外感病といいます。

 

 

ところで、人体は経絡という気・血・水(津液)が運行する際の通路である経絡(ケイラク)を通じて一つの有機体としての調和を保っているとされます。

 

外感病は体表より経脈を通って、それらに連なる臓腑(五臓六腑)に侵入する、という進行の経過を示します。

 

病邪が経脈上にある間は表証、臓腑に至れば裏証です。

 

ここで経脈とは、経絡の中の主幹であって、一定の巡行経路を持つものとされています。

 

経穴(いわゆるツボ)のほとんどは、この経脈上にあります。これは針治療の反応点でもあります。

 

 

なお、病変部位が表にあっても、その原因部位が裏にあるものは裏証とします。

 

たとえば、はしか(麻疹)の発疹は表証であるのに対して、アトピー性皮膚炎の皮疹は単なる表証ではありません。

 

ですから、ステロイド軟膏による治療は表証に対する対症療法に過ぎないので、原因療法を併用しない限り完治は難しいと考えるのが東洋医学(漢方、中医学)の見方です。

 

また、線維筋痛症の病変部位は、表証、半表半裏証、裏証のいずれにも及んでいますが、その原因部位は表にあるとすれば、表証と考えます。

 

 

表証に対する治療法は発表の法であり、裏証に対する治療法は和、瀉、消、清の各法を選択して用います。

 

それぞれの治法に対応する漢方処方があります。

 

 

高円寺南診療所では、患者さんの一定の病状に対して、現代西洋医学的病名による診断とともに東洋医学的な証の見立てを行うことによって、表面的な症状の緩和にとどまらず、より本質的で根本的な有効治療を心掛けています。