<聖楽院>藝術歌曲集「小倉百人一首」No1,No2、CD発売について

10月13日  

藝術歌曲集「小倉百人一首」No1 企画解説(その1)

 

CD藝術歌曲集「小倉百人一首」№1.コンコーネ50番(中声)で歌う

 

歌詞付き「コンコーネ50番(中声)」の誕生秘話と

№1.コンコーネ50番(中声)で歌う藝術歌曲集「小倉百人一首」の功罪

 

コンコーネ50番のすべての曲には、イタリアの伝統を受け継ぎ、素直で美しく明るいメロディーや、しっかりとした音楽性を持っていて、芸術歌曲やオペラアリアのように、様々な感情の動きがあります。そのため先生の下で順調にレッスンが進んでいくならば、歌い続けていくにつれて、次第に楽しさを深く味わえるようになるのだと思います。

『J.コンコーネは、声楽教則本コンコーネ50番の出版にあたって、みずからが巻頭に掲げたメッセージがあります。そこには、うたの基礎的な教育を施すことを意図して、旋律そのものに対して、きちんとした認識を持つ必要性、この教則本が中声域のために作曲した、シンプルでかつ広範囲にわたるスタイルによる50の練習曲であること、生徒がより良くフレーズを感じ、正しい所で息を継ぐことをきちんと習慣として身に着けるという2つの利点を備えていること等が紹介されています。また声楽練習曲の領域で芸術の発展に寄与することを熱望して作られたことにも言及しています。』(コンコーネ50番<中声用>川本伸子編、ドレミ楽譜出版社、2018年)

 

ただし、歌詞がない声楽演奏は、抽象性が高く、いわば器楽のソロの稽古に通じるものがあります。そこで器楽ではなく敢えて声楽を志す方々の大多数が、歌詞付きの曲を歌いたいという思いに駆られることはごく自然ではないかと思われます。またヴァッカイの声楽教本(全音楽譜出版社、上浪明子編集1993)の著者序文はこうした要求に応えるメッセージが記されています。

『イギリス、フランス、ドイツ、イタリアでは、多くの人々は、単に楽しみのためだけに歌を習っています。彼等は長い練習やソルフェージュをこなすのはとても重苦しく思って、システム的なメソードにそった勉強をしようとしないということを私は知りました。そこで、長い勉強の退屈さを避け、その目的に到達させてくれる楽しく役に立つ、全く新しい形のメソードを作る事に私は思い至ったのです。』

 

そこで、私たち日本人にとって、もし、コンコーネ50番のクオリティに相応しい芸術的な日本語での歌詞が付されているとしたらどれだけ素晴らしいことが実現できるでしょうか。それによってレッスン生ばかりではなく、先生や伴奏ピアニストも、より楽しい、音楽的喜びや芸術的な刺激に満ちた時間を共有できるのではないかと思います。そのような経験ができるならば、歌詞の付いたコンコーネ50番は、立派な芸術歌曲として、コンサートプログラムに載せることも可能になると考えました。(続く)

 

( 編作者 飯嶋正広 )