企業の衛生委員会にける産業医の「衛生講話」㉒

 

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企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」

 

第21回:特論⑩

 

カスタマーハラスメント対策(その5)

 

杉並区役所安全衛生委員会(令和6年7月18日)産業医講話参考資料

 

産業医講話のテーマとして提案されたカスタマーズ・ハラスメント対策に関して、カスタマーズ・ハラスメント対策というテーマに関して、友人であり、また私の患者でもあるA氏に、匿名を条件にインタビューする機会を得ました。A氏は、私の元国家公務員で定年後に現在行政法の専門家として某大学で教鞭をとっています。

 

最初に、インタヴューの流れを振り返ってみます。

 

友人A氏とのインタビューの質疑応答を通じて、省庁の担当や地方公共団体の対応について、以下のように詳しく学びました。

 

まず、カスタマーズ・ハラスメント対策を担当すべき省庁についての質問です。厚生労働省がその主体であり、労働環境や労働者の権利保護に関する政策を管轄しているため、カスタマーズ・ハラスメントもその一環として取り扱われています。

 

また、地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメント対策について、一般的には厚生労働省ではなく該当する地方自治体の関連部署が担当することが説明されました。具体的には、区役所や関連部局がその役割を果たします。

 

このように、地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメント対策に関しては、被害者支援や再発防止策の検討など、様々な手順があります。具体的な対応は、被害の程度や状況に応じて柔軟に行われます。

 

さらに、地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメント対策を支援するために、都や国の担当部署についても説明がありました。都道府県労働局や厚生労働省地方厚生局などが、地域の労働者や雇用環境に関する政策や指導を行っています。

 

最後に、総務省や法務省がカスタマーズ・ハラスメント対策において補助的な役割を担っていることが明らかにされました。総務省は地方自治体の支援や指導を行い、法務省は法的なアドバイスや情報提供を行う役割を果たしています。

 

このように、各省庁や地方自治体が連携し、カスタマーズ・ハラスメント対策に取り組んでいます。彼らの協力により、労働者の権利保護や労働環境の改善が図られています。

 

飯嶋医師(杉並区役所産業医):

Aさん。本日は、急な御願いにもかかわらず、快諾してくださいまして、ありがとうございます。

 

A氏:

いえ、こちらこそよろしくお願いいたします。私にとっても大切で興味深いテーマです。ただし、予め申し上げておきますが、この問題についての対策は、主に民間企業に対してですが、厚生労働省もようやく企業独自の対策を促進すべきかどうか検討をはじめている段階のようです。また、私もOBではありますが、必ずしもこのテーマに特化した専門家ではないことを予めご了解ください。そこで、区の職員の皆様には、あくまでも参考程度、ということでご了解を得てくださいますよう、お願いいたします。

 

飯嶋医師(杉並区役所産業医):

了解いたしました。その旨、インタビュー記録の冒頭に明記させていただきます。さっそくですが、質問をはじめさせていただきます。

 

A氏:

どうぞ、ご質問ください。私の答えられる範囲でお答えいたします。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

質問1:

日本国においてカスタマーズ・ハラスメント対策を担当すべきなのは、いずれの省庁なのか教えてください。

 

回答1:

日本国において、カスタマーズ・ハラスメント対策を担当すべき省庁は、一般的に厚生労働省(またはその所管部局)です。厚生労働省は労働環境の健全性や労働者の権利保護に関する政策を管轄しており、カスタマーズ・ハラスメントも労働環境における重要な問題の一つと位置づけられています。

 

 

質問2:

日本国において、カスタマーズ・ハラスメント対策を担当すべき省庁は、民間企業における対策ではなく、たとえば東京都特別区などの地方公共団体の職員が区民から受けるカスタマーズ・ハラスメント対策についても、一般的に厚生労働省(またはその所管部局)なのでしょうか?

 

回答2:

申し訳ありません、誤解を招く答えでした。一般論で答えてしまいました。地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメント対策については、一般的に厚生労働省ではなく、該当する地方自治体の関連部署が担当します。具体的には、東京都特別区などの地方公共団体の場合、区役所や関連部局がカスタマーズ・ハラスメントに関する相談や対応を行います。地方自治体は、地域社会の健全な発展と市民の福祉を担当しており、その一環としてハラスメント対策も重要な課題となっていることでしょう。

 

 

質問3:

地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメント対策については、該当する地方自治体の関連部署が担当するのですね。そして、具体的には、東京都特別区などの地方公共団体の場合、区役所や関連部局がカスタマーズ・ハラスメントに関する相談や対応を行うとのことですが、区役所職員が担当した区民からのカスタマーズ・ハラスメントを受けた場合は、具体的にどのような対応がなされるべきでしょうか?

 

回答3:

地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメントの対応は、以下のような手順に従うことが一般的です。


被害の受けた職員の安全確保:

まず、被害を受けた職員の安全を確保します。必要に応じて、直ちに安全な場所へ移動させたり、警備員や上司に通報したりします。

 

事情の確認と記録:

被害を受けた職員から事情を聴き、カスタマーズ・ハラスメントがどのような状況で起きたのかを確認します。この際には、詳細な記録を取ります。

 

被害者支援と心理的ケア:

被害を受けた職員に対して、精神的な支援や心理的なケアを提供します。必要であれば、カウンセリングや相談支援を提供します。
加害者の取り締まりと指導: カスタマーズ・ハラスメントを行った加害者に対して、適切な指導や処分を行います。これには、注意や警告、場合によっては法的措置を含む場合もあります。


再発防止策の検討と実施:

カスタマーズ・ハラスメントが再発しないよう、適切な予防策や対策を検討し、実施します。これには、職員教育やトレーニング、セキュリティ対策の強化などが含まれます。


情報の共有と報告:

カスタマーズ・ハラスメントの対応に関する情報は、関係する部署や関係者間で適切に共有され、必要な報告が行われます。これにより、類似の事案に対する対応が円滑に行われるようにします。

 

地方公共団体では、これらの手順に基づいて、被害者の保護と加害者の取り締まりを行い、カスタマーズ・ハラスメントの防止と解決に取り組んでいくことになるのではないかと考えております。

 

 

質問4:

それでは、地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメントの対応を支援する都や国の担当部署を具体的に教えてくださるととても助かります。

 

回答4:

地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメントの対応を支援するために、都や国の担当部署としては以下のようなものがあります。


都道府県労働局:

都道府県労働局は、地方公共団体の労働環境や労働者の権利に関する問題に対応する役割を果たしています。カスタマーズ・ハラスメントの対策や相談に関する情報提供や支援を行うことがあります。


厚生労働省地方厚生局:

厚生労働省地方厚生局は、地域の労働者や雇用環境に関する政策や指導を行う部署です。地域の労働者がカスタマーズ・ハラスメントに遭った場合の相談窓口として機能することがあります。


消費者センター:

消費者センターは、消費者に関する相談やトラブル解決を支援する機関ですが、一部の地域では労働者のカスタマーズ・ハラスメントに関する相談も受け付けていることがあります。


労働基準監督署:

労働基準監督署は、労働基準法に関する監督や指導を行う機関であり、労働環境における問題に対応します。カスタマーズ・ハラスメントが労働基準法に違反する可能性がある場合、労働基準監督署が介入することがあります。

 

これらの部署や機関は、地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメント対策を支援し、労働者の権利保護や労働環境の改善に取り組んでいるか、少なくとも、今後はさらにその役割を強化していくことになるのではないか、と想定しています。

 

 

質問5:

いまのお話の中で、消費者センターというのは、意外でした。消費者センターは、消費者に関する相談やトラブル解決を支援する機関ですが、一部の地域では労働者のカスタマーズ・ハラスメントに関する相談も受け付けていることがあるのですね。それでは、区役所の職員が区民から受けたカスタマーズ・ハラスメントについて、誰がどのように相談することを想定することができますか?

 

回答5:

区役所の職員が区民から受けたカスタマーズ・ハラスメントについて相談する場合、以下のような方法が考えられます。


上司や人事部門への相談:

最初に、職場内の上司や人事部門に相談することができます。上司や人事部門は、労働環境や労働者の権利に関する問題に対応する責任があります。カスタマーズ・ハラスメントに関する相談や報告は、これらの部署を通じて対応される場合があります。


労働組合への相談:

労働組合に加入している場合、労働組合の担当者に相談することができます。労働組合は、労働者の権利や福利厚生を代表する組織であり、カスタマーズ・ハラスメントに関する問題に対する支援や助言を提供することがあります。


消費者センターへの相談:

一部の地域では、消費者センターが労働者のカスタマーズ・ハラスメントに関する相談も受け付けている場合があります。区役所の職員が消費者センターに相談することで、労働者としての権利や対応方法についてアドバイスを受けることができます。


ああ、失礼!そのために、産業医の飯嶋先生が期待されているのでしたね!

いずれにしましても、これらの方法により、区役所の職員はカスタマーズ・ハラスメントに遭った場合に、適切な相談先を見つけることができます。重要なのは、早期に問題を上司や関連部署に報告し、適切な対応を求めることなのではないでしょうか。

 

 

質問6:

そもそも論になって恐縮ですが、地方公共団体におけるカスタマーズ・ハラスメントの対応を支援するために、国の担当部署として、厚生労働省が主体であり、たとえば、総務省や法務省が関与しない理由について教えてください。

 

回答6:

なるほど、ご尤もなご質問です。国の担当部署として厚生労働省が主体である理由は、カスタマーズ・ハラスメントが労働環境や労働者の権利に密接に関連しているためです。カスタマーズ・ハラスメントは、一般的に労働者が顧客や利用者から受けるハラスメントの形態の一つであり、労働環境の問題として位置付けられます。そのため、労働者の権利保護や労働環境の改善を担当する厚生労働省が、カスタマーズ・ハラスメント対策の主体となっています。


総務省や法務省がカスタマーズ・ハラスメント対策に直接関与しない理由は、以下のような点が考えられます。


業務分担の原則:

各省庁がそれぞれの分野に特化して業務を担当するため、厚生労働省が労働環境に関する問題を担当するのが自然な役割分担とされています。


法的な規定の関係:

カスタマーズ・ハラスメントが労働環境や労働者の権利に関する問題であるため、法的な規定や労働関連の法律に基づいて対応する必要があります。このため、法務省との関係は、法的な側面での支援やアドバイスを求める場合に関与することがありますが、主体的な対応は厚生労働省が行います。


地方自治体の自治権:

カスタマーズ・ハラスメントの対応は、地方自治体の管轄下で行われることが一般的です。そのため、総務省が地方自治体に対して一元的に指示を出す必要性は低く、地域の実情に合わせて地方公共団体が対応することが重視されます。


以上のような理由から、厚生労働省がカスタマーズ・ハラスメントの対応を主体としている一方で、総務省や法務省は関連する法的な規定や地方自治体の支援など、補助的な役割を担っています。

 

 

質問7:

厚生労働省がカスタマーズ・ハラスメントの対応を主体としている一方で、総務省や法務省は関連する法的な規定や地方自治体の支援など、補助的な役割を担っているとのことですが、実際上の説明してください。

 

回答7:

具体的に、総務省や法務省がカスタマーズ・ハラスメント対策において担う補助的な役割について説明します。

 

総務省:

地方自治体支援: 総務省は地方自治体の支援や指導を行う役割を担っています。地方自治体がカスタマーズ・ハラスメントの対策に取り組む際に、必要な情報やガイドラインを提供したり、地域ごとのニーズに合わせた支援を行ったりしています。また、地方自治体が適切な措置を講じるための助言や指導を行うこともあります。


法務省:

法的アドバイス: カスタマーズ・ハラスメントに関連する法的な問題や規定について、法務省がアドバイスや情報提供を行います。特に、労働関連の法律や労働基準法に基づく労働者の権利や雇用規則の解釈に関する支援を提供します。地方自治体や企業が法的な問題に直面した場合には、法務省が必要なアドバイスや情報を提供し、法的な観点からの対応を支援します。

 

これらの役割により、総務省や法務省はカスタマーズ・ハラスメント対策において、厚生労働省と連携して地方自治体や関係機関に必要な支援を提供し、より効果的な対応を促進しています。

 

 

飯嶋医師(杉並区役所産業医):

Aさん。とても分かりやすく、丁寧に説明してくださいましてありがとうございました。やはり、第一線の要職を歴任された行政マンとしての永年の御経験と、アカデミックな研究活動、教育に携わっていらっしゃる方のお話は説得力があり、とても実践的なアドバイスもいただけました。

 

A氏:

いえいえ。厳密に正しく回答できていない箇所もあるかとは思いますが、あくまでも参考意見ということでお願いいたしたいと思います。私自身も杉並区民の一人ですので、飯嶋先生や杉並区の職員の皆様、ひいては地元杉並区民の皆様のために少しでもお役に立てれば幸いです。

 

8月26日PDF