『水氣道』週報:水氣道稽古の12の原則(17)専門性の原則(その1)

 

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専門性の原則とは、スポーツトレーニングにおける理論上の概念です。

簡単に言えば、現代において高度の競技成績を達成するためには、スポーツトレーニングを専門化する必要があるという原則です。

 

専門化とは何かということについては、ひとまず脇に置いておいて、そもそも専門性の原則にのっとって専門化したトレーニングをすることの目的や期待できる効果とは、どのようなものかについて先に紹介します。

 

専門化したトレーニングによって個々のスポーツの種目の特異性に関連した形態的および機能的変化が引き出し易くなります。つまり、種目に固有の技術、戦術、心理的特徴を獲得し易くなるということです。

 

なお、競技レベルの向上に伴いトレーニングの全体量が増える傾向にあるばかりでなく、増加した全体量に占める専門的トレーニング自体の割合も増加していきます。これは水氣道においても同様のことが言えます。なぜならば、水氣道の稽古を継続し、技術が向上するにつれて、稽古全体において専門的稽古の比率は加速度的に増加することになるからです。


さて、人類の普遍的な営みとして、世界各地で様々なスポーツ活動や競技活動がありますが、それぞれの運動様式や評価尺度や目的は多様性に富んでいます。

 

そのため、個々のスポーツなり競技には、それぞれに固有な特徴があります。他とは異なる特徴のある運動ほど、身体的あるいは精神的な負荷も固有な性質を帯びてきます。

 

つまり、トレーニングの内容もそれにともなって、より専門的になっていくのです。このことが、専門性の原則を理解する上で大切な事実的背景となるのです。

 

専門的なトレーニングと対比できるのが一般的トレーニングです。多くのスポーツ種目の間で共通して要求される基礎的な訓練であるほど、より一般的なトレーニングになります。

 

専門的トレーニングの実際も、スポーツにおける筋力トレーニングの理論にしたがって対象とする運動群に着目して説明することが可能です。

 

これには大きく分けて3段階があります。

 

 

 第1段階(関節可動性レベル):
  

身体のあらゆる動きは骨格筋が原動力となり、運動力学的には筋肉が関節を跨いで骨と付着する起始と停止という2カ所の間の距離の変化によって起こります。身体の目的とする各関節に着目して、関節可動域を確保するための運動群をプログラムする
  

(これは水氣道に特有の専門的なトレーニングであって、各種の航法がデザインされています。イキイキ体操、五航法など)

 

 

 第2段階(動きの全体レベル):

 

動き全体がそのスポーツに類似した運動群をプログラムする
(ボート競技のためのローイング用のエルゴメーター、親水航法、のびのび体操、ヨガの動作になぞらえた理気航法・太極航法、クラシックバレーの動作になぞらえた舞踊航法、空手や弓道の動作になぞらえた水拳航法など)。

 

 

 第3段階(動きの要素レベル):

 

1つのまとまりを持ったそのスポーツの動きの中から一部分だけを取り出した運動群をプログラムする

(単独あるいは複数の筋群を活性化させる筋力トレーニング、調血航法、 活水航法、経絡航法など)