日々の臨床 5月5日金曜日

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:腎機能低下で糖尿病の治療薬が効かない!

 

 

糖尿病は初期のうちから腎障害を引き起こすことは良く知られています。

 

事実、糖尿病の三大合併症の一つが、糖尿病性腎症です。

 

そこで、実に悩ましいことには、腎機能が低下するにつれて、

 

次第に効かなくなく糖尿病の治療薬(血糖降下薬)があるということです。

 

 

その代表はSGLT2阻害薬です。

 

この薬は比較的最近の経口薬(のみぐすり)で、

 

いわゆる糖尿病専門医が積極的に使いたがる薬のようです。

 

75歳以上では慎重投与すべきことが、

 

「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」(2016年5月)

 

で改訂されています。ちなみに高円寺南診療所ではこの薬を処方していません。

 

 

SGLT2阻害薬は、インスリン非分泌系の血糖降下薬の一つで、

 

尿糖排泄を促進することで血糖を下げるものです。

 

尿糖増加に伴い体重減少が期待されます。

 

しかし、尿糖が増えると尿路および性器感染症のリスクが高まります。

 

また、この薬を使うと、外来での尿糖チェックは無意味となります。

 

また、1,5⁻AGなどの血糖コントロールの指標が使えなくなります。

 

 

生活習慣病としての糖尿病(2型糖尿病)における

 

初期治療の基本は食事療法と運動療法です。

 

高円寺南診療所で開発し継続して活動している水氣道®を定期的に続けていると、

 

肥満の軽減(減肥)および持続的かつ安定した血糖降下が期待できます。

 

これを3ヶ月継続しても血糖コントロールが不十分な場合に、経口血糖降下剤を併用します。

 

 

使い分けの第一は、患者さんに肥満傾向があるか無いか、ということです。

 

 

SGLT2阻害薬は肥満傾向のある糖尿病患者に用います。

 

なぜかというと、

 

低体重の患者では体内のエネルギーバランスがマイナスに傾くことによって、

 

脂肪分解が亢進するのですが、

 

血中ケトン体も増加して尿ケトン体が陽性になることがあるので、

 

病態把握が容易でなくなります。

 

 

なぜ、ガイドラインで高齢者への投与に注意を喚起したのかというと、

 

この薬は、浸透圧利尿によって脱水を来しやすいのですが、

 

高齢者では口渇感を感じにくいため脱水による脳梗塞が生じやすくなるからです。

 

また、脱水は高血糖高浸透圧性非ケトン性症候群のリスクにもなります。

 

 

SGLT2阻害薬の最大の問題点は、腎機能低下により効果が減弱することです。

 

肥満傾向の糖尿病患者は腎機能低下が進行しやすいので、

 

長期処方の傾向がある中核病院の糖尿病専門医が

 

SGLT2阻害薬を安易に処方することには賛成しかねます。