企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」③

 

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第2回:衛生講話年間計画(案)


一般的に「産業医による衛生講話」のテーマは、

 

A.関係法令分野

B.労働衛生分野および

C. 労働生理分野

の3分野から選ばれています。

 

これらは、「第2種衛生管理者試験」の出題範囲と完全に重なっています。なお、「第1種衛生管理者試験」の出題範囲は、これらの他にD.有害業務関係が加わるのみです。
 

それでは、全体を俯瞰して、イメージを把握しておくことにいたしましょう。

 

さっそく、オリエンテーションを始めます。

 

まずは、上記の3分野であるA、BおよびCの内容をご紹介いたします。

以下の具体的な内容は今後の総論および各論でレクチャーする予定です。

 

もっとも、産業医からの衛生講話とは、
産業医が、健康管理や衛生管理を目的に、社員に向けて実施する研修のことです。

 

これは、企業の希望に応じて行うもので、頻度・開催方法などが法に定められているものではありませんが、管理の行き届いた企業様においては、衛生講話が主(60分の衛生委員会の内の30~45分)となることもあります。

 

そして健康教育の一環として企業・組織の自発的な要望により開催されるものです。
ですから、本来であれば、産業医から自主的に提案するものではないのですが、衛生委員会の立ち上げからの支援が必要な企業、衛生委員会が完全に構築されていないまま継続中の企業、衛生委員会が十分に機能できていない企業等は決して少なくないため、産業医による積極的で系統的な「衛生講話」が有効に機能するケースも少なくないのが実際です。

 

以下は、カリキュラム一覧ですが、このリストの中から、毎回いくつかのテーマを企業の希望により選択していただき、産業医としては、工夫を凝らして、それらのテーマを組み立てて統合的で実践的なレクチャーになるように試みることにいたします。


なお、安全衛生委員会に参加する労働者側の委員の中の有志が、衛生管理者の資格取得を目指す際の有益なツールになるようなレクチャーに心掛けることによって、安全衛生委員会という会議体の質的向上が効果的に図れるものと考えております。


以下は、今後も活用できる目次(項目の体系的リスト)です。

 

・・・・・・・・・

 

A.関係法令分野
 

A-1:労働安全衛生法および関連法令
   

労働安全衛生法:職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律
  

1)報告義務:労働基準監督署への報告義務
  

2)安全衛生教育:雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育
  

3)労働安全衛生規則
    

① 気積・換気    

➁ 採光・照度    

③ 休養・清掃、食堂・炊事場
  

4)事務所衛生基準規則

① 事務室の空気環境の調整
➁ 事務室設備の定期的な点検
  

5)健康診断・面接指導
    

① 一般健康診断
➁ 健康診断実施後の措置
③ 面接指導

④ ストレスチェック

 

A-2:労働基準法:労働時間、賃金、休日などの労働条件について最低基準を定めた法律。
1)解雇の規制
2)労働時間および休憩、休日・休暇
  ① 法定労働時間・時間外労働
  ➁ 休憩・休日
  ③ 割増賃金
  ④ 変形労働時間制・みなし労働時間制
  ⑤ 年次有給休暇

3)妊産婦や年少者に対する特別な保護規定

4)就業規則

 

B.労働衛生分野
作業環境要素、職業性疾病(職業病)
労働者の生命を衛るための基本:3管理

 

① 作業環境管理、➁ 作業管理、③ 健康管理

労働衛生管理統計
救急処置
<労働衛生管理>
<労働衛生管理統計>
<健康の保持増進対策>

 

1)健康保持増進計画・健康測定

 

2)受動喫煙防止対策

 

3)メンタルヘルスケア:
  労働者の心の健康の保持増進のための指針

 

<作業環境要素と管理>

1)温熱環境(温熱条件)

2)視環境(採光・照度)

3)必要換気量

4)事務室等の作業環境改善

 

<作業管理>

1)情報機器作業時の労働衛生管理:
  情報機器作業における労働安全衛生管理のためのガイドライン

2)腰痛予防対策
<救急処置>

1)救急:一次救命処置

2)脳血管障害

3)虚血性心疾患

4)食中毒

5)骨折・脱臼

6)熱傷(火傷)・凍傷

15)出血および止血法

 

 

C.労働生理分野

人体の構造や機能について

1)循環器系(心臓の働き)

2)血液系(血液の組織と機能)

3)呼吸器系(肺・気管支・鼻腔など)

4)消化管系(胃・小腸・大腸)

5)消化器系(特に肝臓・膵臓)

6)腎・泌尿器(腎臓)

7)神経系

8)感覚器系(特に視覚)

9)運動器系(筋肉・骨・エネルギー)

10)内分泌・代謝系

11)免疫系

12)生体恒常性(ホメオスターシス)

13)疲労生理学(分類・回復と予防)

14)睡眠

 

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