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企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」

 

第13回:特論③職業性疾病・労働災害としての腰痛(その3)

 

「職業性疾病としての腰痛は、労働災害である」という理解が大切です。
そのような理解が乏しい限りにおいて、職場における職業性腰痛の発生を減少させることは難しいでしょう。

 

そこで、今回は、腰痛予防体操と腰痛治療体操とのプログラム内容の違いについて理解を深めていきたいと思います。

 

越痛治療体操と腰痛予防体操は、それぞれ異なる目的を持ち、それに応じてプログラム内容も異なります。職場で実施し易く、かつ、適切なのは、腰痛予防体操です。

 

1.腰痛予防体操
腰痛の発生を予防し、腰部の健康を維持することが主な目的です。健康な個人や、腰痛のリスクを抱えている個人に対して行われます。


腰痛予防体操は健康な状態を維持することを目指すため、プログラム内容としては、
特定の症状に対する治療よりも、継続的な健康維持とリスク管理が重視されます。
まず、


❶腰部の筋肉を強化し、

➋柔軟性を維持する
ためのエクササイズが中心となります。
ついで、職業性疾患としての腰痛予防、労働災害としての腰痛予防対策として、

❸正しい姿勢や身体の使い方を学ぶための指導

❹日常生活での腰への免荷(負荷を軽減すること)ためのアドバイス
などは、職場で実施するようにしたい項目です。

 

2.腰痛治療体操

腰痛の症状を軽減し、回復を促進することが主な目的です。既に腰痛が発生している個人に対して行われます。


腰痛治療体操は特定の症状を治療するために、痛みの原因や症状に合わせたプログラム内容となります。


❶ 特定の筋肉の強化やストレッチ、

➋姿勢の改善

❸腰部の安定性の向上:柔軟性の維持、筋力の向上

❹症状に対する個別の体位改善などの治療法

 

腰痛に対する1.予防体操、2.治療体操は、いずれも基本的には、個々の状況に応じて調整されるべきです。なお、1.予防体操は、業種などの職業上のニーズを考慮して集団で実施することが可能です。

 

7月1日PDF