『聖楽院』便り

 

 本日は、福島の双葉にある処理施設に出張する日です。福島の復興は日本の復興、隣県の茨城県出身の医師としてささやかながら貢献を続けたいと願っているしだいです。今年は、東日本大震災(2011)からちょうど10年目に当たります。改めて振り返ってみますと、私はこの年に声楽コンクールに入賞していたのでした。

 

第3回東京国際声楽コンクール(2011)入賞(5位、男声1位)の入賞者の副賞として、翌年ガラコンサート(オーケストラ付)出演、ウィーン国立音楽大学研修(2週間)で、クラウディア・ヴィスカ教授から連日のレッスンを受けたのが翌年の2012年だったと記憶しています。

 

オフィシャルサイトで確認したところ、このコンクールは第12回(2020)で終了し、あらたに「国際声楽コンクール東京」が発足したとのことです。

 

そのときの予選通過記念品のデジタル時計(現在も診察室の机の上で活躍中です)、准本選入選記念のメダル、そして本選入賞の盾を御披露いたします。

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声楽愛好者部門での入賞ですが、1位から4位まですべて専門の音楽教育を受けた女性で占められ、辛うじて5位に滑りこんだ男性である私が音大出でない素人ということで、当時、若干の注目を浴びたことを記憶しています。

 

早いもので、それから9年が経ちました。ヴィスカ先生とのご縁により、近年では毎年欧州で開催される医学会に合わせて3月になるとウィーンで個人レッスンを受けさせていただいておりました。それが、生憎、新型コロナパンデミックのため、昨年と今年は欧州行を断念、今後もしばらくは渡欧困難となり、ヴィスカ先生のレッスンを受けることも叶わなくなっていました。

 

半ば、そのように諦めかけていたのですが、幸にそのヴィスカ先生の個人レッスンをお茶の水で受けることができました。

 

それが先週の土曜日、15日の午後6時過ぎからの1時間でした。遠隔レッスンでしたが、レッスン用ホールには、大きなスクリーンが用意されており、手配していただいた専属のピアニストの伴奏の協力によって、リアルなレッスンを受けることができました。スクリーンには懐かしいヴィスカ先生と日独通訳の女性が大きく映し出され、まじかに会っているよりインパクトがあるくらいでした。

 

毎週金曜日の夜に、杉並区和田の<めいた音楽院>でお世話になっているピアニストのKさんに伴奏を御願いしたのですが、突然の依頼であったため、先約がありアポイントが取れませんでした。そこで、主催のお茶の水のスクール(And Vision)に手配していただきました。

 

ヴィスカ先生はウィーン在住であるためドイツ語話者ですが、米国人であるため、通訳なしで英語でレッスンを受けることも可能です。そこで、通訳は不要である旨を主催側に伝えたのですが、会場や遠隔での聴講生の便宜のため、通訳が必要とのことでした。

 

米国人の先生と日本人の生徒がイタリア歌曲を歌い、日本人のドイツ語通訳者を介してコミュニケーションするという、いま思えばちょっと不思議な環境が誕生したのでありました。

 

私が選曲したのは以下の3曲でした。すべて暗譜できている曲であったため、良い姿勢で歌うことができたように思います。

 

 

#1.Caro mio ben(愛しい人よ)/G.Giordani

 

#2.Spirate,pur spirate(どうか、吹いておくれ)/S.Donaudy

 

#3.Nostalgia(郷愁)/P.Cimara

 

 

 

『カロ・ミオ・ベン(イタリア語: Caro mio ben 愛しい人よ)は、イタリアの作曲家トンマーゾ・ジョルダーニがイギリスで出版した曲。男性の恋心を歌った曲なのでルチアーノ・パヴァロッティをはじめ多くの有名な男性歌手よって歌われています。また女性が歌っても美しい曲であり、これまた多くの女性歌手に歌われています。
イタリア語の歌詞の内容は、愛する女性に自分の想いを伝えるちょっと切ない物語です。

 

 

「カロ・ミオ・ベン」の作曲者トンマーゾ・ジョルダーニ(Tommaso Giordani/1730-1806)はイタリアのナポリ出身で、生涯のほとんどをイギリスで過ごしました。

 

この曲はイタリア歌曲の中でも大変有名なアリエッタですが、作詞者は不明です。

 

近年までこの曲の作曲者は同じくナポリ出身の作曲家ジュゼッペ・ジョルダーニ(Giuseppe Giordani/1751-1798)であるとされてきましたが、1890年にイタリアのリコルディ社から出版された楽譜に、ジュゼッペ・ジョルダーニが作曲者がであると記載され、そのまま世界中に広がってしまったことが原因だそうです。

 

私が愛用している楽譜も、リコルディ版によるものなので作曲者はG. Giordaniと表記されています。またコンサートのプログラムでも相変わらずG. Giordaniと記載されるのが普通です。

 

 


原語(イタリア語)歌詞に日本語訳(訳:飯嶋正広)を添えました。

 

Caro mio ben      愛しい女よ 

 

Credimi almen     せめて僕を信じて

 

Senza di te       きみ無しでは

 

Languisce il cor     心が折れてしまう

 

 

 

Caro mio ben      愛しい女よ 

 

Senza di te       きみ無しでは

 

Languisce il cor    心が折れてしまうよ

 

Il tuo fedel      きみに忠実な男は 

 

Sospiro ognor     いつもため息ばかり 

 

Cessa crudel      つれなくしないで

 

Tanto rigor       あまりにも酷だ

 

Cessa crudel      つれなくしなくしないで

 

Tanto rigor       あまりに酷だ

 

Tanto rigor       あまりにも酷だよ

 

 

 

Caro mio ben     愛しい女よ 

 

Credimi almen    せめて僕を信じて

 

Senza di te      きみ無しでは

 

Languisce il cor    心が折れてしまう

 

 

 

Caro mio ben      愛しい女よ

 

Credimi almen     せめて僕を信じて

 

Senza di te      きみ無しでは

 

Languisce il cor    心が折れてしまうよ

 


それでは、いまから、福島へ行ってまいります。