認定内科医、認定痛風医
アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医
飯嶋正広
腎疾患の治療について(No4)
腎臓病の専門的治療薬
第119回日本内科学会講演会(2022年)の教育講演5.慢性腎臓病治療の新たな展開(菅野義彦:東京医大)によれば、「従来の腎機能保護の中心は血圧と血糖値の管理であり、これはRAA(renin-angiotensin-aldosterone)系抑制薬等多くの薬物によりエビデンスが示されてきた。病態としては糸球体過剰濾過からの解放である・・・」と述べています。
また同氏は「近年は腎機能低下に関する他の機序についての介入が可能になりつつあるが、患者の高齢化に伴い治療における様々な注意点も生じている。」との問題提起をしている。
その一つは、おそらくポリファーマシーであると思います。これは、多剤併用のことで、多種類の医薬品が処方されていることです。俗に「薬漬けともいわれますが、専門分化し過ぎた現代医療において、医師の好むと好まざるとを問わず、特に高齢者の医療で発生しがちな問題です。腎疾患治療用の主な薬剤としては、大まかに言って以下の種類があります。」
私のクリニックで使用している薬剤は、安全性の高い、限られた薬剤のみを使用しています。これらの薬剤の多くは、腎不全が進行してから使用することになるなるため、腎不全が進行しないように早期に対応することが望ましいことは言うまでもありません。そういう意味においても、腎臓病には特効薬はないのです。
しかし、朗報としては、近年有力な糖尿病治療薬として注目されているSGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(フォシーガ®)が、慢性心不全(慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)に加えて新規に、慢性腎臓病(末期腎不全、透析施行中の患者を除く)にも適応拡大が承認されたことを挙げることができます。
この薬剤は、当クリニックでは糖尿病の方のために処方して良好な成績を得ているのですが、糖尿病患者の3大合併症である糖尿病腎症の進展防止に期待できるばかりでなく、高血圧・心不全の治療にも役立つことが期待されます。
1) 高カリウム血症治療薬:
この薬剤中には陽イオンが含まれていて、腸内のカリウムイオンと好感させることによって、カリウムを体外に排出させることで、血中で高値となったカリウム濃度を低下させます。
この薬剤を使用する前にカリウム接種制限が行われます。
急性及び慢性腎不全に伴い高カリウム血症を来した場合は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®)などのほか、2020年3月に新規の高カリウム血症改善薬として、非ポリマー無機陽イオン交換化合物のジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(ロケルマ®)が登場しました。しかし、私のクリニックでは、これまでのところ、これらの薬剤を使用せずに対応できています。
高カリウム血症治療薬に関する情報そのものよりも大切なのは、高カリウム血症の原因や悪化因子となる薬剤です。
降圧薬として頻用されているACE阻害薬、ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、ベータ遮断薬は、いずれも高カリウム血症の原因となるため注意が必要です。また、消炎鎮痛剤(NSAIDs)も高カリウム血症の原因となり得ます。
2) 高リン血症治療薬:
この薬剤はリン吸着薬である陽イオンであり、消化管内で陰イオンであるリンと結合して、その吸収を妨げます。
この薬剤を使用する前にリン接種制限が行われます。
透析中の慢性腎不全患者の高リン血症の治療薬として、セべラーマ塩酸塩(レナジェル®、フォスブロック®)が使われますが、私のクリニックでは、現在、透析中の方は通院されていないため使用していません。むしろ、透析に至らないための対策に力を注いでいます。
3) 代謝性アシドーシス治療薬:
この薬剤はアルカリ性物質である重曹(NAHCO₃)であり、経口内服すると胃酸と反応して分解され、その結果、膵液の重曹の消化吸収を促進することによって、血中のアルカリ予備を増やして代謝性アシドーシスを改善します。
炭酸水素ナトリウムは、制酸剤として、あるいはアシドーシスの他、尿酸排泄促進と痛風発作の予防が適応になります。私のクリニックでは、高尿酸血症や痛風の専門診療を行っているため、酸性尿改善薬としてクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤(ウラリット®等)を用いています。尿路結石の再発を抑制することができ、尿酸排泄促進と痛風発作の予防が主目的ですが、同時に腎機能の保護を図っています。
4)尿毒症治療薬:
腸管内で尿毒素物質あるいはその前駆体を吸着し糞便中への排泄を促進します。この薬は進行性慢性腎不全における尿毒症症状の改善や透析導入を遅延(時間稼ぎ)のために使用される炭素微粒体です。私のクリニックでは使用経験はありません。
5)カルシウム受容体作動薬:
副甲状腺のカルシウム感知受容体に直接作用し、過剰な副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制します。
腎透析を受けている腎不全の合併症である二次性副甲状腺機能亢進症に対してシナカルセト塩酸塩(レグパラ®)が使用されることがあります。私のクリニックでは、いまだ需要がないため使用経験はありません。
6)腎性貧血治療薬:
赤血球産生を刺激する薬剤です。HIF-PH阻害薬という新しい薬剤であり、ロキサデュスタット(エベレンゾ®)などが使われています。日本腎臓学会は2020年にこの薬剤の適正使用法についての推奨を発表していていますが、私のクリニックでは処方していません。しかし、当方が紹介した連携医療機関の血液科から処方されている方はいらっしゃいます。
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