院長ご挨拶

飯嶋 正広

 

 

高円寺南診療所は、平成元年開設以来、四半世紀以上にわたり「体と心のトータル・ケア」を提供してきました。その目的のため西洋医学と東洋医学の両面での知識・技術・経験を駆使して診療にあたっています。

 

平成元年開設以来、足かけ30年にわたり「体と心のトータル・ケア」を提供し、今後のわが国のめざすべきモデル診療所の確立を目指してきました。

 

その目標の実現のため西洋医学と東洋医学の両面での知識・技術・経験を駆使した独自の統合医療(全人的医療)を実践しています。

 

私共の統合医療(全人的医療)のモデルは心身相関理論と独自の人格・環境・習慣病理論に基づくものです。

 

心身相関理論とは心身医学の基礎理論です。

 

ところで近年の医学および医療の業界は、EBM(Evidence-Based Medicine)がもてはやされています。EBMは、「科学的根拠に基づく医療」と訳されます。科学的根拠はエビデンスとも呼ばれ、人を対象とした研究(臨床研究)の結果を指します。科学的根拠に基づく医療の本質は、医療者の専門性と患者さんの希望とを総合して医療上の判断を行う考え方と定義されています。そして、1998~1999年に、厚生労働省・医療技術評価推進検討会でEBMを普及させるために、ガイドラインの作成に研究助成を行うことが決定されました。

 

たしかに、実際のEBMや診療ガイドラインは、治験に参加できるような単一疾患でしかも標準的な患者さんにとっては大きな効力を発揮しています。しかし、高円寺南診療所に来院される多くの患者さんは心身両面での多数の疾患を背負っている複合的ケースであるため、EBMや診療ガイドラインを直接活用することができないことを経験しています。

 

EBMに基づく診療ガイドライン作成者ですら「医療者の専門性と患者さんの希望とを総合して医療上の判断を行う考え方」という本来あるべき理念を十分に実践しているのか大きな疑問を抱いています。

高円寺南診療所では、「医療者の専門性と患者さんの希望とを総合して医療上の判断を行う考え方」を実践するうえで不可欠な統合医療(全人的医療)を今年もさらに推進していきたいと思います。それは、多様な患者さんの一人一人の思考・行動パターンを含むお人柄や、日々の生活を取り巻く環境の因子を含めて病気の成り立ちや治療を考えに基づく医療です。これは人格・環境・習慣病理論という私独自の医療観に基づくものです。

 

統合医療(全人的医療)を目指す高円寺南診療所は、とりわけ、専門医療の隙間の病気など現代の標準的医療制度が抱える限界や不備や矛盾、そのため居場所や行き場所を見失い悩み苦しむ弱者である患者の皆様とともに30年間歩み続けることができました。

 

 

健康は自己責任ばかりでは守れません。

 

自然環境や人的・社会的環境の悪化や劣化は、個人の努力ばかりでは如何ともし難いものがあります。

 

喘息やアトピー性皮膚炎をはじめ花粉症やダニアレルギーなどのアレルギーの病気国民病であるとともに環境問題とも密接な関係があります。

 

線維筋痛症や慢性疲労症候群など原因不明とされるリウマチ様疾患も解決すべき課題です。幸い、生活リズム調整療法鍼灸療法心理療法さらには高円寺南診療所オリジナルの新しい画期的な心身医学療法として、水氣道®聖楽療法が効果を発揮しています。これらの独自のシステムがもし保険収載されれば、多くの患者さんを救済することが可能となることでしょう。

 

こうした有効な手立てがあるにもかかわらず、現行の保険診療の枠組のみでは治療効果が不十分な疾患を患っている皆様は、決して特殊で例外的な方々ではありません。

 

むしろ時代の先駆者ともいうべき皆様で、ますます増加の一途にあるように思われます。

 

また、現役世代の皆様は、効率重視の競争社会にあって、メタボリックシンドロームなど生活習慣病をはじめ、ストレスに伴う身体疾患(心身症)などに見舞われがちです。

 

さらに、超高齢社会を迎えて、認知症をはじめ、フレイル・サルコペニアなど医療と介護とにまたがるような大きな課題が日常化しています。

 

高齢者の病気は、ますます複雑化・多様化し、また個別化してきています。そのため、複数の専門診療科を受診しても適切な対応が取れなくなりつつあるのが現状です。疾患単位の専門領域の寄せ集めで、科目間の連携が十分に機能していない一般的な総合病院型の大量生産的マニュアル医療には限界や矛盾が増えてきたように思われます。

 

それに伴い、たとえば高齢者のポリファーマシー(多剤服用)という医療課題が大きく浮上してきました。厚生労働省は個別専門医に対しても、高齢者が複数持つ疾患の治療優先順位に配慮したり、リスク・ベネフィットバランスを検討したりすることを求めていますが、実効性に欠ける掛け声に過ぎません。かといって寄せ集め的な総合診療でも効果不十分であり、やはり心身医療をベースとする統合医療(全人的医療)を導入しなければ解決できない医療問題であると考えています。

 

 

とはいっても、病院と診療所との連携は大切さを増すばかりです。

 

今年は、医学の基盤である内科を中心に、最新の臨床医学の進歩に取り残されることがないよう、一層心がけてまいります。

そこで昨年までの<日々の臨床>を改め、«最新の臨床医学»というタイトルで、毎日を曜日ごとに決めた領域ごとに内科の各領域を皆様と共に勉強していきたいと思います。

 

この現状にいち早く気づいて、また、ご縁があって、いま、この文書をお読みになっている皆様は幸いとなることでしょう。

 

「いま、ここで」の苦痛から少しでも解放されるように支援することは、第一線の医療機関(診療所)にとって大切な使命です。

しかしながら、超高齢社会にあっては、皆が少なくとも5年後、10年後の将来を見据えて、全人的健康のための備え(健康創生)に基づく健康管理による要介護状態や重大な病気の予防が必要です。

 

これの重要性に気づいて生活や行動の変革を行えば、多くの皆様が苦痛に加えて苦悩の老後を送らなくて済むようになります。

 

こうして誕生したのが、新しい独自な診療所外活動です。

 

水氣道®での心身の鍛錬聖楽院における芸術活動は、高円寺南診療所から日本国内のみならず、全世界に向けて提唱している新しい心身医学療法です。

心身医学全人的医療の中心的な要素です。

これらは、順調に成長を続け素晴らしい成果を上げています。

 

 

これからの時代を賢明に生きていくためには既存の権威を盲信せず、世俗の権力に媚びず、弱者同士が一致協力し合って現実の困難を乗り越え、創造的で芸術的な資質を発揮して生産的かつ創造的にたくましく生きていくことが肝要であると確信しています。

 

そうしたかつての弱者の群れの中から、人間愛に満ち、勤勉で優秀な人材が育ちはじめ、私たちのチーム医療や関連する活動にもたくましく積極的に参画し、社会に貢献してくれています。

 

 

最後に、今年は高円寺南診療所30年の歴史の総括を完了した後、

新たに『杉並国際クリニック』として、皆様と共に新しい時代を迎えたいと願っております。

 

疾病の地球規模化やますます盛んになっていく国際交流を背景として、英語をはじめとする諸外国語による診療をさらに充実・発展させていきたいと思います。外来における統合医療(全人的医療)の国際的モデルたらんとすることは、従来からの皆様にとっても、より質の高い医療を提供できることに繋がるものと信じております。

 

 

平成31年元旦

 

院長 飯嶋正広