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臨床産業医オフィス

 

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>


産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広

 

産業医講話シリーズNo4:就業規則と産業医について

 

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はじめに
皆さん、こんにちは。今日は「就業規則と産業医」というテーマでお話しします。就業規則と聞くと、社会保険労務士の仕事のように思われがちですが、実は私たち産業医にとっても非常に重要なものなのです。特に、健康診断やストレスチェック、復職面談の場面で深く関わってくるので、ぜひ理解を深めていただければと思います。


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就業規則とは?
まず、就業規則について簡単におさらいしましょう。就業規則というのは、会社と従業員が守るべきルールや労働条件を定めたものです。例えば、勤務時間や休暇、賃金の支払い方法、懲戒処分などが記載されています。就業規則があることで、労働者と使用者の間で労働条件に関するトラブルを防ぎ、健全な労働環境を維持することができます。


就業規則は、従業員が常時10人以上いる事業所で必ず作成しなければならないと法律で定められています。そして、新たに就業規則を作成したり、既存の就業規則を変更したりする際には、その内容を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。


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就業規則が産業医にとって重要な理由
では、なぜこの就業規則が産業医にとって重要なのか、少し掘り下げて説明しましょう。


1. 健康診断やストレスチェックとの関係
まず、健康診断やストレスチェックの結果に基づいて、従業員の健康管理を行う際、就業規則が基準として役立ちます。例えば、健康診断の結果によって就業に制限が必要な場合、その制限が就業規則にどのように反映されるかが重要です。特に、就業規則には、健康診断の受診義務やその結果に基づく措置について明確に記載されていることが望まれます。


2. 復職面談や継続面談との関係
次に、復職面談や継続面談の場面でも、就業規則は重要です。例えば、病気や怪我で休職していた従業員が復職する際、そのプロセスや復職後の勤務条件がどうなるかは、就業規則に基づいて判断されます。また、復職後の継続的な面談や健康管理も、就業規則の中でその取り扱いが規定されていることが多いです。これにより、従業員が無理なく職場復帰できるようにサポートすることができます。


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就業規則のポイント


就業規則には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。


1. 意見聴取
o 就業規則を作成・変更する際には、労働者の代表から意見を聴く必要があります。これは、労働者が規則に納得し、守るために重要なステップです。


2. 記載事項
o 就業規則には、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項があります。絶対的必要記載事項には、労働時間や休暇など、必ず記載しなければならない項目が含まれます。一方、相対的必要記載事項には、制裁規定や退職手続きなど、該当する場合には記載が必要な項目が含まれます。これらの事項がしっかり記載されていないと、労基法違反になる可能性があります。


3. 制裁規定とその制限
o 就業規則で制裁を科す場合、その範囲は法律で制限されています。過度な制裁は無効となり、労働者の権利を侵害することがないように注意が必要です。


4. 労働者への周知義務
o 就業規則は、労働者全員に周知されていなければなりません。例えば、社内イントラネットで閲覧可能にしたり、紙で配布したりするなどの工夫をして、全ての従業員がいつでも確認できるようにする必要があります。


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就業規則と労働契約の関係
最後に、就業規則と労働契約の関係についても少し触れておきます。労働契約と就業規則が異なる条件を定めている場合、基本的には就業規則が優先されます。例えば、労働契約で定められた労働条件が、就業規則の基準に達していない場合、その部分は無効となり、就業規則の基準が適用されることになります。


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まとめ
今日は、就業規則がなぜ産業医にとって重要なのかをお話ししました。就業規則は、単なるルールブックではなく、皆さんの健康と安全を守るための重要な基準です。健康診断やストレスチェック、復職面談の場面で、就業規則がどのように関わってくるのかを理解することで、より良い労働環境を作り出すことができます。
もし、今日のお話で何か疑問や不明点があれば、どうぞ遠慮なく質問してください。


ありがとうございました。

 

9月30日PDF