4月5日(土)新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に効く漢方No5

<土曜日特集:統合医学(心身医学・漢方医学)カンファランス>

先月に引き続き、新型コロナウイルス肺炎の漢方治療について考えていこうと思います。

 

中国当局が推奨している「清肺排毒湯」は以下の21の薬味から構成されています。

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、紫菀 、冬花 、射干 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮 、藿香

 

上記のうち、紫菀(しおん)キク科アスターの根、冬花(款冬花?)キク科フキタンポポの花蕾、射干(やかん)アヤメ科檜扇の根、藿香(かっこう)シソ科川緑の4種を除く17の生薬は、日本の保険漢方でも使用されています。

 

そこで引き続き「清肺排毒湯」について、日本漢方とりわけ保険調剤が可能なエキス製剤にあてはめて検討していきます。

 

「清肺排毒湯」処方の出典:国家衛生健康委弁公庁 国家中医薬管理局弁公室≪中西医結合で新型コロナウイルス肺炎の治療における「清肺排毒湯」の推薦についての通知≫(国中医薬弁医政函(2020)22 号)

 

杉並国際クリニックの分析

「清肺排毒湯」の構成生薬21種のうちの17種は、日本でも使用されています。

ただし、上記の17種の生薬のうちで、日本での表記と異なる生薬があります。それらを日本での表記に改めると以下のようになります。

 

白術=白朮、生石膏 (先煎)=石膏、姜半夏=半夏

 

これらの構成生薬の配合を分析してみると、解表剤、和解剤、補気剤、理気剤、利水剤などの効能を併せ持つ処方であると考えられます。今回は、病原体に対抗する主戦場が体表(解表作用)である場合に効果が得られる解表剤について解説します。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮

 

解表剤 発汗、解肌、透疹等の作用により、表証を解除する方剤です。

 

以下のような構成生薬の組み合わせからみると、風寒表証(表寒:ゾクゾクするような寒気を伴う体表の緊張)に対して用いる辛温解表剤(辛い薬味で温めて緊張を取り除く)として効能が期待できそうです。

 

解表剤は主に感染症の初期に使用します。

解表剤にはA.辛温解表剤とB.辛涼解表剤とがあります。

前者は表寒といって身体表面で寒さを感じ、ふるえや寒気を感じる状態、とりわけ現代においてはウイルスなどによりもたらされた風寒表証という病態に有効です。後者は、表熱といって身体表面に熱やほてりを感じる状態である風熱表証という病態に有効です。

 

「清肺排毒湯」の構成生薬には、以下のような解表剤としての組み合わせを抽出することができます。

 

麻黄湯減 :麻黄-杏仁-生石膏 (先煎)
麻黄附子細辛湯減(麻黄、細辛)

 

以上を元に、わが国で保険処方が可能なエキス製剤を挙げてみます。

 

A. 辛温解表剤として、以下の2方剤が処方可能です。

 

麻黄湯減として 

27麻黄湯(麻黄-杏仁-甘草-桂枝)
  適応:感冒、関節リウマチ、喘息、インフルエンザ(初期)

 

ここでインフルエンザ(初期)とは、悪寒、発熱、頭痛、腰痛などの症状がみられる状態です。この処方は自然に発汗できていない場合に用いると発汗とともに治り易くなります。

 

 

  麻黄附子細辛湯減として
127麻黄附子細辛湯(麻黄-附子-細辛)
   適応:感冒、気管支炎

 

ここで気管支炎とは、悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で頭痛、めまいなどの症状を伴う状態です。この処方は四肢に疼痛冷感がある場合に用いると痛みや寒気がおさまり、解熱し呼吸が楽になります。

 

 

B. 辛涼解表剤として、以下の2方剤が処方可能です。

 

55麻杏甘石湯(麻黄-杏仁-甘草-石膏)コタロー細粒

 適応:気管支喘息

 

 ここで気管支喘息とは、咳嗽が激しく、発作時に頭部に発汗して喘鳴を伴ない、咽喉が乾く病態を指します。

 

 

95五虎湯(麻黄-杏仁-甘草-石膏-桑白皮)

  適応:咳、気管支喘息

 

  55麻杏甘石湯に桑白皮の一味が加わった処方です。桑白皮は痰を切れやすくして咳を楽にする作用があるため、しつこい痰がらみの咳がでる場合には著効します。