<はじめに>

 

前回は「気管支炎」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「太淵」は親指側の手首の付け根のくぼみにあり、

 

 

「太衝」は足の親指と人差指の間をなぞって指の止まるところにあり、

 

 

「尺沢」は手のひらを上に向け、肘の横しわの親指側の凹んだところにあるというお話でした。

 

 

今回は「風邪」に効果のある「後谿(ごけい)」「申脈(しんみゃく)」「大椎(だいつい)」のツボを紹介しましょう。

 

 

 

<後谿>

スクリーンショット 2022-01-21 11.41.30

手の小指側の側面、側面を小指からなぞっていくと出っ張っている骨に当たるところにあります。

 

 

 

<申脈>

スクリーンショット 2022-01-21 11.42.22

外くるぶしの下から少し下がった、押すと痛むところにあります。

 

 

 

<大椎>

スクリーンショット 2022-01-21 11.42.29

首を曲げたときにできる出っ張りの下にあります。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

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C’est pourtant le même jour, à midi, que le docteur Rieux, arrêtant sa voiture devant son immeubles, aperçut au bout de la rue le concierge qui avançait péniblement, la tête penchée, bras et jambes écartés, dans une attitude de pantin. Le vieil homme tenait le bras d’un prêtre que le docteur reconnut. C’était le père Paneloux, un jésuite érudite et militant qu’il avait rencontré quelquefois et qui était très estimé dans notre ville, même parmi ceux qui sont indifférents en matière de religion. Il les attendit. Le vieux Michel avait les yeux brillants et la respiration sifflante. Il ne s’était pas senti très bien et avait voulu prendre l’aire. Mais des douleurs vives au cou, aux aisselles et aux aines l’avaient forcé à revenir et a demander l’aide du père Paneloux.

それでも、同じ日の正午、自分の建物の前に車を止めたリュー医師は、通りのはずれで、首をうなだれ、両手両足を広げて、操り人形のような姿で苦しそうに歩いている管理人を見た。老人は、医師が見覚えのある司祭の腕にすがっていた。その司祭は、彼も時折会ったことがあるのだが、パヌルー神父といって、博識でありかつ戦闘的なイエズス会士であり、宗教問題に無関心な人々の間でさえも、この市では深く尊敬されていた。医師はこの二人を待っていた。ミシェル老人は目を見開き、息をぜいぜいさせていた。彼は体調があまりすぐれなかったので、外の空気に触れたくなったのである。しかし、首や脇の下、鼠径部などに激痛が走るため引き返さざるを得ず、パヌルー神父に助けを乞うたのであった。

 

__ Ce sont des grosseurs, dit-il. J‘ai dû faire un effort.

___「これは腫れ物だね」と彼は言うのであった。「難儀したよ。

 

 

Le bras hors de la portière, le docteur promena son doigt à la base du cou que Michel lui tendait; une sorte de noeud de bois s’y était formé.

車の扉から腕を出して医師が自分の指でミッシェル老が差し向けた首の付け根を、触診してみると、そこには木の節くれのようなものができていた。

 

 

__ Couchez-vous, prenez votre température, je viendrai vous voir cet après-midi.

__ 寝ているようにして、体温を測っておいてください、午後に来てみますから。

 

 

Le concierge parti, Rieux demanda au père Paneloux ce qu‘il pensait de cette histoire de rats:

管理人がいなくなったところで、リューはパヌルー神父に、このネズミ騒ぎをどう思うか聞いてみた。

 

 

__ Oh!dit le père, ce doit être une épidémie, et ses yeux sourirent derrière les lunettes rondes.

__ ああ!それは流行り病に間違いないでしょう、と神父は言うのであった。そして丸いメガネの奥の彼の両目は微笑していた。

 

 

註:

この場面は、ねずみで観察されていた異常が、人間においても発生することの証左となる最初の症例描写です。

 

建物管理人のミシェル老の目はles yeux brillants(輝く両目⇒大きく見開かれた両目)で、彼を助けるパヌルー神父の目はses yeux sourirent derrière les lunettes rondes(丸いメガネの奥の彼の両目は微笑していた)と対照的に描かれているのも印象的です。

 

リウー医師はその患者の頸部リンパ節を触診し、リンパ節腫脹の所見を得ていたはずです。そのリウー医師は、管理人のミシェル老がその場を外した後に、彼の様子についてではなく、ネズミ事件についての感想をパヌルー神父に求めています。神父の見立ては流行病ということでした。

 

これは、ミシェル老も流行病であるに違いないという判断を、医師と神父という、当時の社会の二大プロフェッショナルが分かち合った瞬間であると解釈するのは、いささか深読みに過ぎるでしょうか。

 

この様子の描き手は、ミシェル老が全身性のリンパ節炎を呈していることと、特徴ある呼吸器症状(気管支肺炎や喘息を想起させる)の存在を証言し、感染症であるらしきことを示唆しています。

 

それにしても、流行病であることを認識しているにもかかわらず、パヌルー神父は病人を助けました。当時のこととはいえ、彼は教養人であり、自身が感染リスクに晒される、いわゆる濃厚接触者になってしまうことについて了解可能であったのではないかと考えます。

 

現ローマ教皇フランシスコも偶然ですがイエズス会出身です。小説の登場人物としての司祭であるパヌルー神父と実在のフランシスコ教皇との対比も興味深い試みとなることでしょう。

 


第8回なかの国際声楽コンクール応募準備を始めてみたら・・・No1

 

コンクールに参加するためには、まず参加資格を確認することから始めます。

 

私は実力とは無関係な条件が多いコンクールは敬遠しています。というより、排除されています。

 

まず年齢制限。45歳から声楽を学び始めることの決定的な不利は、プレステージの高いコンクールに挑戦するに際して、年齢制限のため、軒並み相手にされないことです。

 

そして、次には音楽歴です。

これは音を楽しんできた自分の歴史ではなく、音楽を続けてきたキャリアと解釈しなければならないことのようです。つまり、音大に在学中であるとか、音大卒業者であるとか、あるいは音大の大学院での研修歴とか、結局、音<楽歴>とは音<学歴>のことのようです。

 

実力があれば、千住真理子さんのように音大卒でなくとも立派に活躍できるし、私を声楽に駆り立てた元鹿児島大学医学部教授である米沢傑氏も音大卒ではありません。

 

しかし、日本の現実は、それほど甘いものではないようです。千住さんは音大卒のバイオリニストから陰湿な妨害やいじめを受けて苦しんだ経験があることを最近知りました。おそらく米澤先生も多くの障害を乗り越えなくてはならなかったことでしょう。

 

そして日本の音大出身者のプロの大半は、音大を卒業していない音楽家を同じ土俵(舞台)の上の仲間として認めようとしたがらないのは厳然とした、偽らざる事実なのです。

 

 

音大卒でなくともクラシック音楽の世界でプロ並みの扱いを受けられるようになるためには、名だたるコンクールで上位入賞することのようです。そこで私は、年齢制限なし、音楽歴を問わず、という一流の声楽コンクールを発見しました。

 

それは、<日伊声楽コンコルソ>でした。応募条件には今でも「満18歳以上、日本国籍を有するか日本在住(国籍不問)の者。学歴、音楽歴は問わない。

と明記されています。

 

しかし、ここでも新たな壁があったのです。

それは、応募資料に、師事している先生の名前を記入しなければならないことでなのです。

 

そこで、当時師事していた先生に、恐る恐る相談したところ、<あなたは立派な御職業をお持ちなのだから、他の領域を侵すべきではない>と厳しく忠告されてしまいました。そこで、私は東京での予選ではなく、関西の予選に応募し、週に一回のグループレッスン(日本声楽家協会ライフワークコース)でお世話になっている二人の先生の名前を記入して参加したのでした。

 

結果は一次予選敗退でしたが、その後が大変でした。

 

師事していた先生からは、次のワンレッスンの間、まるまるお説教を食わされ、その後、事実上の破門を宣告されてしまったのです。

それから、日本声楽家協会でお世話になっていたソプラノの先生からは、「私は飯嶋さんの個人レッスンをお引き受けしたことはなかったはずですよね。」と困惑顔でたしなめられてしまいました。

 

クラシック音楽の世界では、たとえ一人ずつ順番にレッスンを受けていても、グループ契約ではなく、個人契約でないと師事したことにならないのは常識なのでしょうが、不幸なことに、当時の私は非常識であることさえにも気が付きませんでした。

 

それにしても、私が関西の予選に出場しただけ、しかも不合格という結果であったにもかかわらず、<日伊声楽コンコルソ>に参加したという噂は一気に拡散してしまったのです。これは、今から10年ほど前のことでした。ですから、その後は、師事した先生が主宰となっているか、審査員となっているコンクールをいくつか集中的に受験しました。

 

この方法をとるメリットは、毎回のレッスンでの先生の気合が違ってくることです。

 

以下は、実績例です。

 

第3回山手の丘音楽コンクール(フェリス女子大学主催)本選入選(男声1名のみ)

 

指導:フェリス女子大音楽学部長(当時)テノール蔵田雅之先生

 

 

第3回東京国際声楽コンクール アマチュア部門本選5位入賞(男声1位)

 

指導:東京藝大教授(当時) テノール川上洋司先生

 

 

第22回日本クラシック音楽コンクール 本選入選

 

指導:東京音楽大学講師 ソプラノ五日市田鶴子先生

 

 

ただし、これにも飽きが来ました。高みを目指そうとするアマチュアがチャレンジしたいと思うようなコンクールの多くが、音大出か否かでプリフェッショナル部門とアマチュア部門とを区別するコンクールシステムを取っているからです。このシステムはプロフェッショナルにとっては幸いかも知れませんが、私のような立場からすれば、気力が挫かれる思いがしたからなのでした。

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医


飯嶋正広

 

こころの健康(身心医学)では、精神神経科や心療内科の他に(脳)神経内科やアレルギー膠原病をとりあげることを先週説明いたしました。そこで、前回は、さっそく神経病学から頭痛を取り上げましたが、奥の深いテーマであるため、今回も引き続き頭痛をテーマにします。

 

最初のクイズで、生命に関わる頭痛の7つの徴候(レッドフラッグ:赤旗)についてだけでも、さらりとご確認頂ければと思います。

 

 

Q1.

What are the seven red flags(suggesting serious underlying pathology)
in the diagnosis of headache?

頭痛の診断において、7つのレッドフラッグ(重篤な基礎疾患を示唆する危険徴候)とは何でしょうか?

 

A1.

1)Sudden onset of severe headache

激しい頭痛が突然起こる場合

 

2)Headache beginning after straining,Valsalva,sexual activity,
or awakens patient from sleep

無理をした後、バルサルバ操作後、性行為の後、                または睡眠から覚醒後に始まる頭痛

 

 

3)Headache that is persistent and worsening over a period of weeks or months

数週間から数ヶ月に渡って持続的に悪化する頭痛
 

 

4)Headache associated with focal neurologic findings or a change in mental status

局所的な神経学的所見や精神状態の変化を伴う頭痛

 

5)Headache associated with meningeal signs(including nuchal rigidity,
Bradzinsli’s or Kernig’s sign)

 

髄膜刺激徴候(項部硬直,ブラジンスキー徴候、ケルニッヒ徴候を含む)を伴う頭痛

 

 

6) Headache associated with fever

発熱を伴う頭痛

 

7) Headache in a patient who has never experienced a headache before

今までに頭痛を経験したことのないという患者さんの頭痛

 

 

 

Q2.

What are the common situations in which a lumbar puncture (LP) is contraindicated ?

腰椎穿刺(LP)が禁忌とされる一般的な状況とは?

 

A2.

Acute head trauma or signs/ symptoms of intracranial hypertension-In these settings, an LP should be performed only after a negative head CT or MRI or consultation with neurosurgery.

急性の頭部外傷や頭蓋内圧亢進の徴候・症状がある場合、急性頭部外傷、頭蓋内圧亢進症などの症状がある場合は、頭部CTやMRIが陰性であるか、脳神経外科を受診してから腰椎穿刺(LP)を行う必要がある。

 

 

What cause of headache is classically associated with the following:

古典的にはどのような頭痛の原因が考えられますか?

 

 

 Uncal herniation

テント切痕(鉤)ヘルニア

 

 

 

Q3.

What is the risk of performing a lumbar puncture (LP) in the setting of elevated intracranial pressure?

頭蓋内圧が上昇している状態で腰椎穿刺(LP)を行うことのリスクは何か?

 

A3.

Uncal herniation(and death)

テント切痕(鉤)ヘルニア(による死亡)

 

 Subarachnoidal hemorrhage(くも膜下出血)

 

 

 

Q4.

”Worst headache of life”

人生で最悪の頭痛

 

A4.

Subarachnoidal hemorrhage

(くも膜下出血)

 

 

Q5

.Blood in CSF

(脳せき髄液中の出血)

 

A5. Subarachnoidal hemorrhage

(くも膜下出血)

 

 Trigeminal neuralgia

(三叉神経痛)

 

 

 

Q6.

Brief episodes of pain in the fifth cranial nerve distribution

第5脳神経領域の短時間の痛みのエピソード

 

A6.

Trigeminal neuralgia

三叉神経痛

 

 Idiopathic intracranial hypertension(pseudotumor cerebri)
特発性頭蓋内圧亢進症(仮性脳腫瘍)

 

 


Q7.

Young,obese female w/papilledema,negative CT/MRI

若年肥満女性、乳糖浮腫あり、CT/MRI陰性

 

A7.

Idiopathic intracranial hypertension(pseudotumor cerebri)
特発性頭蓋内圧亢進症(仮性脳腫瘍)

 

 

Q8.

Initial treatment options include acetazolamide and diuretics
初期治療としては、アセタゾラミドや利尿剤を選択する

 

A8.

Idiopathic intracranial hypertension(pseudotumor cerebri)
特発性頭蓋内圧亢進症(仮性脳炎)

 

 

Q9.

Large doses of Vitamin A or tetracyclines
ビタミンAの大量投与やテトラサイクリン系薬剤の投与

 

A9.

Idiopathic intracranial hypertension(pseudotumor cerebri)
特発性頭蓋内圧亢進症(仮性脳炎)


 Temporal arteritis(頭動脈炎)

 

 

Q10.

Inflammatory systemic illness in elderly; symptoms include unilateral headache in temporal region,eye pain,and vision loss

側頭部の片側頭痛、眼痛、視力低下などの症状を伴う高齢者の炎症性全身性疾患

A10.

Temporal arteritis(giant cell) 

側頭動脈炎(巨細胞)

 

 

Q11.

Polymyalgia rheumatica

(リューマチ性多発筋痛症)

 

A11.

Temporal arteritis

(側頭動脈炎)

 

 

Q12.

Medical emergency treated with steroids

(ステロイドで治療される救急疾患)

 

A12.

Temporal arteritis.

(側頭動脈炎)

 

 

Note:

steroids do not typically decrease the yield of temporal artery biopsies (the definitive test) since the histopathologic findings persist for several weeks after induction with steroids.

注:

ステロイド導入後、数週間は病理組織学的所見が持続するため、ステロイドは通常、側頭動脈生検(決定的な検査)の精度を低下させない。

 


 Meningitis

(髄膜炎)

 

 

Q13.

Positive Brudzinski’s sign

(ブルジンスキー徴候陽性)

 

A13.

Meningitis

(髄膜炎)

 

 

Q14.

High number of polymorphonuclear cells in CSF

(髄液中の多形核細胞数の多さ)

 

A14.

Meningitis (bacterial)

髄膜炎(細菌性)

 

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水氣道実践の五原理・・・統合性の原理(破論)

 

(心身統合・心技体の原則)

 

「心・技・体」という言葉は、もともと明治時代の柔道家の言葉が語源だといわれます。 しかし、実際にその使われ方となると、本質から離れて歪曲されていると感じることがあります。

 

「心・技・体」と表立って発言している人の中には、その実は根性論による「強いられた努力」による鍛錬法を強行するための大義名分にしている方がいます。日本のスポーツ界でも精神的にも肉体的にも厳しく追い込み、それに耐えることで力をつけていこうという「根性を叩きこむ」というやスパルタ主義でのしごきが長年もてはやされてきました。猛烈なしごきと絶対的な上下関係で運営されているチームは、いまだに少なくなさそうです。

 

日本で「精神論」や「根性論」が暴走し始めたのは、無謀で不利な戦いに突入することが回避できなくなり、さらに勝ち目のない戦を終わらせることができない空気の中で起こりました。

 

絶対的に不足している物資や情報(インテリジェンス)を前提とする作戦計画の遂行のために、体(体格)にも技(武器)にも劣った日本人が唯一自負できる心(武士道や大和魂)を軸として最大限に鍛え上げる精神論を奨励する気運が国民の美徳としてもてはやされました。

その結果、純粋で従順な精神を持つ、大勢の有為な若者の貴重な命が犠牲になってしまいました。

 

日本は戦争に敗れても、その敗因を理論的に徹底分析することなく、工夫や改良を加える余裕も見いだせないまま、ひたすらに、がむしゃらに戦後七十有余年を経てきました。

 

戦後復興期を経て命がけの精神状態と硬く結びついた精神論は目覚ましい経済復興を遂げる原動力として生き残ってきました。国民全体の栄養状態は改善して体格も向上(機能的な向上を伴わない体)し、学問や科学技術も大いに進歩(人間性の向上に結び付かない技)したため、国民文化については一向に進歩しないまま、一時は世界の経済戦争にまで優勝(「ジャパン・アズ・No1」)したかに見えました。

 

こうした表面的な成功体験を通して確信的に認識されることになった「精神論」は、日本においては、精神文化の一端として色濃く残っています。したがって、敗戦と共に吟味されるべきかつての精神論のままの形で激変した戦後社会を必死で生き抜いてきたということができるでしょう。

 

その結果、私たちには何が残されたでしょうか。そして何が失われつつあるのでしょうか。

 

今からであっても、一人一人がきちんと丹念に吟味していくことが望まれます。しかし、現代社会を生きる私たちの感性は、私たちを取り巻く目まぐるしい環境の劇的変化や、矢継ぎ早に届けられる表層的な、場合によっては操作された膨大な情報によって、混乱に陥っています。

 

私たちにもできることは、まず、私たちが混沌の世界に生きることを余儀なくされているという現実に気づけるようになることです。そして、私たちにとって真に価値のある財産は何かを、信頼関係によって構築された共同体の中での共通体験や基礎的訓練、そしてさらなる発展的修錬を通して全人的に知り、身に着けることです。

 

そこで、私たちは過去からどんな財産を遺贈されていて、私たちがそれをどのようにそれらを継承・発展させ、さらに、どのように次世代に繋げていくことが大切なのかを、各人が、そして家族やコミュニティ単位で真摯に取り組むことが不可欠だと、私は考えています。

 

水氣道は団体で実践する自己啓発活動であり、自己鍛錬や護身術のみならず互助的共同体形成や集団防災訓練に通じるものです。そのため「軍隊式」も「気合」も「根性」は、これらを単純に否定するのではなく、むしろ、それらの本質的存在価値を引き出すことが肝要です。

 

たとえば、水氣道は、段級制を採用しています。これは、たとえば救世軍(Salvation Army:救世陸軍=陸援隊)が陸軍の階級制をとっているのように水氣道は、海軍ならぬ水軍としての階級制を採用しています。これっは日本武道である剣道・柔道とは本質的に異なり、上級者が下級者を教え導き支援します。

 

また、それが不得手であるならば、さらに進級することはできない仕組みになっています。そのかわり、下級者に奉仕をする実績に応じて、新たな技が授けられる仕組みになっています。

 

そのために水氣道では、いつでもイキイキと工夫を凝らし、どこでものびのびと改良していくことに心がけ、稽古体系の中に採り入れています。そして団体稽古の推奨と同時に競技性の否定という水氣道固有の稽古方針に基く実践によって、正しい「心技体」の理解に基づく指導方法が前提としての正当性や妥当性が担保されることになります。

 

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内科認定医、心療内科指導医・専門医 

 

飯嶋正広

 

 

Dastroenterology(消化器病学)

 

日本の講学的な医学教育のシステムと米国の実践的な問題意識には明確な違いがあります。

 

前回は下痢を取り上げましたが、今回は炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)を取り挙げます。米国のテキストやレヴューブックでは、潰瘍性大腸炎(UC:Ulcerative Colitis)とクローン病(Crohn’s disease)についての鑑別が実臨床に重要であることが日本の代表的なテキストよりわかりやすく記載されているものが多い印象があります。

 

 

〈炎症性腸疾患〉Inflammatory Bowel Disease PartⅠ

 

<日本流医学テキスト>

炎症性腸疾患は腸粘膜に炎症や潰瘍を生じる原因不明の疾患である。狭義にはCrohn病と潰瘍性大腸炎を指す。

 

・日本でも増加の一途をたどり、Crohn病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)は厚労省の特定疾患治療研究事業に指定された「指定難病」に定められている。

 

・Crohn病(CD)は口腔から肛門までのすべての消化管に起こりうる、全層性の慢性肉芽腫性炎症性疾患で、回盲部に好発し、再発と寛解を繰り返す。

 

・潰瘍性大腸炎(UC)は主として大腸の粘膜と粘膜下層を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する、びまん性非特異性炎症疾患で、直腸から上行性に病変が拡がり、寛解と増悪を繰り返す。

 

 

コメント:

日本の医学書は漢字表記による概念の表現なので簡潔ですが、その反面印象に残りにくく覚えにくいのが難点です。なお、炎症性腸疾患ばかりではありませんが、併存症などが全身の多系統に及んでいることが少なくないことを感じ取っていただければ、と存じます。

 

 

<米国流実践的Q&A>

 

Ulcerative colitis(UC)or Crohn’s disease?

潰瘍性大腸炎かクローン病か?

 

 

Both UC and Crohn’s disease

潰瘍性大腸炎とクローン病に共通する所見

 

 

・Associated with ankylosing spondylitis

 強直性脊椎炎との関連性

 

・Associated with pyoderma gangreosum

 壊疽性膿皮症との関連性

 

・Increased risk of colorectal carcinoma (UC>>>Crohn’s )

大腸がんのリスク増加 (UC>>クローン病)

 

 

コメント:

炎症性腸疾患という大まかな病気の系統を見立てた後の詳細な鑑別診断においては、疾病間の違いを弁えておく必要があります。同系統の複数の疾患の間で共通してみられる所見のみでは診断することはできません。

 

しかし、これを共通所見としての認識が不足して、一方のみの所見であるという勘違いがあると思わぬ誤診に繋がり兼ねないので、恐ろしい所でもあります。

 

潰瘍性大腸炎とクローン病に共通する所見である強直性脊椎炎は、リウマチ関連疾患であり、リウマチ専門医の守備範囲でもあります。

 

この疾患は、脊椎や体幹に近い部分の関節を侵す慢性進行性の関節炎です。

 

薬物療法の他に、リハビリテーションとして適度な運動をすることが関節変形の進行抑制に有効であることが知られています。この疾患のための運動療法としても水氣道®は理想的です。

 

 

UC(潰瘍性大腸炎)

・Pancolitis with crypt abscesses(陰窩性膿瘍を伴う全腸炎)

 

・Associated with sclerosing cholangitis(硬化性胆管炎との関連性)

 

・Can lead to toxic megacolon(中毒性巨大結腸症の原因となることあり)

 

・Bloody diarrhea(血性下痢)

 

・Pseudopolyp(偽ポリープ)

 

・Rectal involvement(肛門病変)

 

 

コメント:

共通所見に加えて、相対的に特徴が限られているUCの所見を正確に把握しておくことが思考(記憶)経済的にも有用で、クローン病との鑑別が容易になります。

 

UCに関連して発症する硬化性胆管炎は、膠原病類縁疾患であるIgG4関連疾患の膵病変である自己免疫膵炎の膵外病変としても認識されています。

 

中毒性巨大結腸症は、結腸の一部~全体の拡張(直径6㎝以上)に臨床的な中毒症状(下痢数増加、血便、腹痛、腹部膨満など)が加わったものです。穿孔を来す恐れがあるため、全身管理下で緊急手術の適応となります。

 

 

 

Crohn’s disease(クローン病)

・Fistulas and fissures(瘻孔・裂孔)⇔偽ポリープ

 

・Amyloidosis(アミロイドーシス)

 

・Longitudinal ulcers(縦断型潰瘍)

 

・Punched-out aphthous ulcers(打ち抜き型アフタ性潰瘍)

 

・Skip lesions(飛び石病変)

 

・Can involve any portion of the GI tract (usually terminal ileum and colon)

胃腸管のどの部分にも発生する(通常は回腸末端と結腸)⇔肛門病変

 

・”String sign”on x-ray (due to bowel wall thickening)

レントゲンフィルム上の "ストリング徴候"(腸壁の肥厚による)

 

・Transmural inflammation(全層性炎症)

 

・Cobblestone mucosa(敷石状粘膜)

 

・Watery diarrhea(水溶性下痢)⇔血性下痢

 

・Nephrolithiasis(腎盂尿管結石症)

 

・Stricture formation(狭窄形成)

 

・May mimic acute appendicitis(急性虫垂炎と紛らわしいことがある)

 

 

コメント:

共通所見に加えて、クローン病の多数の所見を、特徴的で限られたUCの所見と対比して把握しておくことが思考(記憶)経済的で、クローン病との鑑別が容易になります。

 

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臨床産業医オフィス

 

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

飯嶋正広

 

 

働き方改革関連法での変更点と産業医の役割

(その選任方法、重要性)について(第2回)

 

 

2019年4月の働き方改革関連法による改正

 

2019年4月に施行された働き方改革関連法では、「産業医・産業保健機能の強化」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されました。

 

産業医・産業保健機能の強化

産業医・産業保健機能の強化では、以下の2つに分類され、機能面の強化が求められます。その一つが「産業医の活動環境の整備」、もう一つが「健康相談の体制整備、健康情報の適正な取り扱い」です。今回は、前者について紹介いたします。

 

 

産業医の活動環境の整備

産業医の活動環境の整備では、

1) 産業医の独立性・中立性を強化し、必要な医学の知識に基づいた労働者の健康管理が求められます。

⇒これの背景は、企業に雇われる産業医、とりわけ専任産業医は、いわゆる会社員化を余儀なくされるために、産業医としての独立性が脅かされかねない現実が問題視されているからです。企業経営者からの独立性が保証されなければ、産業医が自己保身のために、労使間において使用者側に傾きやすくなるために中立性を維持することは難しくなります。これは、専任産業医に限らず、嘱託産業医であっても、収入のほとんどを産業医業務に頼っている場合には、上記の専属産業医と同様の問題が発生する可能性があります。私は、産業医の報酬に頼らずに、一応の生計を確保できるため、高い独立性・中立性を確保しやすい立場にあることがいえます。

 

また、

2)産業医には労働者の健康管理を行うための知識・能力の向上に努めなければいけません。

事業主は産業医の辞任・解任時に衛生委員会へ遅延なく報告する義務が発生します。

⇒衛生委員会を形骸化させている企業、衛生委員会の議事録を残そうとしない企業、当該議事録を関係者が閲覧できないようにしている企業はブラック企業であるといえます。このようなブラック企業は、恣意的に産業医交代を繰り返します。すなわち、そのようなブラック企業で、独立性・中立性を保持しようと努める産業医は常に解任のリスクを負っているといっても過言ではありませんでした。
また、事業者には産業医の権限を具体化する必要があります。           

 

産業医に付与される権限には以下の項目が含まれます。

• 事業者または総括安全衛生管理者に対して意見を述べる

 

• 労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集する

 

• 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示する

 

⇒上記の3点を誠実に実践しようとする産業医を歓迎するような企業はまだ少数であるというのが私の印象ですが、相互の信頼関係が深まるにつれて、次第にそれが可能になっていくことも少なくないことに期待が持てます。ですから、以下のポイントも重要事項だといえるでしょう。

 

・その他、産業医の活動と衛生委員会等との関係も強化されています。

 

・事業主は産業医から勧告を受けた際は速やかに衛生委員会等に報告しなければいけません。

 

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「知られざる茨城の名湯・秘境」シリーズ


第二弾:常磐うぐいす谷温泉 竹の葉(北茨城市)その1

 

茨城県は、年間を通して比較的温暖な気候に恵まれ、山・川・大地と変化に富んだ自然はたくさんのおいしい食材を提供しています。そして、茨城の沖の太平洋は黒潮と親潮が交錯しています。そのため水揚げされる魚の種類も豊富で豊かな漁場が形成されています。それら地元の海の幸・山の幸をふんだんに使った料理は、たとえ素朴な外観であったとしても、栄養学的には天下一品であるといえます。その豊かな自然の恵みに感謝して、あまりに大胆で不自然な手を加えようとしないのが茨城流のもてなし方だといえるかもしれません。つまり、あからさまな、これ見よがしのアピールを良しとしない茨城の素朴な美風が息づいているのです。

 

さて、今回の常磐うぐいす谷温泉。東京の山手線にも「鶯谷」駅があり、渋谷区にも丁名がつかない鶯谷町がありますが、季節になると本物のうぐいすの囀(さえず)りを聴くことができるのは、茨城県のうぐいす谷であると言えましょう。実際に、野鳥が庭先や生垣や付近の木立には様々な野鳥の姿を目にすることができるこの旅館に到着したのは、12月12日の夕刻でした。

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福島県双葉への出張帰りで、JR常磐線で茨城県に入って2つ目の磯原駅で降り、タクシーで数分のところにありました。茨城県人を誇りながら、この駅で下車するのは初めてでしたが、こんなところに純和風の温泉旅館があるなどとは想像できない、隠れ家的な立地でした。タクシーを下車したときの外観は、ちょうど案内のサイトに掲載されている写真と同様の風情でした。

 


館内は静かで落ち着いた環境に囲まれていました。和風旅館ならではの落ち着いた佇まいでくつろげるのはありがたいことです。双葉での産業医業務内容は短時間での集約的な、しかも責任の思い業務であるためか、勤務中よりも、その後の帰路に疲れを覚えます。ですから、福島からの帰路の途中に温泉旅館でくつろぐことができるのは贅沢なひと時となります。

 

宿全体が竹林と渓流と池に囲まれ、しかも手入れの行き届いた風情のある内庭の生垣で隣接の客室とも仕切られているため、まさに隠れ湯の宿の名に値します。また、客室の前の渓流では心地よい静かなせせらぎの音を立てています。

 

しかも、その贅沢な隠れ部屋で、ゆっくりとのんびりと疲れを解きほぐすことができます。その理由は、竹林と渓流と池に囲まれた露天ぶろ付きの大浴場と内湯も露天風呂仕立てになっているのが大きな魅力であったからです。そのお蔭で、一泊だけの宿泊であっても充実したくつろぎのひとときを十分に味わうことができました。

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<はじめに>

 

前回は「ほてり」に効果のある「少府(しょうふ)」「金門(きんもん)」「太衝(たいしょう)」のツボを紹介しました。

 

 

「少府」は手を握って薬指と小指の当たるところにあり、

 

 

「金門」は外くるぶしの下から2センチほど下にある窪みにあり、

 

 

「太衝」は足の親指と人差指の間をなぞって指の止まるところにあるというお話でした。

 

 

 

今回は「気管支炎」に効果のある「太淵(たいえん)」「太衝(たいしょう)」「尺沢(しゃくたく)」のツボを紹介しましょう。

 

 

<太淵>

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親指側の手首の付け根のくぼみにあります。

 

 

 

<太衝>

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足の親指と人差指の間をなぞって指の止まるところにあります。

 

 

 

<尺沢>

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「尺沢」は手のひらを上に向け、肘の横しわの親指側の凹んだところにあります。

 

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

前回はこちら

 

 

Les choses allèrent si loin que l’agence Ransdoc (renseignements, documentation, tous les renseignements sur n’importe quell sujet) annonça, dans son émission radiophonique d’informations gratuities, six mille deux cent trente et un rats collectés et brûlés dans la seule journée du 25. Ce chiffre, qui donnait un sens clair au spectacle quotidien que la ville avair sous les yeux, accrut le désarroi. Jusqu’alors, on s’était seulement plaint d’un accident un peu répugnant. On s’apercevait maintenant que ce phénomène dont on ne pouvait encore ni préciser l’ampleur ni déceler l’origine avait quelque chose de menaçant. Seul le vieil Espagnol asthmatique continuait de se frotter les mains et répétait : « Ils sortent,ils sortent ≫, avec une joie sénile.

その結果、ランスドック(情報、資料、あらゆる情報)通信社は、ついにラジオの無料ニュース番組で、25日の一日だけで6,213匹のネズミが集められ、焼却されたと発表するに至った。この数字は、市民の目前で繰り広げられている日々の光景に明確な意味を与え、それが混乱に拍車をかけていた。それまで、市民は何となく嫌気を催す出来事だという不満があっただけだった。この現象は、まだその全容や原因がはっきりしないままなのであるが、この期に及んでは、それが何かしら不穏なものであることに気づいたのであった。ただ一人、スペイン人の喘息もちの年寄りだけが、耄碌してはしゃぎながら手をこすり合わせて「出てきたぞ、出てきたぞ」と繰り返していた。

 

註:

最後の一文Seul le vieil Espagnol asthmatique continuait de se frotter les mains et répétait : « Ils sortent,ils sortent ≫, avec une joie sénile.これの解釈について、宮崎嶺雄は次のように訳しています。

<ひとり、例のイスパニア人の喘息もちの爺さんだけが、相変わらずもみ手をしながら、「出て来るわ、出て来るわ」と、年寄らしい喜びをもって繰り返していた。>

年寄らしい喜びをもって、とはavec une joie sénile.の直訳ですが、わかりにくいところです。

 

ここでは、sénileという語彙の意味が問題になります。英語でもsenileという語があり、senile dementiaといえば老人性痴呆症です。このように、senileという英単語には老年の、老齢による、老人性の、という意味がありますが、単独でも老衰した、耄碌(もうろく)した、という意味で用いられることがあります。

 

これはフランス語のsénileも同様です。私は、こちらの意味で解釈を試みた結果、<ただ一人、スペイン人の喘息もちの年寄りだけが、耄碌してはしゃぎながら手をこすり合わせて「出てきたぞ、出てきたぞ」と繰り返していた。>と訳出するに至りました。前述の宮崎訳と読み比べてみてください。