臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広
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はじめに
皆さん、こんにちは。今日は「肝臓」と労働ストレスについてお話しします。肝臓は体内で最も大きな臓器であり、非常に多くの役割を担っています。肝臓は有害物質の解毒や、栄養素の代謝、血糖の調整、そしてホルモンの管理などにおいて中心的な役割を果たしています。また、強い再生能力を持ち、損傷を受けても修復が可能な臓器です。
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1. 肝臓の働き
肝臓の主な働きには以下のものがあります。
• 胆汁の合成と分泌:
肝臓は1日に約1,000mlの胆汁を分泌します。胆汁はアルカリ性で、消化酵素は含まれませんが、脂肪を乳化し、その分解を助ける役割があります。胆汁は胆のうに一時的に貯留され、脂肪の消化を促進します。
• 代謝作用:
肝臓は、栄養素の代謝において中心的な役割を果たします。
・ グリコーゲンの生成・分解:
肝臓は血糖値を調整するために、グリコーゲンを生成し、必要に応じて分解して血中にブドウ糖を供給します。
・ 血漿タンパク質の生成:
肝臓は、アルブミンなどの血漿タンパク質を生成し、体内のさまざまな機能に寄与します。
・ 血液凝固物質の生成と阻止:
肝臓は、血液凝固に関与する物質や、それを阻止する物質も生成します。
・ アミノ酸代謝:
アミノ酸の分解と再利用は肝臓の重要な役割の一つです。
・ 脂肪酸の分解とコレステロールの合成:
肝臓は脂肪酸を分解し、同時にコレステロールも合成します。
• 貯蔵作用:
肝臓はグリコーゲンや、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E)を貯蔵し、必要に応じてこれらを供給します。
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2. ストレスが肝臓に与える影響
肝臓は非常に多くの役割を担っているため、ストレスがかかるとその機能にさまざまな影響が及びます。特に慢性的なストレスや過度のストレスは、肝臓の働きを大きく乱します。
1. ストレスと血糖調節
• ブドウ糖産生の増加:
ストレス下では、コルチゾールやアドレナリン(エピネフリン)といったストレスホルモンが分泌され、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが血中に放出され、エネルギー源として利用されます。
• 慢性ストレスと高血糖:
ストレスが長期間続くと、コルチゾールレベルが上昇したままになり、血糖値が持続的に高い状態が続きます。これが原因でインスリン抵抗性が発生し、最終的には肝臓への負担が増大し、2型糖尿病のリスクが高まります。
2. 解毒と酸化ストレス
• 毒物負荷の増加:
ストレス下では、アルコールや薬剤、不健康な食習慣の影響で、肝臓が毒物を解毒する負担が増加します。特にストレス時にアルコールを摂取する習慣が増えると、肝臓にかかる負荷が大きくなり、肝障害が進行します。
• 酸化ストレス:
長期間のストレスは、体内で**活性酸素種(ROS)**の産生を増加させ、肝細胞にダメージを与えます。これが進行すると、肝臓に炎症が起こり、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)や肝線維症を引き起こす可能性があります。
3. 肝機能と職場の健康診断
職場の一般健康診断では、肝機能を評価するためにAST(GOT)、ALT(GPT)、およびγ-GTPの検査が行われます。
• AST(GOT)とALT(GPT):
これらの値が上昇すると、肝臓の細胞にダメージがある可能性を示唆し、肝炎などの肝疾患の兆候です。
• γ-GTP:
この値は、特にアルコール摂取量に反応しやすく、アルコール性肝障害の指標となります。アルコールの摂取が多いと、この値が上昇します。
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3. 肝臓の健康を守るためのストレス管理
肝臓の健康を維持するためには、日常的なストレス管理が非常に重要です。以下のポイントを日々の生活に取り入れることが推奨されます。
• 定期的な運動:
運動は、コルチゾールを減少させ、肝臓の負担を軽減します。また、インスリン抵抗性を改善し、血糖値の管理に役立ちます。
• 健康的な食事と飲酒の管理:
アルコールや加工食品を控え、バランスの取れた食事を取ることで、肝臓への負担を軽減することができます。
• 十分な水分補給:
水分をしっかり取ることも、肝臓の機能を保つために重要です。老廃物の排出を促進し、代謝機能をサポートします。
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まとめ
今回は、肝臓がストレスによってどのように影響を受けるかについてお話ししました。肝臓は私たちの体の中で中心的な役割を果たしており、ストレスによってその機能が阻害されると、全身の健康にも悪影響が及びます。日常的なストレス管理を通じて、肝臓の健康を維持し、全身の健康を保つことが大切です。
質問があれば、どうぞ遠慮なくお聞きください。ありがとうございました。
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