『聖楽院』便り:生き残りを賭ける音楽業界 -銀座の山野とヤマハ‐



11月7日(日)は、およそ10年振りにイタリア文化会館を訪れました。

初回の訪問は、第3回東京国際声楽コンクールの本選出場でした。正確な記憶ではないのですが、舞台からホールの客席を見渡すと深紅の座席が並んでいておしゃれな印象が残っていました。

 

初めて訪れた音楽ホールが客席ではなく、いきなり舞台であった、というのは上野の奏楽堂と水戸のとある音楽ホールと、このホールですが、振り返ってみると、何度も特別な体験をさせていただいていることになります。今回は客席でしたが、座席は黒のレザー仕立てで、よりシックな雰囲気になっていました。
 

そうしたイタリア文化会館の空間の中で、コロナ禍で海外に行くことが難しい現状を踏まえて、「オンラインでイタリア旅行を楽しみましょう」というイタリア政府観光局の方の案内がありました。ロッシーニゆかりの地ペーザロをはじめ、イタリアの多くの街のバーチャルガイド付き旅行を楽しむことができました。

 

その後、杉並区民オペラ代表の大久保眞氏のもと、女性合唱団コーロ ヴェントゥーノの演奏でロッシーニの「三つの聖歌」などの曲を聴かせていただきました。三つの聖歌とは「信仰」、「希望」、「愛」の歌です。


コーロ ヴェントゥーノではなく、コーロ ステラという女声合唱団の音源がありますのでご紹介いたします。プロの合唱団ではありませんが、祈りの曲には懸命に心を込めて歌っていることが何よりも大切だと思います。

 

ロッシーニ「三つの聖歌」より「信仰」 (コーロ ステラ) - YouTube

 

ロッシーニ「三つの聖歌」より「希望」 (コーロ ステラ) - YouTube

 

ロッシーニ「三つの聖歌」より「愛」 (コーロ ステラ) - YouTube

 

久しぶりにイタリア文化会館を訪れた足で銀座に向かい、ヤマハでお目当てのフランス歌曲のCDを購入する予定でした。

しかし、ヤマハ銀座店の2階のCD/DVD売り場は、カフェラウンジに変わっていました。2020年秋に新オープンしたNOTES BY YAMAHAです。お目当てのCD売り場は、3階の方隅に追いやられ、見る影もありませんでした。

 

やむをえず、そのカフェでボルシチとサンサーンスの没後100周年にちなんだオリジナル・パフェ「白鳥」を食した後、山野楽器銀座本店に立ち寄ってみることにしました。

 

ところが、銀座本店ビルのB1、1F、2Fの3フロアがすべてKDDI株式会社に変わっていました。銀座の山野といえば、銀座の地で100 年以上の永きにわたり、楽器、楽譜、音楽ソフト販売を主とした音楽事業に携わり、わが国の音楽文化の重要な一端を支えてきた老舗だったはずです。

 

しかし、「近年の音楽ソフト市場の縮小などの環境変化に対応すると同時に、この不動産価値を活かし、さらに収益力を高めるため」の賃貸契約を締結したとの発表が昨年の3月付でなされていたことを知り、少なからずショックを受けました。

 

幸いにも3F以上のフロアは健在で、3FのCD売り場で、複数のCDを購入することができたことと、中世のバロック音楽のコーナーも充実していたことを確認することができました。

 

ヤマハにせよ山野にせよ、令和3年を待つことなく路線変更を余儀なくされていることから、新型コロナ禍による音楽文化の破壊力が並大抵ではなかったことをまざまざと実感させられずにはいられませんでした。