厚生労働省は、
職場のメンタルヘルスに関するよくある質問と答えをまとめました
として、ホームページで、こころの健康に対してわかりやすいQ&Aを掲載しています。
それに私が臨床の立場からCとしてコメントを加えてみました。
④ Q.うつ病の時に陥りやすいパターンとは?
A.
うつ病になるとどうしても他者の言動が気になり、自分を責め、落ち込んでしまうことも多くなります。具体的な例をあげつつ、気持ちが沈んでしまった時の対処法を説明していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q.4-1:漠然とした不安感と負の感情から、相手の些細な言葉に敏感に反応してしまう、どうすればよいか?
A.
世の中には色んな考え、意見の人がいます。あなたとは違う考えの人もいるでしょう。相手と意見が合わず、自分の意見を否定されることがあっても、気にし過ぎないことです。意見が合わなかっただけで、あなた自身を否定されたわけではありません。
相手の意見を真に受け過ぎて、落ち込むことはありません。相手は相手、あなたはあなた、別の人間であり、異なる気持ちや考えがあるのは当然です。そう割り切って、あなたはあなた自身の気持ちや意見を大切にするようにしてください。
C.
「相手と意見が合わず、自分の意見を否定されることがあっても、気にし過ぎないこと」というアドバイスは正しく理解しておいた方が無難でしょう。
このアドバイスは、「気にしないこと」ではなく、あくまでも「気にし過ぎないこと」と言っています。
両者は大きく違いますので要注意です。
相手を尊重する気持ちがあるならば、大いに傾聴すべきですし、そうして学べることも大いにあるはずだからです。
つまり、熟考や吟味、検討のプロセスはコミュニケーションを大切にしたいと考える良識的な社会人としては必要な作業過程です。
ただし、そうしたプロセスを経ても意見が異なることはあっても当然です。
納得いかないまま相手の意見を丸のみにしたり、無理に同調しようと頑張りすぎたりする必要はまったくありません。
また「あなたはあなた自身の気持ちや意見を大切にする」といことは、心の健康を保つうえでとても大切です。しかし、それには前提があります。それは、「あなたはあなた自身と同様に相手の気持ちや意見も大切にする」という心がけを忘れないように、ということです。
また、そうすることによって、相手もあなたの気持ちや意見を大切にしてくれるようになることでしょう。
Q.4-2:劣等感を強く感じてしまう、どうしたらよいか?
A.
他人と自分を比べて劣等感を感じるのは、「幸せの基準」が自分ではなく他人になってしまっているからです。「幸せの基準」をあなた自身に置かないと、自分が本当に望んでいるものが見えなくなってしまいます。
華やかな生活をしている人も、その陰で絶え間ない努力をしています。あなたに同じような努力ができるでしょうか?そもそも、華やかな生活を送ることが本当にあなたの望むことでしょうか?
こうして自問自答を繰り返していくことで、自分の深層心理に気づけます。
自分が本当に望むことがわかれば、他人の成功などに心を乱されて劣等感を感じることもなくなります。自分の考えや価値観をしっかり持って他者と接することで、むやみに落ち込むことがなくなります。他者の言動に傷つくことや嫉妬がなくなると、自尊心が生まれ、結果、他者も自分自身も大切にできるようになります。
C.
この質疑応答で、気になる点を指摘させていただきたいと思います。
それは質問Qも回答Aも、他人と自分を比較したり、劣等感を感じてしたりしてしまうことが望ましくないことであることを前提としていることです。
もっとも、質問は「劣等感を強く感じてしまう」とありますから、劣等感のすべてを否定的にとらえているとは限らないともいえますが、回答では明かに劣等感をマイナスの感情としてのみとらえているように読み取れます。
また、「幸せの基準」が自分ではなく他人になってしまっているからです。とありますが、「幸せの基準」を一定期間、他人においてみることは、必ずしも不毛な結果を招くものではないと思います。
多くの人々に、いわば健全な「憧れの存在」があってもおかしくはないわけです。その憧れを目指して、自己錬磨することができるとすれば、それはとても素晴らしいことだと思います。問題なのは、劣等感そのものではなく、自分が感じている劣等感をどのように受け止めて、それをどのようにプラスに活かすか、ということではないかと思います。
「自分が本当に望むことがわかれば、他人の成功などに心を乱されて劣等感を感じることもなくなります。」という回答も少し屈折しているような気がします。自分が本当に望むことの延長上に、他人の成功などがあるのだとしたら、それは自己成長のための明確なモデルになり、大きな動機付けにもなります。
問題なのは、そこではなく、それで「心を乱されて」自分自身の価値(存在意義)を見失ってしまうことです。
回答者が本当に伝えていことは、むしろ、このことではないかと思います。
敢えて劣等感を感じようと努めるまでの必要はないと思いますが、劣等感を感じたことのない人は、必ずしも幸福とは限りません。逆に、劣等感に悩み、それを克服することによって大成功を収めた人や、満足できる人生展開を獲得できた人たちも少なくないのではないのではないでしょうか。
劣等感をおぼえたら、むしろ自分には成長のためのチャンスが到来した、くらいにと認識していただければ、と思います。
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