3月25日(水)水氣道の現代医療における位置づけNo4

骨訴訟症の治療指針(杉並国際クリニック2020初版)

 

A. 非薬物療法: 生活習慣の改善(栄養・食事療法、生活・運動療法)

 

<栄養・食事療法>

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版(ライフサイエンス出版、2011)および、五訂増補日本食品標準成分表より作成
嗜好改善:禁煙(受動喫煙防止も含む)⇒動脈硬化症予防に必須
喫煙・アルコールのとりすぎには注意しましょう。

 

喫煙は女性ホルモンの作用を妨げ、カルシウムの吸収を減らし、体外に排出させる作用があり、骨折リスクを高めます。

 

アルコールは多量にとりすぎると転倒しやすくなるだけでなく、カルシウムの吸収を悪くし、体外への排出を促し、骨折リスクを高くします。

 

骨に必要な栄養素をバランス良く摂取

骨の形成に必要なカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどを含む食物を意識しながら、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。

カルシウムは、ビタミンDと一緒にとると、吸収されやすくなるので、食べ合わせに工夫しましょう。

 

カルシウム薬やカルシウムサプリメントは、食事からとるカルシウムとは特徴が異なるため、1日500mgを超えてとらないこと。

 

【カルシウムを多く含む食品】1日摂取目標量:700~800mg

 

【ビタミンDを多く含む食品】1日摂取目標量:400~800IU

 

【ビタミンKを多く含む食品】1日摂取目標量:250~300μg

 

 

食事療法のまとめ

① 制限すべきもの:

脂肪(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・コレステロール)、エネルギー・アルコール・糖質


② 摂取すべきもの:

適量のビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取、高カイロミクロン血症では中鎖脂肪酸

 

<生活・運動療法>

適度な運動を行い、骨量を保つとともに、筋力をつけて転ばない体づくりをしましょう。

家の中での体操など、体を動かす習慣をつけましょう。

骨を作るには、必要な栄養をとるとともに、適度な運動をして骨に負荷をかけることが必要です。

また、筋力をつける運動、バランス感覚をつける運動をすることで、転倒を防止することもできます。

 

水氣道は、浮力に助けられた跳躍運動が含まれていて、関節軟骨に過剰な負荷をかけずに骨に垂直成の負荷を掛けることができます。また、水の抵抗・粘性や波動による揺らぎの力が作用するためバランス感覚を養うためには格好の運動です。

 

骨や関節、筋肉などが衰えて「立つ」「歩く」といった動作が難しくなり、寝たきりなどになりやすい状態は「ロコモティブシンドローム」と呼ばれます。

 

ロコモティブシンドロームを予防するためにも、適度な運動を行い、骨量を保つとともに、筋力をつけて転ばない体づくりを心がけましょう。

 

また、転ぶことを過剰に恐れるあまりに前かがみの姿勢で杖に頼りきってしまう状態になることは望ましくありません。

 

水中では、転倒による打撲などの外傷などのリスクはとても小さいので、正しい健康的な姿勢で安心して運動を続けることができます。

 

ロコモチェック(「ロコモ チャレンジ!」推進協議会)

ロコトレ(「ロコモ チャレンジ!」推進協議会)

 

転倒を防ぐ工夫を生活の中に取り入れましょう

住まいや身につけるものなど、さまざまな工夫を生活に取り入れることも、転倒を防ぐために大切です。

 

住まいの工夫

・家の内外の段差をなくす

・足元を明るくする

・階段や浴室・トイレなどに手すりやすべり止めをつける

・電気のコード類は壁に沿わせておく 

など

 

身につけるものの工夫

・滑り止めのついた靴下を履く

・スリッパやサンダルを履かない

・眼鏡の調整をこまめにする 

など

 

運動療法のまとめ

❶ 有酸素運動:

中強度、≧150分/週、≧3回/週

運動をしない日が2日以上続かないように実施

 

❷ レジスタンス運動:

2、3回/週、連続しない日程で実施

心身医学療法:

水氣道®

<解説>

レジスタンス運動、あるいは両者を組み合わせた運動は、血中脂質を改善させることが実証されています。

特に水氣道®は有酸素運動、レジスタンス運動の両者を組み合わせた優れた運動プログラムであり、血圧や血糖の降下効果の他に、血中脂質を改善し動脈硬化予防効果、筋肉量および骨量増加等の実績があります。

 

 

B. 薬物療法:

栄養・食事療法や生活・運動療法を前提としない薬物療法の効果は限定的です。

 

❶ 薬剤選択の原則

第1選択薬:

ビスホスホネート製剤

ステロイド骨粗鬆症の場合は、

アレンドロン酸(ボナロン®)、リセドロン酸(ベネット®)

 

副作用:

顎骨壊死、非定型大腿骨骨折
  

高齢患者(大腿骨近位部骨折のリスクが高い例)

BP製剤 アレンドロン酸、リセドロン酸

ゾレドロン酸(リクラスト®)

デノスマブ(プラリア®)←関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制にも
  

 

骨折の危険性の高い骨粗鬆症(複数の椎体骨折例、BP製剤使用中に骨折を生じた例)
        

副甲状腺ホルモン製剤テリパラチド(テリボン®)
  

活性化型ビタミンD₃製剤(椎体骨折抑制作用、骨密度上昇、新規椎体骨折発生抑制)
         

エルデカルシトール(エディロール®)  
         

注意:

妊婦、授乳婦には禁忌

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)閉経後骨粗鬆症
ラロキシフェン(エビスタ®)骨量減少例に対する新規椎体骨折防止
          

副作用:

静脈血栓塞栓症、抗リン脂質抗体症候群
  

抗RANKLモノクローナル抗体(デスマノブ)
          

強力な骨吸収抑制作用、骨折予防効果(椎体、非椎体、大腿骨近位部)
          

副作用:

低Ca血症(投与早期)、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折
副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド):投与期間2年
フォルテオ®(椎体骨折、非椎体骨折に対する予防効果)

抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ):投与期間12カ月、月1回

イベニティ®
適応:骨折の危険性の高い骨粗鬆症
副作用:心血管系事象の発現