<はじめに>

 

前回は「耳鳴」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「少衝」は手の小指の爪の生え際で薬指側にあり、

 

 

「足の竅陰」は足の薬指の爪の生え際で小指側にあり、

 

 

「完骨」は耳の後ろにある出っ張った骨の先端を指でたどってその後ろにあるくぼみの中にあるというお話でした。

 

 

今回は「ドライマウス」に効果のある「少商(しょうしょう)」「大敦(だいとん)」「頬車(きょうしゃ)」のツボを紹介しましょう。

 

 

 

<少商>

Pasted Graphic

 

手の親指の爪の生え際の外側にあります。

 

 

 

<大敦>

Pasted Graphic 1

 

足の親指の爪の生え際で人差し指側にあります。

 

 

 

<頬車>

Pasted Graphic 2

 

下顎のエラから1cm程上のくぼんだところにあります。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

前回はこちら

 

Rentré chez lui, Rieux téléphonait à son confrère Richard, un des médecins les plus importants de la ville.
・・・Non, disait Richard, je n’ai rien vu d’extraordinaire.
・・・Pas de fièvre avec inflammations locales?
・・・Ah!si, pourtant, deux cas avec des ganglions très enflammés.
・・・Anormalement?
・・・Heu, dit Richard, le normal, vous savez…

Le soir, dans tous les cas, le concierge délirait et, à quarante degrés, se plaignait des rats. Rieux tenta un abcès de fixation. Sous la brûlure de la térébenthine, le concierge hurla: « Ah! Les cochons!»

Les ganglion avaient encore grossi, durs et ligneux au toucher. La femme du concierge s’affolait:

・・・Veillez, lui dit le docteur, et appelez-moi s’il y a lieu.

帰宅したリウは、同業のリシャールに電話をかけた。リシャールは、この街で最も有力な医師の一人である。

「いや、これといって特別異常なことは見ていないのですが」とリシャールが言った。
「局所の炎症を伴った熱病とかはなかったですか

「ああ、そう言えば、ひどいリンパ節炎を患っていた症例が2例ありましたかな」

「異様なものだったのでは?」

「まあ、通常のもの、と言って良いかはねえ」

とリシャールは言うのであった。

その夕方、管理人は、とにかく四十度の熱にうなされ(註1)ながら、ねずみの件を訴えていた。リウは膿瘍の固定(註2)を試みた。テレビン油(註3)による焼けつくような痛みで、管理人は「ああ!こん畜生!

と、わめき声をあげた。リンパ節はいっそう大きくなっていて、触れてみると材木のように硬くなっていた。
 

管理人の女房は取り乱していた。

医師は「目を離さずにいてください。何かあったら呼んでください。
と言った。

 

註1:せん妄:本文中では動詞délirerの半過去形déliraitであらわれますが、名詞形はdélireで、これは医学用語の譫妄(せんもう)に相当します。

délirer= avoir le délireで、錯乱状態に陥る;うわごとを言う、と訳されます。
発熱を伴う場合は、「熱でうなされる」と訳せばわかりやすいかもしれません。

 

註2:膿瘍の固定(膿瘍固定療法):セーゲン医学辞典によると、「膿瘍を人工的に作り、細菌を一箇所(治療可能な箇所)に引き寄せることを意図した、時代遅れの治療方法」とあり、現代西洋医学では治療法としては、ほとんど用いられていません。

 

註3:テレビン油:テレピン油/テルペン/松精油とも。東洋医学系のアロマテラピー用生薬のエッセンシャルオイル(精油)、その香りには自律神経を落ち着かせる精神安定効果があるといいます。さらに、血圧を下げる働きや、ガン予防(ガン細胞増殖抑制)にも効果を発揮するとされています。また、実験医学的には、動物の皮膚に塗布して実験的な炎症モデルを作成するのに用いられることもあるようです。

 

 

 

Le lendemain, 30 avril, une brise déjà tiède soufflait dans un ciel bleu et humide.

Elle apportait une odeur de fleurs qui venait des banlieues les plus lointaines. Les bruits du matin dans les rues semblaient plus vifs, plus Joyeux qu’à l’ordinaire. Dans toute notre petite ville, débarrassée de la sourd appréhension où elle avait vécu pendant la semaine, ce jour-là était celui du renouveau. Rieux lui-même, rassuré par une letter de sa femme, descendit chez le concierge avec légèreté. Et en effet, au matin, la fièvre était tombée à trente-huit degrés. Affaibli, le malade souriait dans son lit.
・・・Cela va mieux, n’est-ce pas, docteur? Dit sa femme.
・・・Attendons encore.

翌日の4月30日(註3)は、すでに生暖くなったそよ風が蒸し暑い青空に吹いていた。

そよ風は、それよりなお遠方の郊外から花の香りを運んできてくれた。巷での朝の音は、いつもより賑やかで楽しげに聞こえた。その日、私たちの小都市は、一週間の退屈で不安な暮らしから解放され、すべてが新しく生まれ変わったのであった。リウ自身は、妻から手紙が届いて安心し、足取りも軽やかに管理人の家に下りて行った。そして、実際、その日の朝には三十八度まで熱が下がっていた。衰弱していたベッドの患者には微笑が浮かんでいた・・・

「良くなってますよね、先生。」
と女房は言った。
「まだ様子を見ていきましょう。」

 

 

 

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聖楽院主宰 テノール 飯嶋正広

御報告<武蔵野音楽大学別科声楽コース>合格とその後の診療体制

 

今月の11日(金・祝)に実技試験、翌12日(土)に面接試験を受験しました。そして、試験結果は16日(水)午後4時に音大のオフィシャル・サイトで受験番号を確認することができました。

 

つきましては、本年4月から1年間、毎週火曜日の午後と土曜日の午前に、音大の学生として通学することになりました。
 

・火曜日の授業科目は声楽個人レッスンで、時間帯は午後12:40~13:40を予定しています。毎回、岸本力先生の指導を受けます。
 

武蔵野音楽大学のキャンパスは、杉並国際クリニックからのアクセスが極めて良好です。なにしろ<バス停>高円寺駅北口―<バス停>羽沢:所要時間約10分、<バス停>羽沢―音大キャンパス:徒歩約4分、およそ15分間隔でバスが運行しているため、レッスンを終えてクリニックに戻れるのが14:15頃です。つまり、診療時間への影響は最小限度で済むということになります。

 

・土曜日の授業科目は学科(選択科目)2科目以上で午前中とのことですが、詳細のスケジュールはまだ明らかになっていません。
  

4つの選択科目があります。
  

西洋音楽史Ⅰ:バロックから古典派までの音楽の流れ
  

西洋音楽史Ⅱ:ロマン派から近現代までの音楽の流れ
  

音楽理論Ⅰ:楽典および和声(三和音まで)、作品の要素と様式
  

音楽理論Ⅱ:和声(属七の和音から近親転調まで)、曲の仕組み

 

課程修了の条件は、1年間で実技科目1科目および学科目を2科目以上履修し、それぞれ2/3以上を出席した上で、<実技科目の終了審査>に合格した者に修了証書が授与される、とのことです。
  

 

以上が、現時点でのご報告ですが、土曜日に関しては判明次第ご報告させていただく予定です。

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

 

飯嶋正広

 

賢い選択?<赤旗サイン>(続)

 

2011年、米国内科専門医機構財団(ABIM)は、「賢明な選択:持続可能なシステムを構築するための医師、患者、医療界の責務」をテーマとしたフォーラムを開催しました。

これを発端に、エビデンスに基づいた適切な医療資源の活用を目指した“Choosing Wisely(賢く選択すること)キャンペーン”が世界的に広がり今日に至っています。

 

それでは、世界の主要先進国、OECD、コクラン共同計画などの参加を通じて議論された賢明な選択インターナショナル(Choosing Wisely International)の推奨事項について、前回列挙しましたが、今回は、続編として、全10項目の推奨事項うち、特に高齢者医療にかかわりが深い3項目を抽出して、私見を述べさせていただくことにしました。

 

 


3. 高齢者の不眠、興奮、せん妄の第一選択薬としてベンゾジアゼピン    
もしくは他の鎮静・睡眠薬を使用しないこと

 

 

6. 認知症の精神・行動症状の治療の第一選択として抗精神病薬を      
使用しないこと

 

 

7. 重症ではない患者のモニタリング、利便性、失禁管理を目的に      
尿道カテーテルを挿入、留置をしないこと

 

⇒ 現実の医療の現場:

これらは、いずれも患者本人のみならず家族や介護者・看護人等から強い要望を受けることで遵守できないことがあります。
   

これは、精力的に在宅医療を実践している医療機関の多忙な医師にとっては避けることのできない社会問題です。

 

Choosing Wisely(賢く選択すること)キャンペーンを趣旨に則って展開していくためには、患者や家族を含め社会全体に対して効果的に啓発していくことが大前提であり、すでに認識している担当医にほとんどの責任を負わせることは不適切であると考えます。

 

患者や、その家族の要望が、いかに不合理であっても、その潜在的なニーズに合わせない限り、開業医の生命は今後も脅かされ続ける(大阪曽根崎の心療内科クリニック放火事件、埼玉ふじみ野市在宅医療医銃殺事件など)ことになるでしょう。

 

残念ながら、これらの事件の背景にある医療社会制度や国民の医療観についての丁寧な分析を踏まえた抜本的な対策を講じない限り、今後も犠牲者は増えていくのではないかと危惧しています。

 

 

 

7. 重症ではない患者のモニタリング、利便性、失禁管理を目的に      
尿道カテーテルを挿入、留置をしないこと(再掲)?

 

 

8. 特有の尿路症状がない限り、高齢者の細菌尿に抗菌薬を        
使用しないこと?

 

高齢者では無症候性細菌尿の割合(女性:20%、男性:6%)が健康成人より高いというデータがあります。

これらの割合は、日常の活動性(ADL)の低下に伴って増加することも指摘されています。

しかし、これらが原因となり症候性の尿路感染症を発生する割合は決して高くはないようです。とくに尿路のカテーテル操作などがなければ臨床的に問題となることは少ないとされます。

 

こうした情報を前提にすれば、上記の推奨事項7および8は、妥当な指針であるのではないかとする方向へ向かいます。

 

ところで、高齢者の尿路感染症で分離される細菌分布は成人の場合と差がなく、また高齢者の尿路感染症は基本的には成人の場合と同じです。

そうした意味においては、高齢者か非高齢成人かのみによって抗菌薬の投与基準を明確に区別する根拠は乏しいと言えます。

しかも、高齢者では尿路感染症の発生頻度は高いなかにあって、その内訳としての単純性尿路感染症の相対的な割合は低下します。このことは、高齢者では、ただでさえ細菌尿の頻度が高いうえに、尿路に何らかの基礎疾患がある複雑性尿路感染症の割合は高くなることが示唆されます。

 

これはしっかり検討すべき臨床的な問題点です。積極的な治療を要する複雑性尿路感染症が増加する背景としては、糖尿病、脳血管障害などによる膀胱機能障害、男性における下部尿路通過障害(前立腺肥大症など)あるいは女性における閉経後の膣細菌叢の変化、一般的な免疫能の低下、尿路操作を受ける機会の増加、などの医学的な要因の他に、病院への通院・入院など細菌感染の機会が増加する、などの要因も関係しているようです。

 

しかも、抗菌薬の投与を必要とする複雑性尿路感染症であっても、必ずしも特有の尿路症状が見られるとは限らず、高齢者の慢性疾患全般にいえることですが、むしろ、症状は目立たなくなり、気づかれにくくなる傾向があります。

 

そのため、このような場合には抗菌薬による治療と基礎疾患の治療(カテーテルの抜去、尿路の機能的あるいは器質的異常に対する治療)を同時に行わなければならないことも少なくありません。

 

この種の代表的な疾患は残尿のある前立腺肥大症で、尿路感染症を伴っている場合です。慢性複雑性尿路感染症(カテーテル非留置)に分類される病態では、一時的に抗菌薬に反応するが尿路感染症の治療には同時に残尿の軽減をもたらす治療(具体的には前立腺肥大症に対する治療)が不可欠です。

 

以上より、私は、科学的根拠に準拠した判断材料とされる<賢明な選択>キャンペーンが強調している10の推奨項目のうち、少なくとも7.8に関しては、推奨するための科学的根拠が不十分もしくは、問題あり、であると判断します。

 

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水氣道実践の五原理・・・集団性の原理(転論)

(教習不岐・環境創造の原則)

 

 

水氣道の<環境創造の原則>の発展的運用の実際

 

今回は、まず水氣道の環境創造の原則とは何かについて簡単に説明することから始めてみたいと思います。

 

これは、端的に言えば、水氣道の稽古場である道場の環境を創造していくことを意味しています。

水氣道道場というのは、物的な施設環境だけではなく、精神的な人間関係や共同体としての組織制度の在り方をも含んでいます。つまり、水氣道の組織創りや、稽古の在り方などを含めた道場の「場」の在り方に係るすべての要素を包含して水氣道の環境としています。水氣道の集団性の原理の上に、教習不岐の原則や環境創造の原則が派生している根拠はそこにあるのです。

 

水氣道の稽古場、すなわち道場は、諸般の事情により、現在では専ら屋内の温水プール施設を活用しています。しかし、プール施設は、屋内でなくてはならないという必然性はなく、水温その他の諸条件が満足できるものであれば、屋外のプールも利用可能です。

 

プール水に関しては、水質基準が設定されています。不特定の多人数が利用する遊泳用プールについては、厚生労働省が「遊泳用プールの衛生基準(平成19年健発第0528003号)」により、都道府県、政令市及び特別区において、プールの管理者等に対する指導の指針として定めています。

なお、学校における水泳プールは、文部科学省が「学校環境衛生基準(平成21年文部科学省告示第60号)で定めています。いずれも同様の基準ですが、学校における水泳プール等で毎授業日に行う水質検査は、以下の3項目です。

 

これらのうち、透明度については、官能試験ともいうべき、直接の身体感覚によって評価することができる項目であり、pH値は簡便なリトマス試験紙により半定量判定することができます。また、遊離残留塩素については、天然水においてはそもそも検査の必要性は生じません。

 


遊離残留塩素
どの部分でも0.4mg/L以上(1.0mg/L以下が望ましい)

プールの使用前及び使用中1時間ごとに1回以上計測


pH値
5.8以上8.6以下
使用前に1回計測

 


透明度
水中で3m離れた位置からプールの壁面が明確に見える程度

常に留意する

 

 

水氣道の道場として必要とされる水質条件についても上記の基準に準拠することになります。水氣道の水条件について、さらにいえば、プールのような人工的に整備された施設下で人為的に管理された水でなくてはならないということでもありません。天然の清浄な鉱泉水や温泉水であれば、pH値が5.8以上8.6以下であれば運動浴となる水氣道稽古に適した条件になります。この基準は温泉医学的には、おおむね中性泉(pH6.0以上7.5未満)、弱アルカリ性泉(pH7.5以上8.5未満)に相当しますが、この範囲より若干の酸性あるいはアルカリ性に傾く水質でも適合することがわかります。

 

以上のような背景から水氣道の稽古場環境の可能性としては、季節や天候や水温・水質などの条件や安全性などが担保されれば湖水などの自然環境での稽古も可能であるということになります。私は、いずれ、鉱泉水や温泉水での水氣道稽古や、たとえ年に1度だけでも、湖岸に近い安全な場所を道場とした水氣道稽古が実現することを祈念しています。そして、こうした方向性を意識することが、水氣道の環境創造に繋がるのです。

 

東京を中心とする限られた現状での活動拠点で満足するのではなく、国内外において水氣道の活動を展開していくことへの集団としての意欲の結集があってこそ、人類の生存と健全な繁栄のために不可欠な自然界の「水」と「大気」を保護に貢献することができます。そこに水氣道の大義があります。こうした水氣道の環境創造の原則は、人間同士の創造的な関係性を育む教習不岐の原則と相まって、水氣道の根本的な支柱である「集団性の原理」を実現していくことが、水氣道の本質である「融通無碍の人類愛」に繋がるのです。個々の一般人が独力で世界を救うことは不可能です。しかし、水氣道に参加して、仲間と共に楽しく稽古を続けていくことさえできれば、それは実現できます。


すなわち、<水氣道は世界を救う>ことができるのです。

 

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内科認定医、心療内科指導医・専門医 

 

飯嶋正広

 

血液病学と循環器病学の接点

 

<抗血栓療法の微妙な戦略>No3

 

医学の進歩に伴う2つの相反するリスク(血栓リスクと出血リスク)との狭間で
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、心臓の筋肉に必要な栄養や酸素を運ぶ血管(冠動脈)が細くなったり詰まったりして、心臓に十分な血液が送られなくなることによって起こります。このため治療は、血管の狭くなった部分を広げて、血液のスムーズな流れを取り戻すことが目的となります。

方法は大きく分けて、薬物治療・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)・冠動脈バイパス手術(CABG)の3つがあります。

 

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、脚の付け根や腕、手首などの血管から、カテーテルという医療用の細く柔らかいチューブを差し込んで、冠動脈の狭くなった部分を治療する方法です。先端にバルーン(風船)を取り付けたカテーテルでバルーンを内側から膨らませて血管を押し広げる方法(バルーン療法)が基本です。

 

この治療法は、体に大きな傷をつけることがなく、局所麻酔によって患者さんの意識のある中で進めることもできます。そのため、胸を大きく開くバイパス手術に比べ、患者さんの体にかかる負担は少なくてすむという大きなメリットがあります。このため、症状が比較的軽い場合や、高齢者も含め、多くの患者さんに対して行われるようになりました。

 

ただ最近は、再び血管が詰まってしまう場合(再狭窄)もあるため、これを防ぐために、ステントと呼ばれる器具を使うことが増えています。ステントは金属を網の目状にした筒で、バルーンで血流を再開させた後に血管の中に留め置き、血管を内側から補強します。

 

 

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、このようにステントを用いることが広く普及しています。そして、その術後には、ふつうステント血栓症予防と冠動脈疾患の2次予防薬として抗血小板薬が用いられます。

 

植え込み直後には、抗血小板薬2剤の並行投与法(DAPT)といって、いずれも抗血小板薬であるアスピリンとADP受容体P2Y12阻害薬の2剤の投与が標準的な抗血小板療法になっています。しかし、冠動脈ステントは金属・薬剤・ポリマーの開発・進歩により、術後のDAPTの期間が短縮されつつあります。しかも、このDAPTも必要な期間を過ぎれば抗血小板薬を1剤に減じることも検討すべきであるとされるようになってきました。

 

ステント植え込み後に、一定期間を経れば抗血小板薬の単剤投与になります。

心房細動患者では、左房内血栓による脳梗塞や全身性塞栓症の予防のために抗凝固療法が必要となります。

その場合には、抗凝固薬を抗血小板薬2剤に加えた抗血栓薬3剤投与が行われますが、出血性合併症が多いため、3剤投与の期間はできる限り短くすることが推奨されています。

血栓リスク、出血リスクを考慮し、血栓リスクが高ければ3~12カ月、リスクが低ければ1~3カ月で抗血小板薬を1剤にしてよいとされるようになってきました。

 

心房細動と安定冠動脈疾患を合併する患者さんのための最適な抗血栓療法を検討したAFIRE試験の結果、抗凝固薬(リバーロキサン)単独療法が安全性の面で優れていることがわかりました。このことから、冠動脈疾患患者であってもステント植え込み後1年を経た慢性期になれば、心房細動などで抗凝固薬を併用する場合には、抗血小板薬なしの抗凝固薬単剤で良いと考えられるようになってきました。

 

しかし、薬剤使用のメリット・デメリットの見極めは微妙です。血栓リスクを低下させれば、血栓リスクが増し、その逆もあり、トレード・オフの状況下で医師はますますデリケートな判断を強いられることになっていくような印象です。

 

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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

ハラスメント対策の本質論(No2)

 

Ⅱ 総論 なぜ「ハラスメント」が発生するのか

 

各論の検討に入る前に、ここで今一度考えるべきは、ハラスメント問題の「本質」かと思われます。「ハラスメント」が起きる原因には、大別して個人と組織風土による要因の二つが挙げられます。それぞれについて説明します。その際に重要なポイントも以下の二つがあります。

 

■自社で起こりやすい事とは何か?

 

■社員に気を付けてもらいたいポイントはどこにあるのか?

 

 

まず■自社で起こりやすい事とは何か?について述べます。

企業によって、職場によって、状況によって「何がハラスメントにあたるのか?」、「何が問題になるのか?」は違ってきます。

なぜならある企業Aでは普通のことが、別の企業Bでは普通ではないというケースは十分あり得るからです。

 

次に■社員に気を付けてもらいたいポイントはどこにあるのか?ですが、
こうした「ハラスメント問題の本質」を、従業員一人ひとりに考えていただくことと、その振り返りの内容を組織全体で共有するための試みに着手することが、その職場で起こりがちなハラスメントの防止のための取り組みを効率的に推し進めるうえで不可欠だと思われます。

 

 

 

●個人の要因

 

「行為者の資質に問題がある」「ハラスメント意識が欠如している」「人材不足や忙しさによってストレスが生じやすい」「してはいけないことを正しく認識していない」など個人に根差した理由によって起こりやい「ハラスメント」があります。それは、ジェンダーがらみの伝統的な信念や価値観についての無意識の囚われが大きな原因になっていることが考えられます。
 

 

ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

 

ジェンダーに関する感覚は個人差が大きいものの一つです。その個人差がハラスメントをもたらすきっかけになることがあります。ジェンダーハラスメントとは、一般的な意味での「男らしさ」「女らしさ」のイメージに基づいて人をあれこれと非難したり、強要したりする嫌がらせを指します。「女性なのに、××を嫌がるの?」といった発言だけでなく、「男性なのに、○○できないの?」という何気ない励ましの言葉も、相手の受け止め方次第ではこれに該当します。ジェンダーに関する従来からのハラスメントにはマタニティーハラスメント(マタハラ)が知られていますが、男性に対して女性がおかしてしまう可能性があるものにパタニティーハラスメント(パタハラ)があります。

 

 

パタニティハラスメント(パタハラ)

 

バタニティハラスメントとは、子育てを理由として育児休暇やフレックス勤務、短時間勤務を取得しようとする男性社員の行動を非難したり、人事評価に悪影響を及ぼしたりする行為です。「男が育休ですって。どういうつもりなのかしら?」「評価がどうなっても知らないぞ!」といった言葉が、これにあてはまります。もはや、子育ては女性だけという時代ではなくなって久しいです。男性も一緒に育児を行うという価値観を自然に持ち合わせているくらいでなければ労務上のトラブルを生じてしまいます。

 

 

●組織風土による要因

「会社から常に高い目標を与えられる」「ミスの許されない業務を担うものの、社員のスキルがそれに見合っていない」。こうした強いストレスが日常で繰り返されている組織では、「ハラスメント」が起きやすくなります。また、事業所が本社から離れた地域にあり、「その責任者が実質的にすべての権限を握っている」「それぞれの職場の実情が本社や他の部署になかなか伝わらない」といった閉鎖的な職場環境も「ハラスメント」が起きる確率は高くなります。

 

時短ハラスメント(ジタハラ)

 

時短ハラスメントは、現場に労働時間の削減を要求するときに発生しがちなハラスメントです。時短の実現を強制的に命じる一方で、具体的な施策を何も提案せず、すべてを丸投げするだけに留まらず、「業績や成果はこれまでと同様に」と厳しく求める行為がこれに該当します。指示を出すだけでは、何の改善にもつながりません。

 

もっとも、時短に努めるように命じれば管理職の責任から免れることができるという誤った考え方が組織風土にあったり、真に時短を望んでいないのが企業の本音であったりするケースも想定できますが、人手不足の零細企業では深刻な問題でもあります。少なくとも時短の実現のためには「こうしたらどうか」という考えを提示し、それが徐々にではあっても運用していけるようサポートする姿勢が望まれます。

 

 

ケアハラスメント(ケアハラ)

 

ケアハラスメントとは、働きながら家族の介護をしている社員に対する嫌がらせです。具体的には、介護休業や介護時短制度などを利用しようとする際に、「そんなに休んでばかりでは重要な仕事は任せられないなあ」などと言って、上司や同僚が妨害することを指します。介護だけを理由に降格処分を下すのもこれに該当します。

 

 

●放置によるリスク

 

「ハラスメント」の根本的な解決には、原因の精査と具体的な対策の実効が不可欠ですが、それは個人にとっても企業にとっても容易ではありません。しかし、それが横行してしまうと、企業にどんなリスクが生じるのでしょうか。二つのリスクが想定されます。

 

(1)法的責任を負う

企業活動において「ハラスメント」が行われた場合、その企業には不法行為責任や債務不履行責任などの法的責任が課されます。そのため、「ハラスメント」があったと立証されれば、被害者が受けた精神的な損害を企業が賠償しなければならないことになります。さらには、民事紛争に発展した場合には、風評による企業イメージの低下は間逃れず、会社の信頼・信用に大きなマイナスをもたらしてしまうことになります。

 

(2)離職率の増加

もう一つは、離職率の増加です。「ハラスメント」が発生してしまう職場は、人間関係も気まずくなりがちです。社員のモチベーションも低下してしまうので、有能な人材が離れていく可能性が高くなることでしょう。転職者が続出すれば、企業としては、人材を新たに採用しなければならなくなります。それらに加えて、結果的にコストや生産性の面でも直接・間接の影響が生じることになります。

 

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一般社団法人 日本温泉物理医学会


認定温泉専門医(登録番号第150号)/温泉療法医(登録番号686号)

 

飯嶋 正広

 

 

「知られざる茨城の名湯・秘境」シリーズ

 

第二弾:常磐うぐいす谷温泉 竹の葉(北茨城市)その5

 

<常磐うぐいす谷温泉竹の葉と実際の体感は一致するだろうか?>

 

常磐うぐいす谷温泉竹の葉を温泉医学的にまとめてみますと、<冷鉱泉、弱アルカリ性泉、低張泉>ということになります。


「低張泉」は、理論上では、サラサラしたやさしい湯という傾向があり、温泉の水分が体に吸収されやすいということになります。「低張泉」である「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」の湯は、すべすべしたやさしい湯でした。

低張泉の温泉で長湯すると皮膚がふやけることがあります。それは、「低張泉」では、皮膚の表面からいくらか水が浸透して、皮膚のごく表面の角質層を含む表皮部分だけ伸びる一方、深層の真皮の部分は、変化がないので、一時的にしわが生じるからです。しかし、「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」では、大浴場、露天風呂、内風呂での部分浴など、ゆっくり入浴したにもかかわらず皮膚のふやけは観察されませんでした。

 

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25℃以上の温泉は、「単純温泉」という「療養泉」に分類されることは既に述べました。常磐うぐいす谷温泉竹の葉は、冷鉱泉であるため、「単純泉(単純温泉)」には該当しませんが、泉温を温めれば、療養泉の一つに分類される単純温泉に準じる性質になります。単純温泉は、肌触りが柔らかく、癖がなく肌への刺激が少ないのが特徴ですが、実際に入浴してみても、これらの特徴を味わうことができました。

 

肌に関する重要な因子としては、温泉水のpHがあります。「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」は三大美人泉質とされますが、その他の泉質で美肌効果があるものに「アルカリ性」の温泉があります。つまり、「pH値7.5以上」の温泉がそれにあたります。アルカリ性温泉の中でも「弱アルカリ性単純温泉」がお勧めです。

 

その他、温泉を深く味わいたい方のために、温泉水に対して知覚的試験というものがあることをご紹介したいと思います。これは、飲料水や酒類の官能試験にも似ているのですが、温泉の味わい方には、入浴だけでなく飲泉があります。ですから、温泉療法にも入浴療法だけでなく、飲泉療法があるのです。

 

「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」は入浴専用で、飲泉できません。しかし、飲泉はできなくとも、入浴者は意識せずとも他の五官を通して温泉を味わっていることになります。

 

 


<温泉の知覚的試験>

 

温泉水の色、清濁、味、臭いについて、現地で試験者がおこなった試験結果が、微弱、弱、強といった度合いとともに記載されています。道具や試薬を使わず人間の目、舌、鼻という知覚で試された結果で、その温泉の特徴を簡潔に表しています。

以下は一例です。

なお、「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」に当てはまるものは太字にしました。


 色 
無色、黄色、黄褐色、淡黄色、など


 清濁 
透明、蛋白石濁、微混濁、など


 味 
無味、酸味、炭酸味、収斂味、から味、弱塩味、苦味、など


 臭い 
無臭、泥炭臭、腐臭、硫化水素臭、亜硫酸臭、石油臭、よう素臭、鉱物油臭、木材臭、など


 その他
ガス発生、ガス発泡なし、沈析物の有無、など

 

 


<「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」のまとめ>
冷鉱泉、弱アルカリ性泉、低張泉、
無色透明、微硫化水素臭、弱塩味、ガス発泡なし

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

 

(図1)

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JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 図2)

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(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「有効」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、 9名の平均で    36.5点改善していたため、全体として鍼治療は   有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効1名(11.1%)、有効6名(66.7%)、無効2名(22.2%)でした。(図2)

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

前回はこちら

 

 

Dans les couloirs de la maison, Rieux regarda machinalement verss recoins et demanda à Grand si les rats avaient totalement disparu de son quartier. L’employé n’en savait rien. On lui avait parlé en effet de cette histoire, mais il ne prêtait pas beaucoup d’attention aux bruits du quartier.
・・・J’ai d’autres soucis, dit-il.

Rieux lui serrait déjà la main. Il était pressé de voir le concierge avant d’écrire à sa femme.

建物の廊下で、リウは機械的に周囲を見回し、グランに「ネズミは近所から完全にいなくなったのか」と尋ねた。グランは全く知らなかった。確かに話は聞いていたのだが、彼は近隣のうわさにはあまり気に留めていなかった。

「他に気掛かりなことがあるものですから」と、彼は言った。
リウはすでに彼の手を握り締めていた。妻に手紙を書く前に、管理人を見舞おうと急いでいたのだ。

 

 

Les crieurs des journaux du soir annonçaient que l’invasion des rats était stoppée. Mais Rieux trouva son malade à demi versé hors du lit, une main sur le ventre et l’autre autour du cou, vomissant avec de grands arrachements une bile rosâtre dans un bidon d’ordures. Après de longs efforts, hors d’haleine, le concierge se recoucha. La température était a trente-neuf cinq, les ganglions du cou et les members avaient gonflé, deux taches noiratres s’élargissaient à son flanc. Il se plaignait maintenant d’une douleur interieure.

夕刊の売り子は、ネズミの襲来は収まったと報じていた。しかし、リウは自分の患者がベッドから半身を乗り出し、片手を腹に、もう片方の手を首に回して赤みがかった胆汁を汚物缶に盛んに吐き出しているのを目にした。ひとしきり苦しんだあと、息絶え絶えになって、管理人は寝直した。39度5分の発熱、頸部および四肢のリンパ節腫脹、脇腹には黒味を帯びた二つの斑点が拡がっていた。彼は今度は内臓痛を訴えていた。

 

・・・Ça brûle, disait-il, ce cochon-là me brûle.

Sa bouche fuligineuse lui faisait mâcher les mots et il tournait vers le docteur des yeux globuleux où le mal de tête mettait des larmes. Sa femme regardait avec anxiété Rieux qui demeurait muet.

「焼かれちまう、こん畜生、俺は焼かれちまう。」と男は言った。

黒ずんだ彼の口からは不明瞭な言葉が発せられ、頭痛による涙目を腫らして医者の方を向いた。女房は不安な眼差しでリウを見たが、彼は沈黙を保っていた。

 

 

・・・Docteur, disait-elle, qu’est-ce que c’est?

・・・Ça peut être n’importe quoi. Mais il n’y a encore rien de sûr. Jusqu’a ce soir, diète et dépurative. Qu’il boive beaucoup.
Justement, le concierge était dévoré par la soif. 

「先生、これはどうしたことなのでしょうか?」と女房が言った。

・・・「何どんなこともあり得るといえるでしょう。しかし、まだ確かなことは何も言えないのですが、今夜までは、絶食と排毒をすることです。たくさん飲ませてあげてください。

まさに、管理人は喉の渇きに耐えかねていたのであった。

 

註:

リウ医師は「確かなことは何も言えない」と言いつつも、管理人が激しい脱水状態に陥っていると判断し、管理人の女房に水分補給を指導したことが読み取れます。また管理人の症状は作家によって具体的で詳細にわたって描写されていますが、それはすなわちリウ医師の診察所見に重なるものであることに気付かされます。症状所見を的確に記録できているということは、すなわち医師として何らかの診断の手立てを得ていることが示唆されます。この段階で、リウ医師は管理人が何らかの感染症(伝染病)であることを疑っているはずであると推定することができます。ここで具体的に指摘してみましょう。

 

<赤みがかった胆汁(⇒痰、喀血;肺ペスト?)、息絶え絶え(⇒呼吸困難:劇症型肺炎?)になって、39度5分の発熱(⇒突然の発熱)、頸部および四肢のリンパ節腫脹(⇒有痛性リンパ節腫脹;腺ペスト?)、脇腹には黒味を帯びた二つの斑点(⇒黒色様皮下出血、皮膚ペスト?)、内臓痛、不明瞭な言葉(⇒昏迷)、頭痛による涙目を腫らして(⇒酩酊様顔貌、眼ペスト?)>