<聖楽院>10月6日(日)藝術歌曲集「小倉百人一首」No1 推薦文

CD藝術歌曲集「小倉百人一首」№1.コンコーネ50番(中声)で歌う  

 

 医師でありテナー歌手でもある飯嶋氏の歌声を聴き、アドヴァイスをするようになってかれこれ10年の月日が経ちました。これまでイタリア、フランス、ドイツ、そしてロシアに至る歌曲やオペラアリアを勉強してきました。声楽の教師としては前回やったことを確実なものにしてきてくださるだけで十分なのですが、研究熱心な飯嶋氏は、今でも毎回新たに研究したことを実行し、レッスンに持っていらっしゃいます。

 

ある時、突然にコンコーネ50番の1番から50番までフルに歌い通したいという申し出を受けて、アドヴァイスすることがありました。その後、いつしか特別なひらめきがあったのでしょう。コンコーネ50番全てに「小倉百人一首」の和歌の言葉を乗せたという報告を聞きました。そこで試みに「小倉百人一首」の和歌の言葉を旋律に乗せたコンコーネ50番の最初の数曲を歌われるのを聴いてみました。すると飯嶋氏の独特の感性によって選び組み合わされた言葉とメロディーはなんの違和感もなく私の耳に入ってきました。そこで、その後のレッスンで、残りのすべての曲も同様に聴いてみることにしました。それらについてもやはり飯嶋氏の「小倉百人一首」の深い知識と音楽への感性がしっかりと結びついていました。このような基礎的確認の段階を経た上で、さらにメロディーへの言葉の乗せ方、子音の扱い方、原曲のフレーズやブレスなど、様々な点に関してレッスンを通して一緒に推敲を重ねようということになり、このたび、ようやく今回の歌曲集が出来上がりました。

 

 コンコーネ50番は日本では声楽の定番の練習曲です。母音を美しくなめらかに、そして正確に歌うという声楽の基本を学ぶために使われます。今回の歌曲集では単独の母音だけで歌うのではなく、それぞれの言葉の使われている母音、子音を美しく歌い響かせる練習曲として最適なものになったのではないでしょうか。さらにはコンコーネ50番をはるか昔に終えられた歌い手、愛好家の皆さんにも、新たな魅力ある歌たちに生まれ変わった【藝術歌曲集「小倉百人一首」№1.コンコーネ50番(中声)で歌う】を歌い楽しんでいただけましたら幸いです。

 

声楽家、二期会会員、

上野学園大学教授 

吉田伸昭