企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」⑬

 

 

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企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」

 

第12回:特論➁職業性疾病・労働災害としての腰痛(その2)

 

国には目的に応じての対策(国策)があります。

これは、一般的な指針という行政指導の形で提示されます。

 

これに対して、実際にこれを実践する主体は、あくまでも個々の企業や個人の対策に基づく実践に他なりません。

 

腰痛予防の管理法

1)健康診断

2)腰痛予防体操:ストレッチを中心とした腰痛予防体操の実施

3)注意事項:腰痛は再発する可能性が高いため、腰痛による休職者が職場に復帰する際には、産業医の意見を聴いて、必要な措置をとるべきです。

 

腰痛健康診断の健診項目

① 業務歴の調査

➁ 既往歴の調査:腰部に関する病歴およびその経過など

③ 自覚症状の有無の調査:腰痛、下肢痛、下肢筋力減退、知覚障害等

④ 脊椎の検査:姿勢異常、脊椎の変形等

⑤ 神経学的検査:神経伸展検査、深部腱反射等の検査

⑥ 脊柱機能検査:クラウス・ウェーバーテストまたはその変法(腹筋力、背筋力などの機能検査)

 

 

なかでも、とりわけ、病歴と自覚症状の確認が鍵になります。

ここで、典型的なよくある質問を紹介し、その質問に対して一般的な回答を試みます。

 

<質問>

職業性の腰痛が、下肢痛、下肢筋力減退、知覚障害などの諸症状を併発することがあるのはなぜですか?

 


<回答>

理由となる背景はいくつか考えられます。

 

1.神経根の圧迫: 腰椎の椎間板や椎間孔の狭窄、腰椎の変形などが原因で、神経根(脊髄から脊椎を出ている神経の一部)が圧迫されることがあります。この場合、圧迫された神経根が下肢に放射痛や知覚障害を引き起こし、また、神経支配する筋肉の力が低下することで下肢筋力減退も起こることがあります。


2.椎間板ヘルニア: 腰椎の椎間板が損傷し、内部のゲル状の物質が椎間板の外に突出することがあります。この状態を椎間板ヘルニアと呼びます。ヘルニアが神経根を圧迫することで、下肢に痛みや知覚障害を引き起こすことがあります。


3.筋肉の不均衡: 腰部の筋肉の不均衡や弱さが、腰部の安定性を損ない、腰椎やその周囲の構造に負担をかけることがあります。これにより、神経の圧迫や姿勢の変化が引き起こされ、下肢痛や筋力減退が生じることがあります。


4.姿勢の問題: 長時間同じ姿勢を続けたり、不適切な姿勢を取り続けたりすることが腰痛や下肢痛の原因になることがあります。例えば、前かがみの姿勢や偏った姿勢を取ることで、腰椎やその周囲の組織に負担がかかり、痛みやその他の症状が発生する可能性があります。

 

これらの要因は個々の症例によって異なりますが、多くの場合、複数の要因が組み合わさって腰痛やその他の症状が生じることがあります。

 

次回は、具体的な対策について考えていきたいと思います。

 

6月10日PDF