こころの健康(身心医学):複雑性PTSDに関する様々なご質問に答えて(No2)

 

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複雑性PTSDとは、感情などの調整困難を伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。組織的暴力、家庭内殴打や児童虐待など長期反復的なトラウマ体験の後にしばしば見られるとされます。

 

 

Q2.複雑性PTSDはどのように診断されるのですか?

 

A2.世界保健機関 (WHO) が発行する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) では、第11版において初めて診断基準として記載が行われました。

 

ICD-11における複雑性PTSDの診断基準とは、

「否定的自己認知、感情の制御困難及び対人関係上の困難といった症状が、脅威感、再体験及び回避といったPTSDの諸症状に加えて認められること」とされています。 つまり、自己評価が低下し、感情のコントロールが困難となるため、対人関係においてさまざまなトラブルが生じやすくなる病気であるといえるでしょう。

 

複雑性PTSDの主症状は解離です。解離とは意識に上る前にある心理内容と、他の内容との連結を無意識的に断絶することを指します。

 

ただし、人間は通常、広い意味での経験を解離しています。日常生活においての人間の行動の大部分は言語化されないのですが、これは非防衛的なものであり「整理されていない体験」と呼び「広い意味で」解離されているものです。そして、解離の能力は人間の人格発達においての構成要素の一つで、通常の人間は「非自己」に対し「厳密な意味で」解離現象を起こし、一貫した自己感覚を確立します。

 

外傷的解離は心理的外傷を生み出す圧倒的状況に対する精神的適応反応です。それらは日常体験としての白昼夢等の解離現象の一端の解離連続体とされます。

 

解離状態は精神的苦痛から自己を守ろうとする自己誘発性催眠により発生します。

別々の心理内容は接点を持たず並存し、精神的な不調和を警告する繋がりが消滅し、同じ対象に対する自己内部の異なる感情は全くの矛盾なく並存しえます。

そのため、過去の心理的外傷を混乱した感情から分離することが可能となります。

ただし、その混乱した感情自体は意識に表出せず、言語にも象徴化されません。

 

しかし、解離状態の体験が意識化された際は本人の苦痛は激しいものになります。