臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広
産業医講話シリーズNo9:労働生理(疲労・睡眠・生体恒常性)
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第1回講話:疲労の分類・兆候
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はじめに
皆さん、こんにちは。今月のテーマは「労働生理」です。特に、疲労、睡眠、生体恒常性についてお話しします。最近は、仕事のストレスが増え、疲労の質や回復方法についても新しい課題が増えています。今回は「産業疲労」について詳しく学びます。分かりやすく、具体的な例を交えながら説明していきますので、リラックスして聞いてください。
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1. 疲労の分類
まず、疲労にはどんな種類があるのかを見ていきましょう。疲労は一般的に身体的疲労と精神的疲労に分けられますが、それ以外にもいくつかの分類法があります。
• 身体的疲労:
肉体労働や長時間のデスクワークなど、体を使うことで感じる疲れです。適度な身体的疲労は爽快感を得ることができ、速やかに回復しますが、過度になると筋肉痛や全身的な疲労感が現れます。
• 精神的疲労:
ストレスや集中力を要する作業によって生じる心の疲れです。精神的疲労は、主観的な不快感が長引く傾向にあります。これは、精神的な負荷がかかり続けると、自律神経のバランスが崩れ、ストレスホルモンの分泌が増えることによって引き起こされます。精神的疲労が続くと、イライラ感や集中力の低下、不安感が増すことが多く、それが身体的な症状(頭痛、肩こりなど)としても現れることがあります。
さらに、疲労は以下のようにも分類できます。
• 動的疲労と静的疲労:
動的疲労: 身体活動によって生じる疲労で、ランニングや重いものを持ち運ぶときに感じる疲労です。
静的疲労: 安静時に生じる疲労で、同じ姿勢を長時間続けることで生じます。例えば、長時間のデスクワークによる肩や首の凝りです。静的疲労は、特定の部位の疲労が全身に波及し、全身疲労に繋がる可能性があります。これは、局所疲労が血流や筋肉の酸素供給を妨げることで、他の部位や全身に影響を及ぼすためです。
• 全身疲労と局所疲労:
全身疲労: 体全体に負担を感じる疲労で、長時間の作業後に感じる体全体のだるさがこれに当たります。
局所疲労: 身体の特定の部位にのみ負担がかかる疲労で、例えば長時間のタイピングで指や手首が疲れるのが局所疲労です。局所疲労が全身疲労に発展する場合もあり、特定の部位に繰り返し負担がかかることで、最終的には全身的なエネルギー消費が増加し、全体的な倦怠感へと繋がることがあります。
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2. 疲労兆候
次に、疲労の兆候についてお話しします。疲労にはいくつかの兆候があります。これらを理解することで、自分の体や心の状態を早めに把握し、対策を講じることができます。
• 産業疲労:
仕事によって生じる疲労です。特に、繰り返しの作業や過剰な負荷が原因となります。産業疲労は、日常生活での一般的な疲労とは異なり、特定の作業や業務環境に起因することが特徴です。また、同じ作業を長時間繰り返すことや、精神的なプレッシャーを伴う仕事では、疲労が蓄積しやすくなります。
• 急性疲労:
一時的に感じる強い疲労で、通常は休息を取ることで回復します。ただし、急性疲労が繰り返し蓄積すると、慢性疲労に移行することがあります。この移行は、休息が不十分だったり、ストレスが持続したりする場合に起こりやすいです。
• 慢性疲労:
長期間続く疲労で、休んでもなかなか回復しないものです。ストレスや過労が原因になりやすいです。急性疲労から慢性疲労への移行には、日周性疲労が関与することがあり、日中の疲労が次第に回復しにくくなることで、慢性的な疲労感が定着します。
• 日周性疲労:
日常生活の中で、特定の時間帯に感じる疲労です。例えば、午後に疲れが出やすい人が多いですが、一方で午前中に特に疲れを感じるタイプの方もいます。午後に疲れを感じやすいタイプは、日中の活動によってエネルギーを多く消費し、午後にはそのエネルギーが枯渇するためです。午前中に疲れを感じるタイプは、夜間の睡眠が十分に取れていなかったり、睡眠の質が低下していたりすることが原因で、朝から疲労感が残っていることが考えられます。
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まとめ(第1回)
今日は、疲労の種類とその兆候についてお話ししました。精神的疲労や局所疲労がどのように全身疲労に繋がるか、また産業疲労の特徴についても理解いただけたと思います。
今回の講話では、精神的疲労の背景や局所疲労から全身疲労への発展、産業疲労の特徴、そして急性疲労と慢性疲労の関係について、分かりやすい説明となるよう試みました。しこれにより、参加者が自分の疲労をより正確に理解し、適切に対応できるようになることを目指しています。
次回は、疲労の検査法や予防・回復方法についてお話ししますので、ぜひ引き続きご参加ください。
参考文献:
1. 厚生労働省. (2019). 労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト
2. Gawron, V. J. (2000). Human performance, workload, and situational awareness measures handbook. CRC Press.
3. Grandjean, E. (1988). Fitting the Task to the Man: A Textbook of Occupational Ergonomics. CRC Press.
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