企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」⑫

 

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企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」

 

第11回:特論①職業性疾病・労働災害としての腰痛(その1)

 

職場での腰痛は、休業4日以上の職業性疾病のうち6割を占める労働災害となっています。


厚生労働省(旧労働省)は、古くから及び等による行政指導が進めていました。
そこで、まず、腰痛予防に関する厚生労働省(旧労働省)の行政指導の歴史の概略を振り返ってみましょう。

 

昭和45年7月10日付け「重量物取扱いにおける腰痛の予防について」(基発第503号)

 

昭和50年2月12日付け「重症心身障害児施設における腰痛の予防について」

 

さらに、その後は、高齢者介護などの社会福祉施設での腰痛発生件数が大幅に増加している状況が始まりました。

 

そのため、そのような背景のもとに、厚生労働省は平成6年の策定された「職場における腰痛予防対策指針」を19年ぶりに改定して、更なる腰痛予防対策の充実を図るとしました。

 

 

平成6年9月6日付け「職場における腰痛予防対策の推進について」(基発547号)

 

新しい指針の主な改定事項は次のとおりです。

 

1)介護作業の適用範囲・内容の充実

・「重症心身障害児施設等における介護作業」から
「福祉・医療等における介護・看護作業」全般に適用を拡大

 

・腰部に著しく負担がかかる移乗介助等では、リフト等の福祉機器の積極的使用を推奨

原則として人力による人の抱上げは行わせないことを記述

 

 

2)リスクアセスメント、労働安全衛生マネジメントシステムの手法を記述

 

・リスクアセスメントは、

 

❶ ひとつひとつの作業内容に応じて、

 

❷ 災害の発生(ここでは腰痛の発生)につながる要因を見つけ出し、

 

❸ 想定される傷病の重篤度(腰痛に関しては腰部への負荷の程度)、作業頻度などからその作業のリスクの大きさを評価し、

 

❹リスクの大きなものから対策を検討して実施する
といった手法(労働安全衛生法第28条の2)で実施する

 

・労働安全衛生マネジメントシステムは、
事業場がリスクアセスメントの取組を組織的・継続的に実施する仕組み
(労働安全衛生規則第24条の2)

 

・これらは、いずれも労働災害防止対策として取り組まれているものである。
しかし、腰痛予防対策においてもこれらの手法が効果的であることから改訂指針に明記

 

 

3)一部の作業について、職場で活用できる事例を掲載:

チェックリスト、作業標準の作成例、ストレッチング(体操)方法など
重量物取り扱い作業や介護作業など、腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、作業へ配置する前およびその後6カ月以内ごとに1回、健康診断を実施する必要があります。

 

次回は、職場で実施可能な腰痛予防の管理法について紹介します。

 

 

6月17日PDF