臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広
産業医講話シリーズNo7:事務所衛生基準規則について(前半)
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はじめに
皆さん、こんにちは。今日は「事務所衛生基準規則」についてお話しします。少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、職場巡視のチェック項目であるばかりでなく、実は私たちの日常生活にも関連が深い内容です。できるだけわかりやすく説明しますので、リラックスしてお聞きください。
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事務所衛生基準規則とは?
まず、事務所衛生基準規則について簡単にお話しします。これは、安全衛生法(安衛法)に基づいて、事務所の衛生基準を定めたものです。つまり、皆さんが毎日働く環境を快適で安全なものにするためのルールです。この規則を守ることで、健康的に働ける職場環境が維持されます。
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日常生活での「空調」との関係
ここで、皆さんが普段使っている「空調」と、事務所で使われる「空気調和設備」との違いについて少し触れておきましょう。
日常生活で使われる「空調」は、エアコンやヒーターを指すことが多いですね。これらは主に部屋の温度を調整するために使います。例えば、夏は部屋を涼しくし、冬は暖かくする、といった役割です。しかし、事務所で使われる空気調和設備は、単に温度を調整するだけではなく、<空気の質まで管理する>という点でより高度です。例えば、空気中の二酸化炭素濃度や湿度、浮遊粉塵などもコントロールしています。
ですので、事務所の空気調和設備は、家庭用の空調よりも多くの役割を持ち、より精密に管理されています。これが、事務所の衛生基準を維持するためにとても重要なのです。
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空気環境の基準
さて、事務所内での空気環境を良好に保つために、いくつかの基準が定められています。具体的には、以下のような基準があります。
1. 二酸化炭素の含有率
o 事務所内の空気中に含まれる二酸化炭素の量は、100万分の1,000以下であることが求められます。これは、私たちが快適に、そして健康的に呼吸できる空気を保つための基準です。
2. 相対湿度
o 室内の湿度は40%以上70%以下に保つ必要があります。湿度が低すぎると乾燥して喉や肌に悪影響を及ぼし、逆に高すぎるとカビが発生しやすくなるため、この範囲が理想的とされています。
実際に受けた質問1:
相対湿度とは、普通の湿度とは違うのですか?
回答:
相対湿度というのは、空気中にどれだけの水蒸気が含まれているかを、最大でどれだけ含むことができるかという基準と比較して示したものです。普通に「湿度」と言うときは、実はこの相対湿度のことを指している場合が多いのです。
空気は温度によって含むことができる水蒸気の量が変わります。たとえば、暖かい空気はたくさんの水蒸気を含むことができますが、冷たい空気はあまり含めません。相対湿度は、その温度で空気が持てる水蒸気量の何パーセントが実際に含まれているかを示しています。
たとえば、20℃の空気があるとして、その空気が持てる水蒸気の量の半分だけしか水蒸気が含まれていないとします。この場合、相対湿度は50%ということになります。この相対湿度が低すぎると空気が乾燥しすぎて、肌や喉に悪影響を与えることがあります。逆に、高すぎると蒸し暑く感じたり、カビが生えやすくなったりします。そのため、相対湿度は、快適で健康的な環境を保つために重要な指標なのです。
実際に受けた質問2:
室内の湿度基準が40%以上70%以下と幅広い理由はなぜですか?
回答:
室内の湿度基準が40%以上70%以下と幅広く設定されているのには、いくつかの理由があります。
まず、湿度の感じ方は人によって異なることが多いです。例えば、同じ湿度でも、ある人には快適に感じる一方で、別の人には少し乾燥していると感じることがあります。そのため、基準が広めに設定されていることで、多くの人が快適に感じる範囲をカバーできるようになっています。
次に、季節によっても快適な湿度が異なります。例えば、冬は空気が乾燥しやすいので、湿度が40%でも快適に感じることが多いですが、夏になると湿度が高くなりやすいので、70%でも不快に感じない場合があります。このように、湿度の感じ方は季節や外気温にも影響されるため、ある程度の幅を持たせた基準が必要になるのです。
さらに、湿度が40%以下だと乾燥しすぎて、喉や肌に悪影響を与える可能性があります。一方で、湿度が70%を超えると、カビが生えやすくなったり、ダニが繁殖しやすくなったりします。そのため、この基準は、健康を保ちながら快適な環境を維持するために設定されたものです。
このように、湿度基準が幅広く設定されているのは、個々の快適さや季節変動、健康リスクを考慮しているためなのです。
空気調和設備とは、空気を浄化し、温度、湿度、そして流量を調節して供給できる設備のことです。また、機械換気設備とは、空気を浄化し、流量を調節して供給できる設備のことを指します。どちらも、オフィスの空気環境を整えるために重要な役割を果たします。
機械による換気のための設備に対して、事業者は、換気設備を初めて使用するときや分解して改造または修理を行ったとき、および2ヵ月以内ごとに1回、定期に異常の有無を点検し、その結果を記録して3年間保存しなければなりません。
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空気環境基準の表
以下は、事務所内の空気環境基準を簡潔にまとめた表です。
実際には、もっとたくさんありますが、本日は以下の3項目だけ覚えておいてください。
これらの基準に従って、事務所内の空気環境が適切に保たれているかどうかを確認することが重要です。
まとめ(前半)
今日は、事務所衛生基準規則についてお話ししました。これらの基準や設備の管理は、皆さんが毎日安心して働ける環境を作るために非常に重要です。空気環境が適切に管理されていることで、健康的に働くことができ、業務の効率も向上します。
次回は、後半で、より詳しくお話いたします。何か質問があれば、どうぞ気軽に聞いてください。これからも安全で快適な職場環境を一緒に作っていきましょう。ありがとうございました。
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