わが国医学界・医療界の忌々しき課題<特論3: 我が国の医学と医療の現状> 

 

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わが国医学界・医療界の忌々しき課題


特論3<我が国の医学と医療の現状> 

 

 

勇気ある学会発表、新型コロナワクチン副反応例3発表!

 

(第32回日本リウマチ学会関東支部学術集会抄録集から)

 

今週末の10日(土)・11日(日)に、六本木にて上記学会が予定されています。

 

ちょうど同じ期日に秋葉原にて日本アレルギー学会関東支部の学会も重なるため、私は<はしご>をすることになります。
 

とりわけ、10日(土)8:10からの一般演題2(RA・ワクチン)のセッション(座長:東京大学大学院医学系研究科整形外科、田中栄先生)の6演題のうちの3演題は新型コロナワクチンの副反応に関する発表です。
 

残念ながら、この時間帯は複数の診療予約を受け付けてしまっているため出席が叶いません。そこで、抄録の概要のみの検討を試みることにしました。

 

 

O2-3:SARS-CoV2ワクチン(ⅿRNA1273)接種を契機に発症したTAFRO症候群の一例

 

<上都賀総合病院リウマチ膠原病内科、相澤真希;獨協医科大学リウマチ・膠原病内科、坂上友亮ら>
 
 

 

O2-4:新型コロナワクチン接種後に発症したIgG4関連疾患の1例

 

<東京大学医科学研究所付属病院アレルギー免疫科、青地翠己ら>

 

 

O2-5:SARS-CoV-2ワクチン初回接種後に発症した難治性成人発症Still病(AOSD)の一例

 

<自治医科大学附属埼玉医療センターリウマチ膠原病科、矢部寛樹ら>

 

 

O2-3:SARS-CoV2ワクチン(ⅿRNA1273)接種を契機に発症したTAFRO症候群の一例


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本日は、上記のうち、最初の症例報告について考えてみたいと思います。

 

O2-3:SARS-CoV2ワクチン(ⅿRNA1273)接種を契機に発症したTAFRO症候群の一例

 

<上都賀総合病院リウマチ膠原病内科、相澤真希;獨協医科大学リウマチ・膠原病内科、坂上友亮ら>

2-3SARS-CoV2ワクチン

 

この症例発表者に敬意を表したいのは、まず、接種したワクチンを明確に特定して記載していることです。

 

これがモデルナ製でなく、ファイザー製であった場合にも積極的に記載したかどうかは、現時点で私には不明です。

 

抄録には【利益相反の有無:無】とあります。

 

 

TAFRO症候群は、

1)明らかな原因なしに、

2)急性あるいは亜急性に、

3)発熱、全身性浮腫(胸水・腹水貯留)、血小板減少を来し、

4)腎障害、貧血、臓器腫大(肝脾腫、リンパ節腫大)などを伴う、

5)全身炎症性疾患、とされます。(この症例報告の抄録に記載のある症状・所見に下線を施しました)

 

上記のうち、「1)明らかな原因なしに」、という条件については、発症5日前に接種したモデルナ製の新型コロナワクチン接種が明かな原因といえるかどうかですが、原因としての可能性があっても、現段階では「明らかな」とまでは断定できないため、この条件も満足することになります。

 

ワクチン接種副反応の件で、たびたび問題になるのは、まさに「明らかな原因」となっていることを証明できるか?ということです。


その場合、アナフィラキシーショックのように1)接種直後、2)急激で他覚的にも明確な症状、3)一般医にも周知されている疾患の典型的な症状パタン、などの条件が揃えば、副反応であることを否定することは難しくなります。

 

しかし、逆にいえば、ほとんどの副反応は、上記のすべてを同時に満たすものは少ないため、ほとんどのケースにおいて「明確な因果関係は認められない」と判断され、被害者の救済が見送られることになってしまいがちです。

 

この症例では1)接種直後でなく5日目の発症、2)他覚的にも明確な症状ではあるが、症状出現は、段階的、3)一般医には周知されてなく、限られた数の専門医にとっても診断に日数を要する、典型的な症状パタンや検査所見を得るために複雑な手続きを要する、といったタイプでした。

 

そもそもこの疾患の名称の5つのアルファベットは症状の頭文字からとられています。2010年に高井らにより血小板減少(Thrombocytopenia)、全身性浮腫/胸水/腹水(Anasarca)、発熱(Fever)、骨髄細網線維化(Reticulin fibrosis)、臓器腫大/肝腫大/脾腫/リンパ節腫大(Organomegaly)を呈した3症例の報告が最初で、各頭文字を取ってTAFRO症候群として報告されました。

 

(この症例報告の抄録に記載のある症状・所見に下線を施しました)

 

抄録には、骨髄生検実施の記載がなく、骨髄細網線維化(Reticulin fibrosis)の有無については不明です。学会当日の口頭で説明されるものと推定されます。

 

治療法として、ステロイド(パルス療法)や免疫抑制剤、生物学的製剤(トシリズマブ、リツキシマブ)などの有効例が報告されてはいますが、様々な治療に抵抗性の症例も存在します。

 

この疾患の取り扱いが慎重を要する状況は、抄録でも示されています。

 

「入院後血小板数は急激に減少、腎障害が出現。TAFRO症候群と診断し、ステロイドパルス療法とトシリズマブを開始したが無尿となり人工透析開始。血漿交換療法とリツキシマブを追加し改善。」との記載がありますが、この患者さんは、極めて恵まれた条件下にあって、適切な対応をうけることができた例外的ケースであるといえるのではないかと思います。

 

この疾患は、全身症状の悪化が急速なため、迅速かつ的確な診断と治療が必要な疾患なのですが、最初期の段階で適切かつ的確な診断が可能な専門医の管理下に置かれる可能性はとても低いのではないかと考えます。残念ながら、日本国民のほとんどの方は、このような恩恵に預かることは期待できないと思います。

 

新型コロナワクチンが引き金になって発症したことが疑われる病態の多くは、厳密な診断を下すことが容易ではないような疾患です。

 

診断がついたとしても「稀な疾患」とされがちです。しかし、よく考えていただきたいのは、人は一人一人別の遺伝子情報をもっているということです。

 

ですから、副反応の出現も多種多様になり得るということです。そして、個々に生じる疾患が「稀な疾患」であっても、「稀な疾患」が多数報告されている以上、決して「稀なできごと」ではないのではないか、ということです。

 

 

「稀な疾患」は、往々にして、非特異的症状として片付けられてしまいます。ですから、「因果関係は不明」という結論になってしまいます。

 

以上のような現実から、新型コロナワクチンの副反応は、過小評価されている可能性が少なくないのではないか、と考えます。