日々の臨床②:10月30日 月曜日<家庭医学から産業医学へ>

総合医療・プライマリケア

 

<家庭医学から産業医学へ>

 

 

高円寺南診療所での際立った特徴の一つに受診者の年齢層を挙げることができます。

 

小児科ではないため、中学生以下はほとんど受診されませんが、高校生以上から高齢者まで幅広い中でも、とくに働き盛りの年代の方々が中心です。

 

つまり、労働者の心身両面での健康管理が大きな比重を占めています。

 

人々の生活の場は家庭だけではなく、職場も重要な場です。

 

そして大多数の皆様は何らかの職場ストレスを抱えていることに気づきました。

 

そこで、当診療所では、家庭医学のみならず産業医学の重要性に早くから着目し、研鑽を積んできました。

 

 

産業医とは

 

労働者の健康管理を行うための医師のことです。

 

労働者が作業場で安全かつ健康に働くためには、専門知識を得た人材が適切に管理をすることが必要となります。

 

そのため、労働者たちの健康を守るとともに、適切な職場環境を作ったり改善したりするために産業医を置くのです。

 

産業医は、労働者たちにとっても企業にとってもメリットが大きいはずです。

 

健全な経営は、労働者の健康管理なくしてあり得ないからです。

 

産業医に関しては、労働安全衛生法によって一定の条件を満たす事業場で選任の義務があります。

 

 

産業医の職務とは  

 

〇健康診断の実施

 

〇月100時間以上残業(過重労働)をした労働者に対する面接指導

 

〇労働者のストレスチェックの実施

 

〇労働者の作業環境の改善と指導

 

〇毎月1回以上の作業場巡回

 

〇労働者に対する衛生教育

 

〇そのほか労働者の健康維持に関する指導

 

上記のように、産業医は労働者たちの健康に関する責任を負っています。

 

 

産業医になるには

 

まず医師資格があることが大前提です。

 

医師であることに加え、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならないとされています(労働安全衛生法第13条第2項)。

 

医師が、規定の研修(日本医師会の産業医講習会など)を修めたり、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の国家資格を得たり、といったキャリアをもつことでなることができます(労働安全衛生規則第14条第2項)。

 

 

高円寺南診療所では、医師である飯嶋正広が日本医師会認定の産業医資格を取得した後に、労働衛生コンサルタントの国家試験に合格し、高円寺南労働衛生コンサルタント事務所という名称で登録しています。

 

 

こうしたキャリアは受診者が病気養生のため休職や退職をする際に、あるいは再就職や段階的・計画的復職(リワーク)を支援する上での診断書作成や患者さんの勤務する職場の産業医との連携、担当上司への働きかけなどの際に、十分に活用できている実感があります。

 

しかし、国家資格である労働衛生コンサルタントとして当然とされる報酬をいただいたことは一度もありません。

 

その場合の報酬は、本来、労働者である患者さんから直接いただくものではなく、企業から受け取るべきものと考えているからです。

 

 

今後は、企業の健康管理のコンサルタントとしての需要にも応じ、労働者の生活の場でもある職場の環境改善に積極的に関与していくことを考えています。

 

それによって、身体・精神のみにとどまらず環境の側面にも関心をもつことによって、心身医学・全人的医療のコンセプトを実際の現場においても発展・展開していくことが可能になるのではないかと期待している次第です。