『嘱託産業医』の相談箱

 

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9月23日(月)

 

臨床産業医オフィス


<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広


産業医講話シリーズNo3:ストレスチェックについて

 

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はじめに


皆さん、こんにちは。今日は「ストレスチェック」についてお話しします。ストレスチェックは最近よく耳にする言葉ですが、実際に何をするのか、どんな目的があるのかを知っている方は意外と少ないかもしれません。今回はその基本的なところを、できるだけ分かりやすくお話ししますので、少しでも興味を持って聞いていただけたらと思います。

 

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ストレスチェックの目的


まず、ストレスチェックの主な目的についてお話しします。ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために行うものです。これを一次予防といいます。要するに、ストレスが溜まりすぎて心や体に問題が起きる前に、早めにその兆候を見つけて対処しようというわけです。心の健康を守るためには、早めの対策が非常に重要なのです。

 

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ストレスチェックの実施義務とその内容


次に、ストレスチェックの実施についての義務についてです。事業所では、従業員が常時50人以上いる場合、ストレスチェックを年に1回行うことが義務付けられています。従業員が50人未満の事業所については、当分の間は「努力義務」という形になっていますが、できるだけ実施しておくことが望ましいとされています。


ストレスチェックの実施には、3つの重要な領域が含まれます。それは以下の3つです。

 

1. 心理的負担

o これは、日常業務で感じているストレスの程度を測るものです。仕事量が多すぎるとか、人間関係に悩んでいるといったことをチェックします。

 

2. 心身の自覚症状

o 心や体にどんな不調を感じているかを確認します。例えば、「眠れない」「胃が痛い」「いつもイライラしている」などの自覚症状をチェックします。

 

3. 他の労働者からの支援

o 職場でのサポート体制がどうなっているかを把握します。同僚や上司からの支援があるか、孤立していないかといったことを確認します。
これらの領域について、医師や保健師が心理的負担の程度を把握するために検査を行います。

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ストレスチェックの結果の扱い


ストレスチェックの結果は、非常にデリケートな情報です。まず、結果は直接労働者本人に通知されます。そして、結果を事業者に提供するには、事前に労働者の同意が必要です。この同意なしに結果を事業者に渡すことはできません。これはプライバシー保護の観点から非常に重要です。


事業者は、同意を得て結果を受け取った場合、その結果を記録して5年間保存する義務があります。さらに、ストレスチェックの結果、高ストレス者と認定された方には、面接指導を行う必要があります。この面接指導は、本人が希望した場合に行われますが、事業者はその申し出に対して「遅滞なく」対応しなければなりません。

 

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面接指導後の対応


面接指導を行った結果、医師からは様々なアドバイスや意見が出されることがあります。例えば、労働者の就業場所の変更や作業内容の見直し、労働時間の短縮、深夜勤務の回数の減少などが考えられます。事業者は、これらの医師の意見をしっかりと受け止め、必要に応じて衛生委員会で報告し、適切な措置を講じることが求められます。


この措置も記録に残し、5年間保存する義務があります。さらに、ストレスチェックの結果をまとめた「検査結果等報告書」を、毎年、労働基準監督署に提出する必要があります。これは従業員が50人以上の事業所に義務付けられているものです。


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まとめ


今日は、ストレスチェックについてお話ししました。ストレスチェックは、皆さんの心の健康を守るための重要なツールです。定期的に行うことで、ストレスがたまりすぎる前に対応することができます。皆さんが元気に働き続けられるよう、これからもストレスチェックを有効に活用していきましょう。


もし何か質問や不安があれば、遠慮なく私たちに相談してくださいますように。ありがとうございました。

 

9月23日PDF