診察室から 2月26日(火)インフルエンザは「バカの壁?」4/4

「安くて便利、良心的というキャッチは、多くの皆様方にとっては魅力的なようですが、多くの消費者にとっては落とし穴であることが多く私は常に警戒しています。」

 

 

なぜ、インフルエンザが流行するのかについての確かな情報は得られていません。多くは仮説の域を脱していないようです。そもそもインフルエンザは、どのようにして人から人へと感染していくのでしょうか。

 

インフルエンザは、安くて便利を志向し、公共心が乏しく、自己中心的で、目先の損得勘定に走りがちで、なおかつ無知に加えて傲慢、スマホ情報を盲信する横着な大衆が増加するほど流行する感染症です。

 

 

ゾフルーザ®の出現でインフルは減少するか?

 

 

たった1錠で治せる便利なインフルエンザ薬に対する懸念

 

塩野義製薬(大阪市)が開発、昨年発売したゾフルーザは、タミフルのように5日間連続でのみ続けたり、吸入が必要だったりする従来の薬と比べ、1回錠剤をのめば済み便利な夢の薬というイメージで24日TV東京の大衆番組の話題になったそうです。安くて便利を志向し、公共心が乏しく、自己中心的で、目先の損得勘定に走りがちで、なおかつ無知に加えて傲慢な大衆には受けが良いはずです。

 

このような人々の口から発せられる言葉を列挙してみます。

 

タイプ1:

「インフルエンザにかかるやつは気合が足りぬ!」

(どの時代の発想でしょうか?)

 

タイプ2:

「何もしなくてもインフルエンザに罹らないかもしれないのに、ワクチンするのはもったいない。」

(ワクチン接種で命拾いできるかもしれないのに?)

 

タイプ3:

「ワクチンを接種した翌日にインフルにかかった!」

(流行シーズンに入る前に早目に接種しましょう。すでに、予防接種なので、あなたのように、すでに罹っている人には効きません。)

ゾフルーザ®登場によって、新種のバカの増殖が懸念されます。

 

タイプ4(新型):

「インフルエンザに罹っても、たった一錠の薬で治るのだったら、便利で安くて、お得、合理的、手洗い面倒、マスク面倒、ワクチン料金もったいない。俺って超賢い!」

(そういうあなたは、大損するかもしれませんよ!!)

 

 

さて、ゾフルーザの番組放映があった同日の1月24日に、皮肉なことに、 国立感染症研究所は、新しいインフルエンザの治療薬「ゾフルーザ」を使った患者から、治療薬に耐性をもつ変異ウイルスが検出されたと発表しました。

 

この日は、くしくも国立感染症研究所での発表があった日ですが、こちらの情報にすぐにアクセスするのは限られたスペシャリストに過ぎません。

 

しかし、臨床試験の段階から、従来のインフルエンザ治療薬より耐性ウイルスが生まれやすいと指摘されていたため、当院では当初から処方を控えてきました。1日1回内服の翌日から通常通りに出勤してしまう人は、とても危険だと思います。自分が治っていないばかりでなく、周囲にうつしてしまう可能性が大です。

 

その理由を説明しましょう。ゾフルーザの臨床試験では、耐性変異ウイルスの検出率が12歳未満で23・3%、12歳以上で9・7%と高いため耐性ウイルスが広がると薬の効果が薄れることが懸念されます。これに対してタミフルの耐性変異ウイルスの検出率は0~2%程度です。註)

 

昨年12月に耐性変異ウイルスが発見されました。変異を持たないウイルスに比べて、ゾフルーザに対する感受性が約80~120倍低く、これは臨床的には、ほとんど無効であることを意味します。

 

タミフルのように5日間内服するのは厄介に感じる人がたくさんいるので、とても心配です。インフルでは最低でも5日程度は養生していただく必要がありますが、

 

タミフル服用者は、薬を服用することによって自覚が促されますが、ゾフルーザの処方を希望するようなタイプの方々には余り期待できそうにありません。ゾフルーザの処方数が延びるにつれて、インフル感染者は増えることでしょう。これは私共の大胆な予測ですが、来年から、厚労省の処理法が変更するに及んで、単純に比較検討できなくなることも懸念材料の一つです。

 

「薬の特徴を踏まえた上で適切で注意深い処方を」と呼びかける専門家もいるようですが、「ゾフルーザは使用すべきではない」と解り易く断言できないのは残念なことです。

 

 

今回のまとめ:

「第四のバカの壁」は、<しみったれ>のバカの壁、ということでした。賢い人ほど必要な努力や投資を惜しまず、誠実に社会貢献の務めを果たしています。

愚かな人ほど怠け者で<しみったれ>で丸損してしまい、周りにも不利益をもたらしてしまいます。この責任は、いったい誰が負えばよいのでしょうか?賢明な皆様、私共と一緒に対策をかんがえていただけませんか?

 

 

<お知らせ>

2月27日(水)から3月12日(火)までは、国際学会に出席します。

その間は昨年同様、国際学会や滞在中のエピソードをお伝えします。

最新の臨床医学は、2月は28日(木)までを通常通りの執筆とし、3月1日(金)から3月10日(日)までお休みさせていただき、3月12日(月)から再会します。