4月22日(水)水氣道の本質と稽古の構造および機能について(全5回)

第4回 『結』の巻【水氣道を導いている不思議な存在】

 

水氣道による人格完成に向けてのメカニズム
 

水氣道は平成28年(2016)2月24日に登録商標を出願し、同年9月9日商標登録しました。登録した商標は、以下の4件です。

 

・水気道®(登録第5979758号)

・水氣道®(登録第5979759号)

・suikido®(登録第5979760号)

・Mindfulness Group Aquabics®(登録第5979761号)

 

  
水氣道の稽古のすべての原点は基本五航法と称する一連の形(かた)の中でも、第一航法としての素歩きに始まりました。

その後、基本五航法が一応完成すると、準備体操(イキイキ体操)、整理体操(のびのび体操)、各種航法が開発され、最近に至って、親水航法が整いました。このようにして、実際に、水氣道の稽古の流れが、親水航法、準備体操(イキイキ体操)、基本五航法、各種航法および整理体操(のびのび体操)の五つの段階に区分、整理されてきたのは最近のことなのです。

 

 

水氣道は、儒教の影響を受けた我が国の律令制を模した組織の骨組みのうえに仏教とキリスト教という互いに相異なる伝統宗教の双方に通じる「かたち」と「はたらき」が知らず知らずのうちに加わり、導かれるように成長してきたもののように感じられております。

 

そもそも水氣道ははじめから既存の特定の単一の伝統宗教を下敷きにして構築したものではありません。それにもかかわらず創始の後20年におよぶ実践の結果として得られた組織機構と機能とにおいて哲学性・倫理性・宗教性が育まれてきたことは否めません。

 

そして、親水航法、準備体操(イキイキ体操)、基本五航法、各種航法および整理体操(のびのび体操)の五つの段階に区分、整理されてはじめて得られたインスピレーションは、この五段階の流れがカトリックのミサの典礼曲の構成と対応しているということでした。

 

 

水氣道とミサ典礼曲を構成する5つの内容の対応関係を説明するために、新たに特別の名称を付すことによって、水氣道の本質に迫ってみようと思います。

 

ミサ曲の基本的な構成要素は、一般的に、通常文と呼ばれる『キリエ』(求憐誦)、『グローリア』(栄光頌、天には神に栄光)、『クレド』(信経、信仰宣言)、『サンクトゥス』(三聖頌、感謝の賛歌)、『アニュス・デイ』(神羔頌、神の小羊)の5曲です。

 

そして、ミサではどのような場合にも必ず同じ典礼文を用います。これら5曲をすべて備えたものを通作ミサ曲と呼びます。これに対し、『クレド』(信経、信仰宣言)を含まないものをミサ・ブレヴィス(小ミサ)と呼びます。

 

水氣道では五航法に相当しますが、これを全く省略することはないにしても、必要に応じて簡略版で稽古することがあります。

ルーテル派では『キリエ』と『グローリア』のみで構成されるものがミサ・ブレヴィスですが、水氣道から派生した聖楽院のレッスンでも『グローリア』に相当する準備体操(イキイキ体操)の短縮版を導入してレッスン効果を挙げています。

 

 

1. 親水航法・・・求憐誦(キリエKyrie)
水氣道では、あらため<求憐踏:きゅうりんとう>

 

2. 準備体操(イキイキ体操)・・・栄光誦(グロリアGloria)
水氣道では、あらため<栄光躍:えいこうやく>

 

3. 基本五航法・・・信経(クレドCredo)
水氣道では、あらため<信経行:しんきょうぎょう>

 

4. 各種航法・・・三聖頌 (サンクトゥスSanctus)
水氣道では、あらため<三聖舞:さんせいぶ>

 

5. 整理体操(のびのび体操)・・・神羔誦(アニュス・デイAgnus Dei)
水氣道でも、そのまま<神羔頌:しんようしょう>

 

 

 

1) 親水航法<求憐踏:きゅうりんとう> 

 

・求憐(きゅうりん)とは、「憐れみ」を求めることです。
   

・憐みとは「慈悲」です。これは仏教由来の言葉であり、「慈」とは、与楽といって人々に楽を与えること、「悲」とは、抜苦といって苦を除くことです。
   

・また踏(とう)とは、踏むこと、踏みつけること、足の裏で地を押し付けることから、歩くことや、舞など足で調子をつけること、さらには舞うこと、お参りすること、履行・実践・実演すること、経験すること、その過程を通ること、その地まで到達すること、跡をついでその地位に身をおくこと、にも意味の拡がりがあります。
   
   

<求憐踏>は、こうした「求憐」を得るための「踏」であり、「沈黙」の中での身体運動を伴う「祈り」であるともいえます。これは霊的な「呼気」に相当します。

 

 

2) 準備体操(いきいき体操)<栄光躍:えいこうやく> 
  

・栄光(えいこう)とは、幸いを約束する光を意味します。幸いとは名誉であり、輝かしい誉れです。
  

・また躍(やく)とは、踊躍(ゆやく)の躍であり、おどりあがること、勢いよく活動すること、を意味します。

 

<栄光躍>は、すべてが幸いに満たされ「栄光」に輝くための「躍」です。準備体操(いきいき体操)は、おどりあがることや勢いよく活動することも可能なコンディシ ョンとする準備をする運動であり、この段階では決して無理をしてはいけません。

 

 

3)基本五航法 <信経行:しんきょうぎょう>

・信経(しんきょう)とは、キリスト教では、教会がその教理・教義を神と人に示す成文箇条で信条とも訳され、信仰宣言のことです。水氣道の組織としては、その理論と実践の効能に基づき会員が一致して獲得した信条を、言葉で表明するのではなく、団体の稽古を通して習慣的に反復確認し、世界に発信していくための原点ともいうべき存在です。

 

・行(ぎょう)とは、行くこと、進むこと、行いや振舞い、行儀、修行、文字などの縦のならびを意味します。哲学的には、人間的な働きとしての実践行為で「知」と対比される概念ですが、仏教における能動的意味では、われわれの存在を成立させる潜在的形成力や様々な心的活動力、また受動的意味では、生滅変化する一切の現象世界の存在を意味します。

 

<信経行>は、水氣道の組織としての原点を、団体として文字通り縦に整列して順次進行していく実践行為であり、生滅変化する一切の現象世界の中にありながら、私たちの存在の基礎となる潜在的形成力や様々な心的活動力を育む修行です。

 

 

4)各種航法<三聖舞:さんせいぶ> 

・「三聖」とは、一般的には釈迦・孔子・キリストを指しますが、キリスト教では「父なる神・子なるキリスト・聖霊」を表します。水氣道では、「水・氣・道(血)」を意味します。また、「身・息・心」にも対応しています。この概念は、漢方医学や鍼灸理論と水氣道の接点となるばかりでなく、身体医学と精神医学を統合する心身医学と水氣道との接点ともなって実際的に機能しています。
  

・「舞」とは、舞いおどることで、励ますことの意味を含みます。

 

<三聖舞>は、心身の「三聖」の調和を得るための「舞」です。これは調身(体操)・調息(情操)・調心(霊操)という三調操によって、「水・氣・道(血)」を整え、心身の再統合を図り、全人的な健康増進に繋げることを目的とするものです。それを自分のためばかりでなく、他者のためにも鼓舞するための「名宣り」稽古が最近導入され展開中です。

 

 

5)整理体操(のびのび体操)<神羔頌:しんようしょう> 

・「神羔」とは「神の子羊」を意味します。この「子羊」とは直接的には子供の羊(羊の子)ですが、力ないもののたとえにも用いられます。「神の子羊」はこの世の憂いを取り除く力をもった神の子のような存在です。

 

・「頌」とは、ほめたたえることであり、ほめうた、を意味します。

 

<神羔頌>はそうした「神羔」をほめたたえる行為です。
武道の良さには「礼で始まり、礼で終わる」ことがあります。これは武道の精神・あり方に則り、試合においては作法を守り、また相手への敬意を示すことが、何よりも重んじられるべきである、ということです。これは礼儀・礼節をもって試合に臨むことは勝敗よりも重要であるという考え方を伴うものです。
これに対して水氣道には、そもそも試合がなく、勝敗を決する必要もありません。そのかわり、水氣道の作法である「礼」とは「祈りにはじまり、賛美で終わる」ことを旨としています。ここで「祈り」とは、水氣道に対する大きな信頼、成長に向けての願い、相互の祈互いに祈り合うことなどを含んでおります。「賛美」とは、与えられている恩寵に対して感謝し、ほめたたえることです。これは霊的な「吸気」に相当します。そうして<神羔頌:しんようしょう>としての整理体操(のびのび体操)は、水氣道の一連の稽古を締めくくる体操をすることが賛美そのものの「礼」と一体になることを目指していきます。