企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」⑱

 

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企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」


第17回:特論⑦カスタマーハラスメント対策(その1)

 


<令和6年7月18日(木)の杉並区役所安全衛生委員会産業医講話資料から>

 

テーマ「カスハラに対する有用な対応策や、職員がとるべき行動」

 

杉並区役所統括産業医 飯嶋正広

 

杉並区役所の安全衛生委員会の議題の一つとして、区の統括産業医による講話が予定されています。そのテーマとして「カスタマーハラスメント対策」というのは、自治体としては先進的であり、現在のみならず近未来を想定した上での重要な課題であると受け止めました。

 

そして、このテーマで5月中旬にすでにお引き受けしましたが、区の職員のみに限定せず少なくとも区民全体が、真摯に受け止めて学び合っていくことが欠かせないということを改めて深く認識する機会となりました。

 

 

想定質問1:

わが国におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)とは具体的にどのような内容を意味しますか?

 


回答1:

日本におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)には、厳密な法的定義が与えられていません。したがって、法律の専門家も対応に苦慮するケースが少なくないものと拝察します。


しかし、現在の社会通念上は、カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や利用者が企業の従業員に対して行う過度なクレームや威圧的な行動を指すものと理解されているようです。


そこで、社会一般のコンセンサスと考えられる者の中から具体例を挙げて分類することを試みることは意味があるのではないかと考えます。


以下のような行動がカスタマーハラスメントに該当するものと考えられています。


❶ 暴言や脅迫:従業員に対して怒鳴ったり、罵ったり、脅したりする行為


➋ 過度な要求:合理的ではない要求や、サービス範囲を超えた無理な要求を繰り返すこと


❸ 長時間拘束:店舗や電話などで従業員を長時間拘束し続けること


❹ 身体的な攻撃:暴力行為や、身体に対する攻撃


❺ セクシュアルハラスメント:性的な言動や、性的な嫌がらせ

 

 

想定質問2:

それでは、現在、民間企業等で実施されているカスタマーハラスメント対策について教えてください。

 


回答2:

はい。専門家ではありませんが、30年以上の臨床経験と20年以上の産業医実務経験をもとに可能な範囲でお答えいたします。


カスタマーハラスメントは、企業の従業員に対する心理的および物理的な負担が大きく、労働環境の悪化や精神的ストレスの増加を引き起こす可能性があります。このため、企業はカスタマーハラスメントに対する対策を強化する動きが進んでいます。


カスタマーハラスメントに対する対策としては、以下のような取り組みが行われています。

 

社内教育:

従業員に対するカスタマーハラスメントの認識と対処法についての教育。
ガイドラインの策定:カスタマーハラスメントに対する企業の対応方針を明文化し、従業員に周知。


法的対応:

特に悪質なケースにおいては、法的手段を講じることもあります。
このような取り組みにより従業員が安心して働ける環境を整備することが求められます。

 

7月29日PDF