一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)
<いまさら聞けない?高血圧症の話>
高血圧症は、患者数の最も多い生活習慣病です。
それにもかかわらず、この日々の臨床のコラムでは初登場です。
それはなぜかと自問してみるとすぐに答えが浮上してきました。
つまり、高円寺南診療所では、高血圧を主訴に初診で来院される方がほとんどいないからです。
高円寺南診療所が風変わりな診療所だからでしょうか?
否、どうやらそうではないようです。
一般的に、高血圧診療における大きな課題として、まず、降圧治療を必要とする患者群の約半数が治療を受けていないこと、
つぎに、治療を受けている患者群の約半数は降圧目標を達成できていないこと、
さらに、急速な高齢化により、加齢関連の高血圧が懸念されていることも挙げられています。
わが国の高血圧人口は4,000万人を超えると推定されていますが、以上の基本情報を元に、概算すると、
高血圧症の患者さんで適切な血圧管理ができている人は4人に1人、つまり1,000万人、
これを裏返せば4人のうち3人、つまり3,000万人までが適切な高血圧管理ができていない、ということになりそうです。
ところで、高血圧は脳血管疾患、心疾患、腎疾患の主要な危険因子です。
塩分摂取の多い食生活の改善は今後とも推進していかなければなりません。
さらに、血圧管理を取り巻く環境として、内臓脂肪、運動不足などに起因するメタボリックシンドロームや糖尿病は急激に増加しています。
また、慢性腎臓病も増加しています。
高血圧での受診が少ない理由の一つは、高血圧が無症候性、つまり自覚症状がない病気だからではないかと考えます。
<痛み、痒み、悩みの三み一体?>での相談に応じている高円寺南診療所での永年の課題は、自覚症状のない病気に対するアプローチの仕方です。
高血圧は無症候であるため長期間にわたって徐々に病態が進展することで主要臓器の機能障害をもたらすため、その対策の徹底が望まれます。
平成元年に開院して以来、ご近所での救急車のサイレンの音を頻繁に聴くにつけて、診療所周辺の住民の皆様の健康意識の水準を心配していました。
脳卒中や心筋梗塞、急性心不全のように、突然の合併症をもたらすことが少なくないのも高血圧の恐ろしさの顕れです。
それでは、高血圧症はどこを受診したらよいでしょうか。
内科循環器科(循環器内科)というのが一応の答えになるかもしれません。
循環器内科を受診しているような高血圧患者さんは比較的健康管理意識の高い方々ではないかと思います。
あるいは、難治性の高血圧などの方も受診されていることでしょう。
それでは日本の人口の3分の1にも上る高血圧を循環器内科専門医だけで対応できるでしょうか。
実際は、内科を標榜している医療機関であれば、どこでも高血圧に対応してくれるはずです。
高円寺南診療所の高血圧患者さんに多いタイプは、他の医療機関ですでに降圧治療を受けておいでの方です。
全国的な傾向と同様、降圧治療を受けている方で、何とか血圧管理ができている方は半数以下で、管理不十分な方は過半数を占めます。
その理由は、心身のいずれかに不調を来すと容易に高血圧を悪化させ、通常の薬物療法のみでのコントロールが難しくなるからだと思います。
こうしたタイプの方も、きちんとした全身管理やストレス管理をすることにより、降圧治療の効果が表れ始めることが少なくありません。
水氣道に継続して参加されている方は、すでにお気づきの事とは思いますが、稽古前の血圧測定で明らかな高血圧の方は、ごく少数です。
そして、そんな方も稽古後の再測定では、血圧が正常化していることを確認していると思います。
その他のタイプについてリストアップし、簡単なコメントを加えてみました。
①初診時の血圧測定で、はじめて高血圧が判明した(気づかず型)
⇒ これからは、血圧測定の習慣を身につけましょう。
②健診で高血圧を指摘されたが、困らないので放置してきた(軽視型)
⇒ 高血圧について、一緒に勉強していきましょう。
③自己負担が軽減される年齢まで受診を控えてきた(節約型)
⇒ 節約するならタバコ代、酒代、賭け事の費用、ご自分の寿命を節約するのは得策ではありませんよ!
④高血圧を指摘されると、不快感・不信感を露わにし、
何度も血圧を測定し直し、少しでもましなデータを得ようとする(否認型)
⇒ 現実を謙虚に受け入れることから健康管理がはじまります。
頑なさは認知症の始まりかも?・・・要注意です。
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