企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」⑰

 

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企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」


第16回:特論⑥視環境(その3)

 

情報機器作業による健康障害には、目の疲れ、腕や肩・頸部のこりや痛み、心理的な疲労などの自覚症状が先行します。この段階で適切に対処しておかないと、慢性的な局所疲労にもとづく眼精疲労、頚肩腕症候群などの疾患を引き起こしたり、全身的な慢性疲労をもたらしたりしてしまいかねません。

 

そのための予防対策として、以下は特に重要です。


・一連続作業時間は、60分以内とし、次の作業までに10~15分の作業休止時間を設けるようにします。かつ、「一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けるよう指導すること」とされています。


・ディスプレイ画面の上端の高さは、眼の高さと同じか、やや下になる高さが望ましいです。その際、画面までの視距離は、適切な視野範囲になるようにします。


・書類・キーボード面の照度は300ルクス以上とします。

 

○「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」の一部改正について(抜粋)

 

(令和3年12月1日)

(基発1201第7号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

改正のポイント:これまでVDT作業と表現されていた機器は、17年振りの「ガイドライン」改訂により、情報機器に変更されました。

 

 

照明及び採光


イ.室内は、できる限り明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。


ロ.ディスプレイを用いる場合の書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とし、作業しやすい照度とすること。
また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。


備考:従来の「ディスプレイ画面の照度500ルクス以下」は削除された。

 

ハ.ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。


ニ.間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。


ホ.その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。

 

 

 

ディスプレイ
(イ)おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。


(ロ)ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。


(ハ)ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視野範囲になるようにすること。


(ニ)ディスプレイは、作業者にとって好ましい位置、角度、明るさ等に調整すること。


(ホ)ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮し、文字高さがおおむね3mm以上とするのが望ましい。

 

 

 

<照明の種類と方法ならびにその効果>

 

照明の種類としては、全般照明と局部照明があります。


・全般照明とは、作業場全体を明るくするする照明です。
・局部照明とは、手もとなどの局所を特段に照らす照明です。


そして、全般照明と局部照明を併用する場合、
全般照明は局部照明の照度の10分の1以上にします。

 

照明の方法としては、直接照明と間接照明があります。


・直接照明とは、光源から直接照らす方法です。
この方法は強い影を作るため、目が疲れやすくなる(眼精疲労)欠点を伴います。
・間接照明とは、天井や壁に反射させた光を作業面に照らす方法です。

 

この方法は、影が出にくく、グレアの少ない照明になるという長所があります。
しかし、立体感を出す作業には不向きです。
つまり、影ができない照明がよいというわけではないことに注意する必要があります!

 

普通の作業では白色光を使用し、作業面や床面に強い影を作らないようにします。
一方、立体視を要する作業では、適度な影が必要です。

 

7月22日PDF