呼吸器・感染症内科 Vol.3

今月のテーマ「感染症の最新医療」

 

 

コリスチン・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌・肺炎球菌多価莢膜抗原ワクチン

 

 

薬剤耐性菌の蔓延地域は世界的に拡大傾向にあり、

 

その拡大防止は国際的な保健衛生上の重要課題となっています。

 

 

○コリスチン

 

ポリペプチド系抗菌薬に属し、グラム陰性菌に広いスペクトラムを持っています。

 

ただし、プロテウス、ブルコルデリア、ビブリオ、カンピロバクタなどには有効性が乏しいです。

 

 

βラクタム系、キノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬とは作用機序が異なり、

 

使用頻度が低いことから、多剤耐性菌であっても感受性が保たれることが多いです。

 

 

主に多剤耐性菌(緑膿菌・アシネトバクター)、カルバペネム耐性腸内細菌症で、

 

他に有効な抗菌薬が無い場合の最終手段として用いられます。

 

 

たとえば、ESBL産生菌感染症は、

 

ペニシリン系・セファロスポリン系抗菌薬のほとんどに耐性化しますが、

 

他に耐性がなければカウバペネム系抗菌薬など感受性のある抗菌薬が残っていることが多く、

 

その場合、コリスチンは使用しません。

 

 

注意点は、高頻度で腎機能障害が出現し、投与中の腎機能のモニタリングが必須です。

 

 

また単剤での有効性は低く、

 

内服薬としては吸収率・組織移行率が低く有効な血中濃度に達しにくいことです。

 

 

○カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)

 

5類感染症の全数把握疾患に指定され、全例保健所に報告します。

 

 

腸内細菌(腸内細菌科細菌)とは、グラム陰性桿菌に属し、

 

大腸菌、クレブジエラ菌、赤痢菌、サルモネラの他、

 

主に環境中に存在するエンテロバクタ、セラチアなども含みます。

 

 

広域抗菌薬の乱用が拡大の一因になっています。

 

とくに腸内細菌がカルバペネム系抗菌薬に耐性化すると、βラクタム系抗菌薬もほぼ無効となり、

 

また他の耐性遺伝子を同時に獲得して多剤耐性化し、

 

ニューロキノン系やアミノグリコシド系の抗菌薬の耐性も獲得することが問題になっています。

 

 

とくに大腸菌やクレブジエラなど市中感染症を起こす

 

病原性の高い菌の耐性化することも大きな問題になっています。

 

 

耐性化の機序は、プラスミド上に存在する耐性遺伝子を他の菌から獲得することによります。

 

 

耐性遺伝子の種類はKPC(クレブジエラ・ニューモニアイ・カルバペネメース)型、

 

 

NDM(ニューデリー・メタロβラクタメース)型などが知られています。