水氣道実践の五原理・・・集団性の原理(結論)その5
(教学不岐・環境創造の原則)
水氣道の機能的集団編成法
水氣道の集団性の原理について説明するにあたって、そもそも集団性ないしは「集団」とは何かということに立ち戻って考えてみたいと思います。
広辞苑によると、集団とは以下のように説明され提案す。
① 多くの人や物のあつまり。
②(group)規則的・持続的な相互関係をもつ個体の集合。団体。
③〔生〕(population)有性繁殖の可能性を通して結ばれた生物の同種個体の集まりをいう。生態学でいう個体群に同じ。メンデル集団。
水氣道の集団の構成員は2名以上です。少なくとも単独ではないというだけのことです。
ですから、水氣道でいう「集団」とは、上記の中では①ではなく、②にもっとも近いといえます。ものであると理解していただければけっこうです。
しかも、規則的・持続的な相互関係をもつ、という機能の存在が大切になります。
水氣道の理念は<融通無碍(ゆうずうむげ)の人類愛>にありますが、そこから、以下の3つの徳性が導かれてきます。
分析と企画(特異性の原理)
進歩と調和(過負荷・集団性の原理)
自己超越と自然回帰(統合性・可逆性の原理)
水氣道の集団性の原理がしっかりと機能しなければ、稽古を通して進歩や
調和という徳性を磨くことはできません。
それでは、実際の水氣道の稽古において、単独稽古が存在しないのかという疑問が生じるかもしれません。たとえば、稽古の最初に心身をゆっくり水環境になじませる目的の航法である「親水航法」はいかがでしょうか?
「親水航法」は、基本的にはそれぞれの参加者が各人のペースで実施してよい航法です。しかし、こうした稽古であっても「集団性の原理」から掛け離れた稽古ではないのです。
それは、同一の時間を同一の場所を共有しての稽古だからです。
稽古の場は、実際には、室内の温水プールが主になっていますが、いわゆる水泳施設全体の環境にはじまり、水槽全体、レーンによる区分けがあります。
そして、人数制限のある会場の場合は、特定の1レーンという場を共有しています。
つまり、主体的な独立運動であっても、区画された場において規則的・持続的な相互関係を維持しつつ参加していることから集団性を認めることができます。
実際に、水氣道の稽古をしているレーンの外から、あるいはプールサイドから稽古中のレーンを俯瞰してみるならば、水氣道のレーンは明らかに水氣道の団体として認識されるのではないでしょうか。
水氣道の団体構成の最小単位は、2名です。この最小単位を水氣道では対番(たいばん)と呼び習わしています。
基本的には、階級の異なる二人組で構成されますが、稽古中に水氣道の技法修得をはかるうえでもっとも基本になる稽古形態です。この場合、下級者が教えを受け、上級者が教えを授けることになりますが、水氣道においては、このような場合において上級者も、教え方を稽古する機会であるという基本的な認識で臨んでいただいております。
この対番において、下級者がもう一人加われば、上級者は二人の下級者を指揮する必要が生じ、そのためのさらに高度なスキルが必要とされます。
しかし、そのためには予めの準備段階が必要になります。それは、対番の上級者の更なる上級者が加わる稽古です。その目的は、対番の上級者の指導法をサポートして、技法伝授法のスキルアップをはかることにあります。
このような稽古形態を実践することによって、対番の下級者の理解も深まり、自らが進級した後で、どのような道筋になるのかを自然な形で予習することにもなります。
それから、水氣道の稽古の様式は、3カ月の周期によって、螺旋的発展を目指しています。3カ月の1カ月目、2カ月目および3カ月目をそれぞれ甲の月、乙の月および丙の月と命名しています。
最初の甲の月では、白色帽子組(体験生・訓練生連合)と有色帽子組(修錬生以上の連合)が稽古プログラム全体を通して一体訓練を実施します。
次の乙の月では、準備体操(イキイキ体操)までを全体で行い、五航法以降は白色帽子組と有色帽子組がそれぞれ独自の団体となり、それぞれの技能に応じた訓練を行います。また、その際も必要に応じて、有色帽子組から白色帽子組へ指導者を派遣することも行われます。
最後の丙の月は、概ねすべてのプログラムを対番単位で行います。それによって、個々の参加者の習得度を評価し易くなり、ふだんより具体的で個別的な指導が可能となります。また、この月は、昇級審査が行われる月に重なりますが、個々の参加者について広範な視点から評価し、支援することが可能となる方法であることがご理解いただけるのではないでしょうか。
以上のような3カ月周期の稽古プログラムは、水氣道の可逆性の原理(周期性の原則)にも関連する内容です。甲⇒乙⇒丙のあとの新たな甲の月の稽古内容は、3カ月前の甲の月の稽古より充実したものになることは、すでに実証済みです。
次回は、4月6日です。新年度の最初は、令和4年度最初の技法検定合格者発表を行います。
4月13日以降はシンプルなエクササイズである「懸垂」についての記事(ニューヨークタイムズ国際版3月25日)を用いて、水氣道の理解を深めるシリーズを数回にわたって、平易な日本語に翻訳し、必要なコメントを添え、興味深く解説を加えていく予定です。
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