最新の臨床医学 1月8日(火)内科Ⅱ(循環器・腎臓・老年医学)

日本循環器病学会のHPで特筆すべきことは、この学会では、禁煙推進委員会がHPにコーナーを設けていて、広く会員その他一般の方に禁煙の必要性を訴えていることです。

 

高血圧症や心臓病などで循環器科を受診する必要のある方はもちろんのこと、すべての患者さんに禁煙を前提とする医療の推進を訴えていくか否かは個々の医師の良心の在り方に関わってくる重要事項だと思います。

 

 

喫煙は喫煙者自身と周囲の非喫煙者にさまざまな喫煙関連疾患を引き起こすが、ニコチン依存と心理的依存を生じて強固な習慣性を持つにいたることが多い。

 

2006年度からはニコチン依存症が治療の対象となる疾病とされ、「ニコチン依存症管理料」が新設されると同時に、保険診療が開始された。

 

現在、ニコチン依存に対してはニコチン製剤やニコチンを含まない内服薬(バレニクリン)による薬物療法が、心理的依存に対しては行動療法が利用されその治療効果を上げている。

 

こうした個人を対象とした禁煙支援に加えて医療機関における敷地内禁煙など環境的な因子に対する取り組みの強化は、喫煙者の禁煙動機や非喫煙者の受動喫煙防止に有効であり、循環器専門医師として積極的に取り組むべき課題である。

 

 日本における成人喫煙率は年々減少し、平成22年には19.5%と初めて20%を割った。男性は32.2%、女性では8.4%と、前年の平成21年(男性38.2%、女性で10.9%)に比べ大幅な減少が認められている。

 

しかし、最も高い年代は、男性は30歳~40歳代でまだ42%、女性は30歳代で14.2%であった。若い女性および未成年の喫煙の増加が問題であったが、未成年者の喫煙率はようやく減少の傾向となっている。

 

ニコチン依存症は確立された疾患として捉えられるべきものであり、喫煙はニコチン依存をもとに心理的依存を生じた結果、強固な習慣となり禁煙が困難となる。

 

喫煙による超過死亡は,2010年には全世界で540万人と推計されている。日本国内では少なくとも19.6万人と推計され、これは死亡者全体の16.3%にものぼる数字である。

 

 

 喫煙者では非喫煙者に比べて平均寿命が短く壮年期死亡が多いことは従来から指摘されてきたが、喫煙者の半数が喫煙に起因する死因で死亡することや、喫煙者の40%は69歳までに死亡することから、壮年期の死亡の1/3から1/2は喫煙が関連しているといわれ、喫煙が多くの早死の原因となっている。

 

中でも循環器疾患の大きなリスクファクターであることは疫学的研究からも明らかであり、日本で1980年から実施された大規模循環器疾患追跡調査(14年間)のNIPPON DATA80においても観察当初年齢が30~60歳の喫煙者の死亡の相対危険度は2倍以上となっている。

 

また受動喫煙の有害性も広く知られるようになってきた。しかしながら、喫煙と喫煙関連疾患の関連についての知識を問う調査では肺がんと妊娠以外のリスクの増加を知っているものの割合は低い。

 

こうしたことから、禁煙希望者のみならず禁煙を希望しない喫煙者や非喫煙者に対しても、正しい知識と喫煙習慣からの離脱のための広範囲の支援を提供するとともに、喫煙しにくい環境整備による禁煙への動機付けは今後ますます重要となる。

 

 

さて、この学会のHPで気になる点を発見しました。

 

国際名誉会員の中に日本人医師が一人も見られないということです。

 

アジア圏では、韓国5名を筆頭に、中国、台湾、パキスタンが各1名ということでした。率直に申し上げて、その理由がとても気になるところです。

 

日本の循環器病学の国際的権威の凋落を直ちに意味するものではない、とは言い切れないのではないかと思われます。