『水氣道』週報

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.3


横隔膜と大腰筋の繋がりと、仙骨運動との関連性について

 

大腰筋は上部腰椎の側面から横隔膜の後を通って、腸骨筋とともに大腿骨の小転子につながっています。股関節を伸ばすと、大腿骨は大腰筋を介して上部腰椎を前に引っ張り、脊柱の動きを制限します。また、上部腰椎と第12肋骨は弓状靭帯でつながり、その弓状靭帯に横隔膜がつながっています。

 

大腰筋は、平地の歩行ではあまり鍛えられません。階段を上ったり、ハイキング登山を楽しむなどして適切に鍛えることができます。しかし、平坦であっても水中歩行であれば、大腰筋は大いに鍛えられます。

 

水氣道の基本航法の中でも第三航法(前蹴り歩き航法)などで、仙骨のうなずき運動が生じると第5腰椎が伸展します。腰椎が伸展運動を起こすと横隔膜の腰椎部である右脚と左脚が下方へ伸張され,横隔膜全体は下方へ牽引されます。それによって,横隔膜が下降し、横隔膜ドームの平坦化によって,胸郭の垂直径が増えます。また,横隔膜の下降によって,腹腔内容の圧縮,腹横筋のような伸張された腹筋群の他動的張力による腹腔内圧の上昇による抵抗を受けます。

 

腹腔内圧の上昇は,下部肋骨を側方へ拡大させます。腹腔内圧の上昇によって一旦固定されると引き続いて生じる横隔膜の肋骨線維の収縮により下位と中位の肋骨が挙上されます。また,仙骨の起き上がり運動により寛骨は外旋‐内転します。それに伴って,大腰筋は緩んだ状態となり,大腰筋と筋連結をもっている横隔膜も弛緩します。

 

これによって,仙骨のうなずき運動により横隔膜全体は下方へ牽引され,仙骨の起き上がり運動により弛緩が促されることになります。

 

水氣道の航法に組み込まれている、このような仙骨のうなずき‐起き上がり運動の反復訓練によって横隔膜の収縮‐弛緩がスムーズに行われるようになります。

 

その結果、呼吸機能が向上し、心肺機能ならびに全身の筋肉活動を高めることに繋がって行くことが期待できます。
呼吸効率の改善と有酸素運動能力の向上は脳の諸機能を活性化し、気分を安定化させ、認知能力を高めるのに役立ちます。
このようにして、水氣道は心身の両面に及ぶ全人的な鍛錬法として発展を続けています。