最新の臨床医学 2月13日(水)内科Ⅲ

内科2

 

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。

 

糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、たいていの糖尿病専門医よりは、糖尿病について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

Q1-7 

糖尿病の病型分類(成因)と病態(病期)の関連はどのようなのですか?

 

【要点】

成因(発症基準)と病態(病期)は明確に区別しなければなりません。各疾患について、両方を併記する必要があります。

 

糖尿病は、その成因によらず、糖尿病が発病するまでの過程で、種々の病態を経て進展するものと考えられ、また治療に寄っても病態が変化する可能性があります。

 

糖尿病はインスリン作用不足の程度によって3段階を区別することは有用です。

① インスリン治療が不要なもの

②血糖コントロールのためにインスリン注射が必要なもの

③ケトーシス予防や生命維持のためにインスリン投与が必要なもの

 

インスリン依存状態とはインスリンを投与しないと、ケトーシスを来し、生命に危険が及ぶような状態をいいます。

 

ケトーシス予防や生命維持のためのインスリン投与は不要だが、血糖コントロールのためにインスリン注射が必要なものはインスリン非依存状態にあります。したがって、インスリン治療中の患者はインスリン依存状態にあるとは限りません。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

糖尿病を理解するために、まず、糖尿病は一種類ではないということ、同じタイプの糖尿病であっても、病期といって病状の進み具合が異なれば、それに応じた対応が必要であることを弁えてください。

 

そこで、まず糖尿病を成因によって分類してみます。従来、糖尿病は基本的に1型、2型という用語で大きく分類されてきました。しかし、近年明らかになってきた遺伝子異常による糖尿病は「遺伝因子として遺伝子異常が同定された糖尿病」として、これらとは別の括りになります。ただし、一人の糖尿病患者さんの成因は必ずしも一つである場合ばかりではなく、現時点ではいずれにも分類できない「分類不能」の糖尿病もあります。

 

①1型糖尿病:主に自己免疫を基礎にした膵β細胞の破壊性病変のためにインスリンが欠乏することによって発症する糖尿病

 

ウイルス感染など何らかの誘因・環境因子が加わってHLAなどの遺伝因子に作用して起こります。他の自己免疫を合併することが多いです。

 

多くの症例では、発病初期に膵島細胞抗原に対する自己抗体(膵島関連抗体)が証明されます。

 

ただし、なかには「特発性」といって自己抗体が証明されないままインスリン依存状態に至る例があります。

 

その場合、清涼飲料水ケトーシスなどによって、一次的にインスリン依存状態に陥るもの、遺伝子異常など他の原因が特定されるものは特発性には含めません。

 

なお発症・進行の様式によって、劇症、急性、緩徐進行性に細分類されます。

 

 

② 2型糖尿病:インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)・運動不足などの生活習慣、およびその結果としての肥満が環境因子として加わりインスリン作用不足を生じて発症する糖尿病、インスリン非依存状態である糖尿病の大部分がこれに属します。

 

2型糖尿病も遺伝子との関連がありますが、大部分の症例では多因子遺伝が想定されています。単一の遺伝子によるものとは異なり、肥満が環境因子として加わることによって発病し易くなります。その理由の一つは、肥満になるとインスリン感受性が低下するからです。インスリン分泌では、特に糖負荷後の早期の分泌反応が低下します。

 

結果的にインスリン分泌低下とインスリン感受性低下の両者が発病にかかわっており、この両因子の関与の割合は症例によって異なります。

 

膵β細胞機能は、ある程度保たれており、生存のためにインスリン注射が必要になることはまれです。しかし、感染などが合併するとケトアシドーシスという病態を来すことがあります。この病態を招くメカニズムを説明します。

 

まず、糖尿病などでインスリンが不足すると、血液中のブドウ糖を代謝できなくなり、高血糖状態になります。 すると、体はその代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくり出します。 このときに副産物としてつくり出されるケトン体が血液中に急に増える(高ケトン血症)ことで、血液が酸性になり(ケトアシドーシス)、体に異常が発生するというしくみです。

 

これを糖尿病ケトアシドーシスといいます。糖尿病ケトアシドーシスは、若い人で発症しやすいといわれています。 高血糖の症状と、悪心・嘔吐・腹痛などの消化器の症状、またグルコースが尿の中に大量に排泄されることで起こる浸透圧利尿により、体液や電解質が失われることで脱水状態になります。 脱水やアシドーシスになると、低血圧や頻脈がみられることがあります。