『嘱託産業医』の相談箱

 

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臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>


産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広

 

産業医講話シリーズNo6:産業医による長時間労働者の面接指導(後半)

 

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はじめに
こんにちは、前回に続いて「産業医による面接指導」についてお話しします。今回は、面接指導後にどのような対応が必要になるのか、さらに研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度の対象労働者についても触れていきます。

 

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面接指導後の対応

まず、面接指導が行われた後の対応についてです。事業者は、面接指導の結果に基づいて、労働者の健康を守るために必要な措置を「速やかに」講じる義務があります。この「速やかに」という表現は、実務的には2週間から1ヶ月以内に対応することが望ましいとされています。これは、労働者の健康を守るために、迅速な対応が求められるからです。


具体的には、就業場所の変更、作業内容の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など、労働者の負担を軽減するための措置が考えられます。また、これらの対応を衛生委員会で報告し、職場全体での環境改善につなげることも重要です。


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意見聴取と記録の作成・保存


面接指導の結果については、事業者が産業医から意見を聴取することが求められます。この意見に基づいて、労働者にとって最も適切な措置を講じることが大切です。
また、面接指導の結果や対応についての記録は、5年間保存しなければなりません。記録に残すべき事項は、実施年月日、労働者の氏名、面接を行った医師の名前、労働者の疲労の蓄積状況、心身の状態、そして医師の意見です。


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研究開発業務従事者と高度プロフェッショナル制度の対象労働者


ここで、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度の対象労働者についても触れておきます。


研究開発業務従事者は、例えば新製品の開発や技術革新に関わる仕事をしている方々です。これらの業務は非常に高い専門性が求められ、通常の労働時間管理の枠を超えた働き方が認められることがあります。しかし、だからこそ、労働者の健康管理がより一層重要になってきます。


高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識やスキルを持つ労働者が、自分の裁量で働ける制度です。この制度に基づく労働者は、時間外労働の上限がなく、仕事の結果だけが評価されるという特徴があります。しかし、これもまた長時間労働になりがちで、健康への影響が懸念されるため、面接指導などの健康管理が必要です。


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事後措置の実施


面接指導の結果に基づき、事業者が労働者の健康を守るために講じる措置は非常に重要です。労働者の負担を軽減するために、必要な措置を講じることが求められます。さらに、これらの対応は、産業医や衛生委員会と連携して行い、職場全体での健康管理体制を強化することが重要です。


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まとめ(後半)


今日は、面接指導後に必要な措置と、研究開発業務従事者および高度プロフェッショナル制度の対象労働者についてお話ししました。面接指導は労働者の健康を守るための重要なステップであり、適切な対応を行うことで、職場全体の健康管理を向上させることができます。これからも、しっかりとした健康管理に努めていきましょう。
何か質問があれば、遠慮なく声をかけてください。ありがとうございました。