こころの健康(身心医学):こころの耳Q&Aから学ぶNo9

 

前回はこちら

 

厚生労働省は、
職場のメンタルヘルスに関するよくある質問と答えをまとめましたとして、ホームページで、こころの健康に対してわかりやすいQ&Aを掲載しています。それに私が臨床の立場からCとしてコメントを加えてみました。


Q.

主人が最近「死にたい」と言い出しましたが、家族としてどのように対応すればいいのでしょうか。

 


A.

まずは「なぜ死にたいのか」、また「なぜ死ななくてはならないのか」、本人の話にじっくりと耳を傾けることが大切です。おそらく「死にたく」なるくらい悩んでいることがあるはずですから、その悩みを聞いてあげましょう。

 

そして、一人で悩まず、その解決方法を一緒に考えて、家族としてできること、あるいは他に相談して解決する可能性を、押しつけにならないように寄り添いながら考えていく姿勢を示すことです。

 

悩みを解決する方法として死ぬ以外の他の選択肢を強調し、本人にどのような理由であっても家族として「あなたには死んで欲しくない」、「悩みがあるなら、一緒に考えていきたい」、「早まったことはするな。自殺して死んでしまうようなことがあったら、我々も生きていけない」となるべく具体的に、死にたい気持ちに目を背けず自殺をしないことを固く約束するべきです。

 

また、本人がうつ病などの精神疾患にかかっている可能性が高いので、なるべく目を離さないようにしてできるだけ早く精神科に受診することをおすすめします。本人が受診に拒否的な場合は、会社の健康管理室があればその産業保健スタッフや地域の保健所で相談することが可能な場合もあります。≪ご家族にできること≫も参考にしてください。

 

 

C.

今回の質疑応答は前回の延長です。上記の回答は分かりやすく書かれていて良いのですが、

<「早まったことはするな。自殺して死んでしまうようなことがあったら、我々も生きていけない」となるべく具体的に、死にたい気持ちに目を背けず自殺をしないことを固く約束するべき>

と書かれているところが気になるところです。

 

まず「早まったことはするな。」などの命令口調は反発を招きかねません。

 

つぎに「自殺して死んでしまうようなことがあったら、我々も生きていけない」などと言ったところ「それならば、いっそ自分と一緒に死んでくてないか」と言われて困ったというケースが過去にありましたので、念のために付け加えておきます。

 

最近になって夫に「死にたい」と言い出されたならば、信頼のおけるなるべく多くの人にその事実を伝え、自殺防止のための監視ネットワークを形成しておくことと、妻である自分自身の平常心を見失わないような心構えを備えておくこと、そのためには何が起きても動じないという覚悟を持っておいた方がよいこともあるのではないかと思います。