『嘱託臨床産業医』の相談箱

 

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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

ハラスメント対策の本質論(No4)

 

Ⅲ 各論(防止措置の概略)

 

(2)望ましい取り組み(努力義務)

 

B.一元的相談体制の整備:相談窓口を設立する

 

相談窓口を設けて、従業員が安心して相談できる体制を作ることが推奨されています。

 

その際に鍵になってくることは、まず相談窓口の担当者としては、「ハラスメント」に関する知見と解決に向けて誠意を持って取り組める従業員を人選することです。

 

次にプライバシーの保護に努めることです。「ハラスメント」の対応を進めるにあたっては、相談者が何も心配せずに相談できるようプライバシー保護に配慮する必要があります。

相談を対面で行う場合には、他の社員に気兼ねなく出入りできる場所に相談スペースを設け、同じ時間帯に相談者が重ならないように事前予約制にするのが望ましいです。

こうしたプライベート重視の姿勢を社内報や社内のホームページで発信し、社員に周知することも必要となってきます。

 

なお相談方法も対面だけでなく、文書やメール、電話などのやりとりなど多様な方法を組み合わせて行うことが望ましいです。

 

他にも、働きがいに不可欠なのは、働きやすさであるという視点を忘れないことです。

働き甲斐や働きやすさを実感できる職場環境を作り上げて行くためにも、「ハラスメント」が起きないような制度やルールを整える必要があります。

 

また、万が一起きてしまった場合にはうやむやにせず、当事者にしっかりと向き合い解決していくように努めていただきたいところです。「ハラスメント」に本気で取り組む覚悟が、今個人だけでなく、組織全体にも問われているからです。

 

 

C.原因解消の取組

 

(コミュニケーション活性化や円滑化のための研修*、適正な業務目標の設定、など)

*一般的な内容に終始したコンテンツで研修をおこなっても、望む研修効果は期待できません。成功のカギとなるのは、各企業の風土などに合わせたケーススタディです。そのためには各現場での事前取材等を通じ、「オーダーメイド型」のコンテンツを準備して、事例演習グループワークすることによって実現可能になります。

 

「ハラスメント」に関する専門家を外部から招き、その基本的な知識や実態、対策の必要性、具体的な対処方法などを社内の研修やセミナーなどの場で説明してもらうのも良い施策でしょう。厚生労働省もこの点について積極的で、委託事業として全国各地でセミナーや講習会を開催しているので、それらを利用するのも良いでしょう。

 

 
D.労働者や労働組合等の参画

 

(アンケート調査実施、意見交換会実施、衛生委員会活用など)

 

上記の3つのいずれもが、私が顧問となっているいくつかの企業では、すでに自主的に実施されています。

やはり、職場において毎月定期的に衛生委員会が開催されていることが基本になります。

その衛生委員会の議題は年間を通じて必要に応じたテーマが検討されます。季節とは無関係に継続して検討されるべき重要テーマの一つが「ハラスメント」問題であるといえるでしょう。
 

なお「衛生委員会」での議事録は、職員全体に周知されることをもって原則としますが、その前提として、職場全体を集約的に検討するのではなく、より広く、セクションごとに「意見交換会」を実施することによって実効性のある取り組みとすることができます。

その場合、いきなり意見を交換し合う場を持つのではなく、事前に、可能な限り匿名での「アンケート調査」を実施し、その解析からはじまって基本情報を共有することから始まることが効率的なようです。