『嘱託臨床産業医』の相談箱

 

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臨床産業医オフィス


<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

飯嶋正広

 

 

働き方改革関連法での変更点と産業医の役割

(その選任方法、重要性)について(第3回)

 

産業医・産業保健機能の強化では、以下の2つに分類され、機能面の強化が求められます。その一つが「産業医の活動環境の整備」、もう一つが「健康相談の体制整備、健康情報の適正な取り扱い」です。今回は、後者について紹介いたします。

 

 

 

健康相談の体制整備、健康情報の適正な取り扱い

 

2019年の法改正では、労働者が安心して産業医に相談できる体制整備も求められています。

 

そのため、面接指導や健康診断の結果といった健康情報を適正に取り扱い、労働者からの健康相談に適切に対応できる体制を構築しなければいけません。
また、事業主は産業医の業務内容を労働者に周知するように努める必要があります。

 

⇒2021年12月現在において、この目標は十分には達成されているとはいえないようでした。したがって、今年においても継続的な重要課題です。

 

 

 

長時間労働者に対する面接指導等

 

残業時間の上限規制により、<長時間労働者に対する面接指導>等も強化されています。

 

労働時間の状況把握や労働者への労働時間に関する情報の通知、
医師による面接指導の対象となる労働者の要件(時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた場合)などが細かく規定されています。

 

また、働き方改革関連法で新設された<高度プロフェッショナル制度>対象労働者に対する医師による面接指導(1月当たり100時間を超える場合、申し出なしに面接指導を行うなど)も規定されています。

 

 

 

産業医の職務は「労働者の健康管理のために」

 

産業医は、労働者の健康管理のために次の医学的な専門知識を必要とする職務を行います。

 

• 健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック、高ストレス者への面接指導を行い、各結果に基づき適切な措置を行う

 

• 作業管理、作業環境の維持管理

 

• 衛生教育、健康教育、健康相談など労働者の健康を維持するための働きかけを行う

 

• 労働者の健康障害の原因を調査、再発防止に努める
また、法に基づく権限により、以下の職務も行います。

 

• 労働者の健康管理等について、事業者、総括安全衛生管理者に必要な勧告を行う(勧告権)

 

• 事業場に設置された衛生管理委員会において、労働者の健康障害防止対策等の調査審議を行う(調査審議権)

 

• 衛生管理者に指導、助言を行う(指導・助言権)

 

• 決められた間隔で職場を巡視し、労働者の健康障害を防止するための必要な措置を行う

 

• 労働者の健康障害防止のため長時間労働等に関する情報を把握する
産業医は事業所の安全衛生管理を日常的に行い、               必要に応じて適切な措置を行う義務があります。

 

 

所感:

労働者のための一般健康診断やストレスチェックは実施されるようになりま
したが、結果の活用がなおざりにされている職場が少なくないため、事後措 置による改善に繋がりにくいことが問題だと考えています。