認定内科医、認定痛風医
アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医
飯嶋正広
肝疾患の治療薬について(No5)
<肝硬変と肝癌>
肝硬変
肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいいます。
慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができていきます。
肝細胞は壁のなかで再生して増えるため、最終的に壁に囲まれた結節を作ります。肝臓がこのようなたくさんの結節の集まりに変化したものが肝硬変です。
肝硬変では、血液が十分に肝臓に流れ込まなくなったり、全体の肝細胞機能が低下したりするために、腹水、肝性脳症、黄疸、出血傾向など、さまざまな症状が現れてきます。
このうち黄疸、腹水、肝性脳症が認められる肝硬変を「非代償性肝硬変」と呼び、症状のないものを「代償性肝硬変」と呼びます。
肝硬変の進展を抑制し、合併症として出現する腹水、食道静脈瘤、肝性脳症、肝癌などに対処する複合的な治療が行われます。
C型の肝硬変では、経口抗ウイルス薬がHCVの駆除及び減少により、肝予備能の改善や発癌抑制効果などで予後を改善します。
代償性肝硬変では、競技や激しい運動でなければ歩行や有酸素運動は問題なく、むしろ推奨されます。インターフェロン(IFN)も適応となりますが、非代償性肝硬変では禁忌です。
B型の肝硬変では、インターフェロン(IFN)は適応にならず、核酸アナログを使用します。
ただし、核酸アナログ製剤による乳酸アシドーシスの発生に注意する必要があります。
・肥満:肝硬変進展の危険因子であるため、注意深く減量をはかります。
・低アルブミン血症(血清アルブミン≦3.5g/dL)を伴う症例や肝癌の発生を抑制する目的で分岐鎖アミノ酸(BACC)の経口顆粒製剤(リーバクト®)が使用されています。
肝硬変では肝臓でのグリコーゲンの貯蔵能が減少するため、代償的に、空腹時(特に夜間)に筋肉の蛋白質が分解され、アミノ酸からの糖新生が亢進します。
そこで、蛋白代謝改善のために、糖質を補う目的で就寝前に軽食(LES:Late Evening Snack)をとり、食事のとれている外来患者に対しては経口のBCAA製剤の服用が勧められます。
・下腿の腓腹筋の痙攣(こむら返り):亜鉛製剤、タウリン、BCAA製剤、カルニチン製剤(エルカルニチンFF®)、芍薬甘草湯などが有効です。
・浮腫・腹水:減塩食(塩分5~6g/日)、利尿薬(アルダクトンA®やラシックス®もしくはルプラック®を組み合わせる)。また、水利尿薬(V₂受容体拮抗薬)トルバプタン(サムスカ®)は、低ナトリウム血症を伴う肝性浮腫に有効です。
・肝性脳症/肝性昏睡:アミノ酸代謝の是正を目標とします。特殊アミノ酸輸液製剤(アミノレバン®など)を点滴します。また、アンモニアの吸収を抑制する目的で、合成二糖類(ラクツロースまたはラクチトール)を投与します。合成二糖類は緩下作用の他に、腸内を酸性化することによってアンモニアの吸収を抑制します。
肝癌
この分野では、進行肝癌への薬物療法の選択肢が目覚ましく拡大しています。
肝癌治療の基本は局所治療(ラジオ波焼灼、切除、肝動脈化学塞栓療法など)です。
進行癌に対しては、たとえば遠隔転移を伴う高度進行肝癌例では、まず、分子標的治療薬の近年の発展が目覚ましいです。
まずソラフェニブが適応となります。
ただし、皮膚症状などの副作用も多く、また、この薬剤が効かない不応症例や使用できない不耐症例もありため肝臓専門医の下での治療が望まれます。
しかし、近年、進行肝癌への薬物療法の選択肢が増え、以下のように、着実に進歩しています。
・2018年:レンバチニブ
レゴラフェニブ(ソラフェニブ不応・不耐症例に対する二次治療用)
・2019年:ラムシルマブ(サイラムザ®)
・2020年9月:抗PD-L1抗体(アテゾリブマブ)
抗VGEF抗体(べバシズマブ)併用療法が、
切除不能な肝細胞癌に対して保険適応に
・2020年11月:マルチキナーゼ阻害薬(カボサンチニブ)が、
癌化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に保険適応に
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