武蔵野音大別科生の手記

 

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聖楽院主宰 テノール 

 

飯嶋正広

 

 前期最終(第15回)個人レッスンを終えて

 

武蔵野音大別科(1年間コース)のカリキュラムも、丁度、半ばを迎えました。

この間、いろいろな経験を重ねることができました。

当初は1年間限定、ということで、今に思えば安易に考えていました。

 

毎週1回60分の集中個人レッスンを大家の先生から直接受けられるということが、どれだけ恵まれていて、贅沢なことなのか、改めて振り返っているところです。

 

武蔵野音大の別科の位置づけが、どの様なものであるかについて、私は深く認識する暇もないまま、お勧めにしたがい入学した私ではありました。毎週の通学を続けているうちに、この別科には大きな可能性と融通性とが秘められていたことに気が付きました。

 

東京藝大の別科は2年制で、本来は一般社会人向けに学部に併設された位置づけであるのが表向きの趣旨ですが、実際にはそれとは大きく異なり、実質的には、学部と大学院修士課程との橋渡し的な位置づけになっているようです。つまり、音大(東京藝大を含む)卒業生を対象にしているかのような運用がなされています。

 

これに対して、武蔵野音楽大学の別科は1年制ですが、より広く門戸が開かれているばかりでなく、終了後の進路も学生の指向と適性や能力に応じて多様なルートに繋がっているような印象を持ちました。

 

私のように音大卒業生でなくとも入学可能であり、しかも、別科終了後には学部編入ではなく、直接、大学院修士課程入学というコースも準備されていることは新鮮でした。

 

以前にも、別科終了後に大学院へ進学した前例があるとのことを、作曲科の先生方から伺いました。方がいらっしゃるとのことでした。

 

大学院入試の準備として、声楽実技の準備は現在のレッスンの延長上で十分対応可能であると岸本先生が保証してくださっているのですが、最大の問題点は学科試験のうち音楽理論(楽理>和声>バス課題、ソプラノ課題)であり、その他、音楽史の勉強も必要になります。

 

岸本先生は、さっそく私の不安に対応してくださり、作曲コース長の野崎勇喜夫先生を紹介してくださり、その後、野崎教授のご推薦で若手新進気鋭の成宮北斗先生が、週1回1時間のペースでオンライン個人レッスンをしてくださることまで速やかに決まりました。

 

音大の先生たちが、これ程までに学生の面倒見の良い組織であるとは想像もつきませんでした。もっとも、武蔵野音楽大学が特別なのかもしれません。

 

音大の大学院については、私自身と結びつけて具体的に考えたことは、これまでありませんでした。しかし、別科の1年間の到達目標の設定については、レッスンのたびごとに、少しずつ発展してきました。

 

当初は、1年間を通してチャイコフスキーの声楽曲をテーマとすることに置いていました。

それが、数回のレッスンを経て、前期がチャイコフスキー、後期がラフマニノフという目標に修正されました。実際に前期のレッスンが終わるまでに、ラフマニノフの歌曲の手ほどきを受けることができ、それがそのまま大学院の受験候補曲の1つに決まりました。

 

更に、レッスンが進んでいく中で、夏季休暇後の後期の一連のレッスン計画の中に、チャイコフスキー、ラフマニノフ以外のロシアの代表的な作曲家の代表的な歌曲作品にも馴染んでく必要を感じるようになりました。

 

たとえ、すぐにレッスンを受ける予定がなくとも、今後の私の研究のために、岸本先生にお願いして、秀逸な1曲ずつを選んでいただくことをお願いしたところ、快く楽譜を提供してくださいました。

 

前期のレッスンが終わった後も、夏休みの間に、何回かの追加レッスンをお願いしました。当面は、8月22日の練馬のゆめりあホールでのセンチャブリ・コンサートに向けての準備になります。